駅から遠くても満室にできる。「邸宅利用」という新機軸シェアハウスが面白い!

最寄り駅は再開発で駅前が変化しつつある小岩駅。お隣の新小岩などに比べると人気度は今ひとつと聞くが商店街が充実しており、住みやすそうである
最寄り駅は再開発で駅前が変化しつつある小岩駅。お隣の新小岩などに比べると人気度は今ひとつと聞くが商店街が充実しており、住みやすそうである

COMMURE 南小岩は小岩から歩いて18分、住宅街の中に立地する。18分のうちの半分くらいは商店街を歩くので、さほど苦にはならないものの、利便性を優先して住まいを選ぶ人からするといささか遠いと思われることだろう。ましてや、シェアハウスであればどうだろうかと。

実際、この物件の所有者はコンサルを通じて複数の不動産会社に相談したものの、シェアハウスという利用方法については否定的だったらしいとCOMMURE 南小岩の運営にあたるティムールジャパンの中川亮氏。

「駅から遠くても満室」は可能

「小岩にはシェアハウスが10軒ほどあるのですが、いずれも徒歩数分圏。シェアハウスは一般的には利便性の高い立地にあることが多いので、遠いところでの運営は怖いと思うこともあるのでしょう。ただ、弊社で手掛けているもののうちには新浦安駅から徒歩18分と駅からは遠い物件があります。でも満室が続いており、リピーターもいます。そのノウハウがあるため、ここでもできると考えました」。

相続を睨み、
最低限の改修でスタート

釘を使わずに建てられているというから宮大工の手によるものだろう、今建てるとしたらかなりの高額になるに違いない
釘を使わずに建てられているというから宮大工の手によるものだろう、今建てるとしたらかなりの高額になるに違いない。写真右手の従来の勝手口がシェアハウスの入口になっている

建物は200坪の広い敷地に建つ、見事としか言いようがない木造建築。釘を使わずに建てられているところからすると宮大工が建てたのだろう、今では他で見ることのないほどの大黒柱、見事な細工の欄間などがあり、築11年とそれほど古くもない。地主だった前所有者が金に糸目をつけずに建てたものだろう、この建物を壊すのは惜しい。

「家が大きいので一棟そのままで貸すのは難しい。その問題をシェアハウスという手で解決することになったわけです」。

風呂はそのまま使っている。元々が広かったので、浴室の手前、洗濯機置き場には洗濯機を2台置けている
風呂はそのまま使っている。元々が広かったので、浴室の手前、従前からの洗濯機置き場もそのままの用途で使っている
男子用の小便所を洗面所に改修。全5戸なので2ボウルを用意
男子用の小便所を洗面所に改修。全5戸なので2ボウルを用意
出入口となる勝手口、各室の入口にはロックを設置
出入口となる勝手口、各室の入口にはロックを設置

今後の相続を考えると、多額の投資はしにくい。そのため、間取り等をいじることはせず、シェアハウス転用にあたってはセキュリティ、水回りに必要最低限の手を入れただけ。具体的には1階2室、2階3室の居室や出入口となる勝手口などに鍵を付け、隣室と繋がっていた部分を仕切り、男子トイレを洗面所に変更、洗濯機を1台分増設などである。

1階には外に貸し出すコミュニティスペースも

これが今後コミュニティスペースとして運用される予定の1階、2間続きの和室。庭が見えて非常に快適な場所である
これが今後コミュニティスペースとして運用される予定の1階、2間続きの和室。庭が見えて非常に快適な場所である

1階には庭に面した2間の和室があり、繋げると20畳ほどもの大空間になるのだが、ここは今後、地域に開かれたコミュニティスペースとして運用する計画だという。

分離して2部屋にすることもできなくはないが、そうなると工事が必要になる。近所からマンション管理組合の集まりや、ヨガ教室・三味線教室などのお稽古ごとなどで使わせてもらえないかという要望もあるそうで、シェアハウスの募集が落ち着いたら活用を考えていく計画だ。

最低6畳という広い居室

2階、庭に面した和室。9畳あり、収納もたっぷり、天井の高さも圧倒的だ
2階、庭に面した和室。9畳あり、収納もたっぷり、天井の高さも圧倒的だ

部屋は1階に和室6畳(賃料4万8000円)、洋室7.3畳(賃料4万8000円)があり、2階には和室6畳(5万2000円)、洋室8畳(5万6000円)、和室9畳(5万4000円)の5室。

もっとも狭い部屋でも6畳あり、各室に収納もあることを考えるとシェアハウスとしてはいずれも広い。特に2階の3室は天井が高く、窓も広くて開放的だ。

同じく2階、庭に面した洋室8畳。家具、収納、照明などが付帯している
同じく2階、庭に面した洋室8畳。家具、収納、照明などが付帯している

管理費は水道光熱費、Wi-Fiも含んで月額2万2800円。

「賃料は小岩の駅近シェアハウスの相場より高めに設定しています。これは安かろう、悪かろうと求める人に来て欲しくないためです。管理費は通常、水道光熱費、Wi-Fiとは別に設定、使用料などで按分していますが、ここはメーターがひとつなので定額に設定してあります。そのため、どういう反応があるか、少し気になります」。

ターゲットを絞ったアピールが有効

ところでそれ以上に気になるのは駅から遠くても満室にできるというノウハウである。中川氏によるとそのひとつはターゲットを絞るということ。

「新浦安の場合にはディズニーに絞りました。ディズニーが好きな人、勤めている人。建物内の世界観に加え、広告、告知時の文言にも盛り込みました。また、新浦安は近くに明海大学など大学が2校あります。彼らは自転車通学なので駅からの距離は関係ない。そういう人たちが対象と考えたのです。

そして、実際全体の3分の1が学生です。また、面白かったのは当初なぜか入居者には沖縄の人が多かったのですが、聞いてみると沖縄には公共交通が少ないため、歩くことに抵抗がない。30分歩くのは普通だと。もしかしたら、駅から遠い物件は沖縄の人をターゲットにしたらうまくいくかもしれません(笑)」。

古民家というキーワードに反応する層も少なくない。こちらは2階住戸の屋根裏
古民家というキーワードに反応する層も少なくない。こちらは2階住戸の屋根裏

COMMURE 南小岩の場合には在宅勤務、テレワークをする人をターゲットに据え、情報を発信する際には常にその点に触れるようにしている。

また、古民家、緑、庭などもアピールポイントで、そうした写真をよく使うようにしている。実際、初回の内覧会では古民家というキーワードに興味を惹かれてきた人がその場で和室を申し込んだそうだ。

広告媒体として利用しているのはひつじ不動産。そして侮れないのがフェイスブックでの発信。ほかにも和室に申し込んだ人はフェイスブック経由で古民家に興味を持って来訪したという。あらゆる場面を見つけてキーワードを連発する、まずはそこが大事ということだろう。

入居者との付き合いで
選ばれる物件を作っていく

もうひとつ、入居者とのかかわり方にもポイントがあるように思った。賃料のところでも触れたが、とにかく入れれば良いではなく、物件の特徴を理解、気に入ってくれる人を選び、きちんと付き合うやり方である。

「南小岩の物件には屋根付きの駐車場があり、それをバイク置き場、駐輪場として使う予定です。その点に惹かれてバイクを持っている人からの問い合わせがあったのですが、本名ではない問い合わせの上、こちらの質問には答えず、自分の聞きたいことだけをしつこく聞く。この建物を大事に住んでくれる人のようには思えないので、お断りすることになろうかと思っています」。

シェアハウスはどんな人が入るかで全体の雰囲気が左右され、住み心地に影響するため、中川氏は入居者については厳しく審査しているという。

保証会社は使わず、連帯保証人を求めているが、それは何かあった時にきちんと相談できる人がいるかを見るため。一般には連帯保証人にも収入等の要件を求めることが多いが、同社では連帯保証人の審査はしていない。大事なのは人間としての付き合いと考えているからだ。

入居者とは日常的に付き合いがあり、家賃の支払い方法についても本音で親身になって相談に応じている。

「コロナ禍で仕事が無くなり、バイトで凌いではいるものの、延滞、滞納があったということもあります。その場合は早めに相手の事情に応じて相談に乗り、ある程度は払い方を柔軟にすることで結果的にはきちんと払えるようになっています。

具体的には今月は事情が分かったから半額しか払えなくても仕方ないけれど、滞納額がある程度になったら退去してもらうことになる、保証人にも連絡することになると伝えるなど。一律にダメというのではなく、一緒に良い方法を考えるという形でしょうか。そのおかげで去年、今年ともに退去はゼロでした」。

コロナ禍で昨年はいつもなら活況を呈する繁忙期の2月半ばで問い合わせが激減、その後も問い合わせはかつての3割減ほどの状況が続いているという。そこで退去があったらと心配したそうだが、引き続き選ばれたということである。

当初2年の契約を6カ月にした理由

ただ、過去には全体にマイナスな影響を与える人を入れてしまったこともあった。

キッチン。こちらも既存のものを利用。水回りの利用法は入居者間でトラブルになりやすいようだ
キッチン。こちらも既存のものを利用。水回りの利用法は入居者間でトラブルになりやすいようだ

「入居者同士で決めた風呂の順番を守らず、長湯したりする人、鍵をかける習慣がなく、いくら注意しても開けっ放しで出かけてしまう人、他人の行動にいちいち注意し、口を挟む人など、他の入居者からあの人が住み続けるなら自分が出ていくと言われるような例があり、当初、契約は2年間の定借にしていましたが、現在は6カ月。全員が気持ち良く暮らしていくためには退去してもらえる仕組みも大事です」。

正面玄関を入ったところにあるホール。リビングルームとして使う予定だが、音の反響を考え、テレビは設置していない。そもそも、全員で同じ番組を見る機会も減っている
正面玄関を入ったところにあるホール。リビングルームとして使う予定だが、音の反響を考え、テレビは設置していない。そもそも、全員で同じ番組を見る機会も減っている
正面玄関。玄関部分だけで通常のワンルームに近い広さがある
正面玄関。玄関部分だけで通常のワンルームに近い広さがある

順調に申し込み、問い合わせが集まり始めているCOMMURE 南小岩だが、中川氏がひとつ気にしているのは一戸建ては意外に音が響くという点。

家族が住む前提で、しかも中央に吹き抜けのある木造住宅である。外からの音に対しての防音は良いのだが、内部は意外に聞こえるのである。それもあって共用部となっているリビングにはテレビを置いていない。

手入れの行き届いた庭。庭など建物外についてはオーナーが管理している
手入れの行き届いた庭。庭など建物外についてはオーナーが管理している

「リモートワークを前提にしているので、在宅している時間が長い人が多いでしょうし、オンラインで会議をすることなども頻繁になると考えると、音の問題は気になります。1階の賃料をやや安めに設定したのはそのため。このあたりは入居される方にあらかじめ説明、プラスもあればマイナスもあることは伝えておこうと思います」。

ちなみにこの物件では男性の問い合わせが多く、他に比べると女性が少ない。その要因は庭があることで蚊などの虫がいるだろうと女性に敬遠されているのではないかと中川氏は推察している。

オーナーが管理する庭は和風のこれも見事なもので、住んでいる人には癒しの空間になると思われるが、それは一方で蚊などの出現も意味する。広い部屋で庭の緑を愛でながら、リモートワークや在宅勤務ができるというプラスがあればマイナスもあるのはどんな場面でもありうる。それをきちんと説明、理解して入居してもらうことが大事というわけである。

                                                  株式会社寧広