
アメリカの不動産価格の上昇が止まらない。特に、新型コロナウイルスの影響で、都心部のアパートから郊外の戸建てへの住み替え需要が急騰。全米で、戸建ての供給不足による価格高騰が続いている。
2015年頃からのバブル的な値上がりで、いったんは高止まりしたと思われていたテキサス州の大都市ダラス都市圏でも、その傾向が顕著。住宅情報サイトZillowによると、トヨタが北米本社を構えるPlano市などを含むダラス北部エリアの不動産価格は、コロナ後の2020年2月からの一年で7%上昇したという。
ステイホームで
プール付き戸建てのニーズが回復
コロナ禍によるステイホームの影響で、アパートから庭付き戸建てへの住み替えニーズが全米で高まっている。

中でも、5月から10月ころまで屋外プールを楽しめる気候のテキサスでは、プール付きの戸建ての人気がすさまじい。
メンテナンス費用や事故リスクが付いて回ることから投資用には不向きとして、コロナ前は投資家に敬遠されていたプール付き戸建て。それが、コロナによるステイホームの世の中となり、コミュニティの共有プールや公共プールが軒並み閉鎖された昨年、プールのない戸建てからの住み替え実需が爆発。
今、プール付き戸建てマーケットは完全な売り手市場になっているという。
特に、学校区が良く、もともとファミリー世帯から人気の高かったダラス北部エリアのプール付き戸建ては、供給不足が続いている。
高止まりからさらに
2割増しの不動産価格
ある日本人が2年前に購入したPlano市内の一軒家は、このエリアでは標準的な、2階建てプール付きの4ベッドルーム。購入価格50万ドル強だったのが、現在のZillowの見積り価格は、60万ドルを超えているそうだ。

アメリカで不動産が最も動く夏前のシーズンを迎え、「地元の不動産業者から毎日のように売却、賃貸の引き合いが来る」と話す。
近く日本に帰国を予定しているため賃貸に出すことを検討しているが、不動産業者から提示された賃料は月4000ドルだそう。賃貸相場も、コロナ後の1年で約20%上昇しているようだ。
現地で長く不動産仲介業を手掛けてきた営業担当者も、「過去15年に例のないほど、ホットなマーケット。特に、学校区に定評のあるダラス北部エリアの戸建ては争奪戦で、マーケットに出した途端に複数オファーが入る状態。多くの物件で入札となるが、売り出し価格に平均2万ドルを上乗せした提示をしないと、競り買えない」と打ち明ける。
それでも「お得」
テキサス不動産
2021年に入ってからも、記録的低水準の住宅ローン金利や景気回復への期待が手伝い、物件争奪戦は加熱の一途だ。
その中で、ダラス都市圏や州都オースティン、州内最大都市ヒューストンなど、テキサス不動産価格の上げ幅が他州に比べて群を抜いているという報道が目立つ。
それでも、同等の物件が軽くミリオンを超えるカリフォルニアやニューヨークなどの大都市圏と比較すると、40万ドル出せば納得のいく物件に手が届くテキサス不動産は、まだお手頃感があるのも事実。
最新の調査によると、ダラスは、フロリダ州ジャクソンビル、アリゾナ州タスカンに次いで、全米第3位の「お買い得」な大都市にランクインしている。
3月早々にマスク着用義務を撤廃し、商業活動を全面再開させたテキサスではワクチン接種も着々と進み、地元経済も堅調だ。今後も、他州から生産労働人口の流入が続くと見られ、住宅実需は底堅い。
株式相場も最高値更新が続き、絶好調の米国。2021年も、不動産価格は上昇気流とみられている。
株式会社寧広