コロナ禍の駐車場ビジネスは、都心から郊外、地方に拡大へ

空き地や遊休地をどう使うか。土地オーナーは、とりわけ狭小地や変形地といった使い勝手が悪い土地をどのように収益化するかに頭を悩ませる。

最も手軽に始められるものとして、貸し駐車場が挙げられる。三井不動産リアルティグループでは、時間貸し駐車場ビジネス「三井のリパーク」が稼ぎ頭の事業となっている。

三井のリパークでの駐車場の管理台数は2022年3月末時点で25万台を超えており、売上高に当たる営業収益は867億円と本業の不動産仲介にほぼ肩を並べる事業規模である。

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パーキングへの転用は、ちょっとした空き地からキャッシュを毎月生み出すようにする土地活用の典型的なビジネスだ(写真はイメージ)

駐車場ビジネスの魅力は、アパートやマンション、店舗などに使えない、向かないといった土地を収益化できることだ。月極駐車場は土地さえあれば運営でき、初期費用や管理の手間も建物管理に比べてかからない。

地震、水害、火災などの自然災害に対しても強い。コインパーキングの場合は、精算機やタイヤのロック設備を整備するなど初期投資額は高くついてしまうが、それでもマンション一棟を建てるよりは割安なため、駐車場事業に参入するハードルは低い。しかし、そうは言いながも、リスクが全くないわけではない。

賃貸住宅で家賃の滞納が発生することがあるのと同じように、駐車場の駐車料金を滞納されたりする。立地が悪いと利用者が少なく稼働率が上がらずにキャッシュフローが出ない可能性もある。

農家支援と貸し駐車場で実証実験

そうした中で、駐車場予約アプリ「akippa(アキッパ)」を運営するakippa株式会社(東京都千代田区、金谷元気代表取締役CEO)は、さまざまなアイデアで空き地・遊休地などを駐車場ビジネスに転用している。Jリーグやプロ野球などの球場の周辺住民や企業に対して試合日の駐車場貸し出しを促し、予約できる駐車場を増やしている。

プロスポーツのスタジアム周辺でのこうした遊休地活用の取り込みは、アキッパが事業化する以前から土地オーナーが既に手掛けている。

例えば、鹿島アントラーズの本拠地である「カシマスタジアム」は、周辺一帯が畑で覆われているような場所にあるが、1993年のJリーグ発足当初から、試合のある日は地元の農家が遊休地を駐車場として開放して貸し出して自分たちの臨時収入としている。29年前から存在するビジネスモデル。土地があって人が集まりさえすれば簡単にビジネス化できるという事例として挙げられよう。

つまり、土地があるというだけでなく、イベントをどのように作り出すかがポイントとなる。たまたま地元にプロスポーツチームが来たという棚からぼたもち的ではなく、意図して集客できるアイデアが欠かせない。

そうした意味からアキッパでは、農業体験参加者と農家スタッフが活用できる駐車場貸し出しや、収穫された農作物や地元の特産品を販売するスペースの提供などをおこなう実証実験を推進している。

第1弾として6月26日に大阪府・八尾市の「河内物語 服部農園」と連携して行った。同社によると、農家の人から「農業を広める農業体験参加者用の駐車場がない」という困りごとの相談があったという。

駐車場の確保が課題となっていたことで、akippaマルシェとして野菜や地元の特産物が販売できるスペースの提供に加え、農業体験で農園に足を運ぶ人に対しての駐車場の案内と貸し出しをする。

コロナ前後で利用単価の引き下げ見られない

予約制駐車場シェアサービスを運営する軒先株式会社(東京都千代田区、西浦明子社長)は6月29日、「コロナ禍と前後の駐車場利用状況」についての調査を公表している。

コロナ禍前の2019年5月から4年間の利用料と利用数の推移をグラフ化したところ、コロナ禍1年目の2020年は、利用料が2019年に比べて約35%と大幅に減っているにもかかわらず、利用数は5.5%の減少にとどまっている。

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新型コロナウイルス感染拡大を受けて駐車場の解約台数が増えているとの声も聞かれるが、駐車場が使われる頻度は場所によって格差が広がっている公算が大きい。

軒先パーキングでは、貸し主が駐車場の利用単価を下げた傾向も見られないという。都心から郊外へ、駅に近い街中から住宅街へ。

コロナ禍で生活様式が変わったとされるが、これまでの街中心部での駐車場ニーズに加えて、駅に近くない場所でも周辺に月極駐車場やコインパーキングがないエリアでは思った以上に利用者ニーズが出てくる可能性を指摘している。

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健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし))

■ 主な経歴

学生時代から不動産に興味を持ち個人的に不動産関連の記事を多数執筆。大学卒業後、不動産関係情報誌に20年以上勤務。現在は都内のIT会社に勤め、副業でいくつか投資関連の記事を担当・執筆する40代サラリーマン。