2022年、不動産価格はさらに上昇!? 都市政策の専門家・市川宏雄氏に聞くN

コロナ禍が続く2022年だが、気になるのは経済、不動産の動向。ここではグローバル都市不動産研究所所長で都市政策の専門家である市川宏雄氏に2022年以降の予想を聞いた。

第6波は気になるが、経済は再開

今後の経済、不動産の動向を考える上で外せないのは2021年秋から収束傾向にあったコロナ禍のこれから。第6波を予測する向きも多く、新種オミクロン株の感染も報告されているが、市川氏は「それでも経済は再開する」とする。

楽観的だがと断りつつ、市川氏がその根拠とするのは2つの理由。ひとつはイギリスの動き。ご存じの通り、イギリスでは一時の大波を収束させた後、再び、感染者が大幅に増えているが、今回はロックダウンまではしていない。感染者は増えてはいるものの、亡くなる人は前回の10分の1ほどと圧倒的に少ないからだ。罹患はしても死亡に至ることがないのであれば経済活動は続行するというわけである。

もうひとつの理由は第一次世界大戦中の1918年に始まったスペインインフルエンザのパンデミック(一般にスペイン風邪と言われる)が1920年春までに終息していること。この時代にはまだ抗生物質は発見されておらず、医薬的な対処はほとんどできていないのだが、多くの人が感染したことでこのインフルエンザウイルスに対する中和抗体を得たことで終息に向かったのではないかと言われている。

「当時のスペイン風邪では今回のコロナの2倍以上の人が罹患し、10倍の人が亡くなったそうですが、それでも3年で終息しています。その当時に比べれば医療ははるかに進歩しており、ワクチンの接種が進み、薬もできると考えると、2022年には光明が見えてくるのではないかと推察しています」。

2022年後半から経済が回復、インフレ基調に

そうした前提で考えると、経済も2022年後半から回復してくるというのが市川氏の予測。それと同時にインフレが起きる。

「原油価格が上がり、物価が上がっています。不動産も上がっていますが、それは物件が不足しているため。だからといって建て替える、新たに建設しようにも建設資材の価格が上昇しています。たとえば鉄骨が高騰していますが、これは需要が一時期減ったことに対応、高炉を止めた結果。再開させるまでには半年かかります」。

インフレ下にあっては不動産の需要はアップするため、投資観点でいえば悪いことではない。実際、不動産のうちでも住宅については一時価格上昇がストップしていたものの、2021年8月以降は再び上昇基調に転じている。

「コロナ禍で日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパの中央銀行は大規模な金融緩和を行っています。日本では市場に大量の資金を提供するため、国債などの資産を大量に購入しました。その結果、現在は世界的な金余り状況になっており、それが株価、不動産価格を押し上げています」。

といっても、これはバブルではないとも。

「バブルを知っている世代からすると上がったものは下がると考えますが、今回の上昇はバブル、つまり一時期の上昇ではなく、このまま下がらないのかもしれません。需要と供給のバランスで値が上がっているのであり、たとえば都心部の不動産は今後も供給は大幅には増えない。とすれば価格も下がらないと考えられるわけです」。

新築マンションの供給と価格の関係。需要を満たすだけの物件がないから上がっていることが分かる
新築マンションの供給と価格の関係。需要を満たすだけの物件がないから上がっていることが分かる(以下データは同研究所が2021年10月に公開したレポート「2021年下半期以降、不動産投資に期待集まるか」より

市川氏が居住する千代田区の不動産価格は10年前の倍近くになっているそうだが、それでも都心に住まいを買いたい人は後を絶たない。かつては高額物件を億ションと言ったが、今では2億ション以上。都心の3Aエリア(青山、赤坂、麻布)のようにブランド力のある地域はやはり強いのだ。

東京一極集中はこれからも続く必然

都心の話が出たが、2021年は地方への人の流れが話題になった。東京一極集中を批判する声もよく上がった。だが、一極集中は止まらない、必然だと市川氏。

東京都の人口。確かに2020年よりは減っているが、全体として大きく減ったと言えるかどうか
東京都の人口。確かに2020年よりは減っているが、全体として大きく減ったと言えるかどうか
東京23区で人口が減っているのは外国人の減少が大きな要因
東京23区で人口が減っているのは外国人の減少が大きな要因

「確かに東京23区という意味では多少減っているものの、一都三県、つまり東京圏で考えると人口は増えています。港区、新宿区、豊島区など外国人の人口が減った自治体では減っているものの、都心の人口も増えている。首都圏近郊の、都心から1時間、30キロ圏でも丘陵地の空き家、駅から15分のマンションなどの購入が増えていて、郊外の不動産は価格が上がっています。23区のうちでも周辺区に住んでいた人が、それより少し郊外に移動しているのです。

しかも、移動先を見ると利便性は23区並みなど良好な郊外が選ばれています。感情的に広さを求めて郊外へというのではなく、利便性を考えつつ、それでも広さもと冷静に考えた結果、移動が行われているのです。

郊外人気の動向が見えてくるのは2022年夏以降

それが今後どうなるかはテレワークの定着次第。動向が見えてくるのは2022年の夏以降、はっきりするのは2023年くらいだろうと思っています」。

賃貸の契約は大半が2年である。慌てて郊外に出て行った人たちが更新を迎えるのが2022年夏以降なのである。

「中学、高校受験を考えた時に郊外はどうかという考えもあります。だから、一時期郊外に移動した人が再度都心に戻ってくることは十分考えられます。不便さと広さはバーターの関係にありますから、広さが最優先と言う人なら郊外に定着するでしょうし、やはり医者、塾などの選択肢が豊富な利便性を選択となれば戻って来るでしょう。都心の利便性が失われたわけではありませんから。

また、今回のパンデミックがきっかけで住み替えを考える人が増えたことは今後の日本の不動産市場にはプラスかもしれません。人の流動性が高まれば、不動産が動くからです。

もうひとつ、今後の都心、郊外の問題を考える場合には鉄道会社の動向も気になります。通勤が戻らないとしたら、鉄道会社は3割ほど本数を減らすか、運賃を挙げないとやっていけない。それで郊外が不便になるとしたら、やはり都心のほうが有利と考える人も出てくるはずだからです」。

オフィスについては空室率が都心5区でも上昇、動向が読みにくい
オフィスについては空室率が都心5区でも上昇、動向が読みにくい

最後に住宅の好調さに比べると、やや不安要素もあるオフィスについて。リモートワークの進展で都心に高額なオフィスを構えておく必要はないという判断も出ているからだ。ただし、業種によって違い、情報通信業が都心のオフィス縮小を進めているが、他の業種はそうでもない。これについても状況がはっきり見えてくるのは2022年の夏以降だろうと市川氏。コロナ前までには戻らないものの、経済が戻ってくればニーズも戻ってくるだろうという判断だ。

いずれにしても2020年、2021年と違い、2022年はさまざまな面で動きが始まる年である。社会の状況を見定め、動くべき時に動けるよう意識しておくべきではなかろうか。

                                                 株式会社寧広