韓国の不動産バブル崩壊か?ユン新政権における不動産政策とは

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昨今話題になる韓国不動産バブル。日本人にとって「不動産バブル」という言葉は、経済に大きな打撃を与えたことから望ましくない言葉としても捉えられる。

一方で、韓国では不動産投資で大きな財を成した成功例が多く、積極的に不動産投資をする志向が強い。

一人あたりの賃金やGDPがほぼ同じの日本と韓国。今月3月に行われた韓国大統領選挙での争点となった不動産市況と今後の行方について考える。

急上昇した韓国不動産価格

韓国不動産は2000年以降不動産価格が急騰してきた。2017年に大統領となった文在寅(ムン・ジェイン)大統領が力をいれたのも、不動産価格抑制策だった。

以下のグラフは1986年を100としたときの不動産価格の推移だ。(赤線:ソウル 黒線:韓国全体 青線:6大都市)

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出所:kbland.kr KB不動産
1986年から比較して約5倍、2000年と比較して約3倍以上の価格上昇を記録している。あらゆる手段を使って借金をして不動産投機を行うことがブームとなり、命(魂=”よん”)を使ってお金を集める(=”くる”)「よんくる族」という言葉が韓国国内では浸透している。

年収の18倍まで高騰した不動産価格

実際にソウルでは、、マンション価格が平均年収の18倍となっており、東京の13.3倍(新築)を大きく上回る状態である。

OECDのデータによれば2020年の平均賃金は韓国が日本より約10%高いが、それを考えても比較してマンション価格が高いことが伺える。

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出所:OECD

特にこの5年の上昇角度は急であり、若者を中心とした一般人が不動産を購入できないことに対する不満が拡大し政治問題につながった。

不動産価格抑制の施策を2017年以降おこなってきたが、コロナでの政策金利の利下げによりローン金利も下落したことで、さらに不動産価格が上昇した。

このような事態から不動産を買いたくてもかえない国民からの反感を、現ムン政権が浴びることとなり支持率は急落した。

一方でムン政権も無策だったわけではない。投機が促進されている一部のエリアでは、借り入れローンの上限(LTV:価格に対してのローン割合)として約9,000万円以下の不動産では40%以下、さらに約9,000万円を超える価格については20%までと厳しい貸し出し規制も行った、その他には15億ウォン(約1.5億円)以上の住宅ローンの禁止、ソウル市内のマンション融資額をLTV40%まで制限、譲渡税の引き上げ(短期譲渡で77%)などがある。

バブルの原因の一つ、韓国特有の不動産賃貸借制度「チョンセ」

そのような中で、なぜここまで不動産購入者が増えるのだろうか。それは韓国特有の不動産賃貸制度に答えがある。

チョンセと呼ばれる賃貸借制度で、借り主が保証金のような形として、物件価格の70%~80%を現金で預け入れる制度だ。

古来よりある制度で、預け入れをする代わりに賃料が発生せず、また退去時には預け入れた金額から修繕費用等を除いて返金される。つまり実質賃料はゼロという制度である。

オーナーは預け入れられた保証金を運用し、その運用益で賃料分の利益を賄うという形だ。

しかし、昨今の低金利、さらにコロナ渦における低金利政策でインカムゲイン型の運用ではなく、キャピタルゲインが見込める運用へオーナーがシフト。そこで真っ先に投資先として目をつけたのが強い価格上昇が見込める不動産だった。

チョンセで得た、保証金を活用しさらにローンを利用して次の投資物件を購入する。さらにその物件をチョンセで貸し出せばまた多額の保証金を得る。この繰り返しで不動産が投資ではなく投機対象に近くなっていった。

大統領選挙の最大の争点は「不動産政策」

このようなチョンセ制度も不動産価格上昇に拍車をかけ、歯止めがかからない不動産価格上昇を背景に、韓国銀行総裁らが「金をかりて株を買うな」「いずれ金利をあげる」「金融危機はやってくる」などと発言をするなど、価格抑制に過剰なまでに躍起となる。

3月の大統領選挙での争点も「不動産政策」ということとなった。韓国経済新聞社の大統領選前の世論調査によれば、注目の政策順は以下の通りだ。

不動産政策 44.0%、検索改革 12.4%、所得主導成長基調 10.0%、対北・外交政策 9.0%、労働政策 7.9%、脱原発政策 4.5%

不動産政策は1位となっており、感心の高さが伺える。

ユン次期大統領の不動産政策と今後の韓国不動産バブル崩壊の可能性

このような中で、次期大統領の不動産政策の2つの柱は「供給拡大」及び「規制緩和」である。

「供給拡大」案として、官が主導する住宅開発も合わせて、新規250万戸(ソウル等首都圏130万~150万戸)そのうち民間供給物量200万戸を見込んでいる。在籍期間で年間50万戸の供給となる。

首都圏の新築マンションが年間約3万戸程度なのでその規模の多さがわかる。

一方「規制緩和」に関しては価格抑制策からは矛盾する。前述のLTVは70%に一本化するとなっており。今後購入をする人にとってはローンの活用がしやすくなった。また、減税政策も打ち出す予定だ。

以上を考えると、短期的には規制緩和や減税の効果により韓国不動産の価格が更に上昇する可能性は否めない。

ただ、予定する供給数が非常に多いため、ひとたび戸数供給が増加し始めると市場は逆回転をし始める可能性が高くバブルは崩壊するだろう。不動産バブルをどのように軟着陸させることができるのか新政権の手腕が問われる。

                                                株式会社寧広