“高齢者に部屋を貸しても大丈夫か…” と判断する前に不動産投資家が考えたいこと「太田垣章子のトラブル解決!」

少しずつ高齢者にも部屋を貸そう、元気な高齢者が多いから高齢者に部屋を貸しても大丈夫、そんな言葉を目や耳にするようになった。

高齢者が普通に借りられるようになることは大切だが、やはり「そんな簡単な話じゃない」と感じている。

トラブルの現場で走り回る者からすると、やはりリスクがあることは否めない。そこを認識した上で、どう対応していくかが問題なのだ。

日本のいちばんいけない所は、縦割り行政だと私は思う。そして失敗を恐れ、事勿れ主義が強すぎること。前例主義が横行しているが、超高齢社会は前例がない。

だからこそ臨機応変に「何が正しいか」をきちんと判断していかねばならないところ、それをしないまま前例主義をルールとするので、この問題の根が深いのだと思う。

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介護サービス事業者を味方にすればいい

高齢者に部屋を貸している家主さんにとって、いちばん怖いことは入居者が亡くなること、居なくなってしまうことだ。

家主さんから滞納の明け渡しを依頼された。

①おそらく退去したいのではと思うけど、確信がない
②連絡取れないので安否確認で警察が室内に入ってくれたけど、本人不在で荷物はそのままだった
③介護サービスの人に確認しても「言えない」としか言わない
④家賃が滞納でこのまま改善されそうにない

これが依頼を受けた理由だ。

問題は③の「言えない」としか教えてくれないということだ。

現地に行くと、ガスは閉栓されている(電気はスマートメーターのため分からず)。水も閉栓されていた。外から見ても、住んでいる気配はない。緊急連絡先も、すでに電話番号が変更になっているようで不通。

賃借人は体調を崩し気味ということなので、おそらく入院したかどこかの施設に入所したのかもしれないと思った。しかしやはり介護事業者は「言えない」としか言ってくれない。

彼らは個人情報保護法の観点から、言わないのだろう。責めても仕方がない。このような状態で、家主は後から問題になるのは嫌なのでと、手続きを選択した。

受託する私たちからすると、家主さんからご費用いただいて、税金使って裁判して、誰が得をするのだろうと思いつつ、荷物がある以上、勝手に処分ができないので手続きするしか仕方がない。

賃借人がどこに行ったか分からない、ということで訴訟を提起した。

訴訟の中で裁判官は、1年近く家賃が1円も払われず連絡も取れない状況であるにも関わらず、判決に仮執行はつけてはくれなかった。

仮執行は判決が出ればすぐに強制執行することができるというもの。被告側には「控訴」という権利があり、それを守る必要があること、住む場所を奪うということはお金の問題より取り返しがつかない可能性が高いということで、原則仮執行は金銭問題にしかつかない。ただ相手方が明らか不誠実であれば、最近は明け渡し案件でも仮執行がつくようになった。

個人的には、仮執行をつけて欲しいと思ってる。これは高齢者の場合、強制執行をしても執行官は執行してくれないことも多く、執行の云々が問題なのではなく、一日でも早く現状を把握することが必要だと考えているからだ。

滞納していたとしても中に立ち入れるのは、安否確認の警察と執行官だけだ。だからとにかく執行で中に入って、実情を知りたい。

もし倒れていたらどうする? もし施設や入院していたら、そのヒントも室内にはあるかもしれない。時間がかかるということは、その間の滞納賃料が加算されていくことを意味する。

それでも原則、仮執行はつかず、判決が届いてから2週間を待つしかない。これも前例主義。この先、高齢者のこのような問題が増えたら、裁判所は高齢者の明け渡し訴訟ばかりになってしまうのでは?と心配になるほどだ。

横のつながりが超高齢社会を救う

昔はご近所が家族のように誰かをお世話したり、調味料を貸しあったりしていた。この頃には「隣のおばあちゃん、どこどこに入院したよ」と教えてくれたはずだ。

そうすれば家主側は退院するまで待つか、解約してもらって荷物を片付けてあげることもできた。

でも今は、自救行為は違法とされ、個人情報保護法で情報は開示されない。今のままでは、一時的な入院で戻ってきたらそのまま住み続けるつもりだったのに、戻ったら執行されていたということにもなりかねない。

高齢者だって、家主に迷惑かけたい訳ではない。ただ自分のことで精一杯で、そこまで気が回らないのかもしれないのだ。だからこそ近所や周りのサポートが必要だと思う。

一時的な入院なのか、もはや戻ってきて住むことは不可能なのか、周りの存在が家主に伝えることによって、皆が助かる。

高齢者、地域包括支援センター、家主さん、町の不動産会社が連携することで、安心に繋がり無駄が省けると思うのは私だけだろうか。

この問題が解決できない限り、やはりそう簡単な問題ではないと感じてしまう。

                                             株式会社 寧広