賃貸プロの景況感。仲介業況DIは改善見通しだが、家賃は下落傾向か。

緊急事態宣言解除後の10月以降から1日当たりのコロナ新規感染者数は低い水準に抑えられている。

社会経済活動は感染対策を踏まえながら正常化への道を探り始めている。約2年に及ぶコロナ禍の閉塞感は本当に終わるのか。振り返れば今年も4分の3が緊急事態宣言下だった。

イギリスや韓国などは、未だに新規感染者数が爆発的に増えているほか、南アフリカで変異したオミクロン株が世界に広がり、日本でも感染者が発見されている。もうコロナ前には戻らない。そう感じている人は多いようだ。

日本銀行の12月17日の金融政策決定会合は新型コロナ対策の縮小を決めた。大企業への支援対策は2022年3月末に終了し、中小企業は同年9月末まで半年間延長するというものだ。

オミクロン株の動向が経済環境に「不確実性が残っている」ことで中小企業の資金繰りの支援は続ける。大規模金融緩和の維持も続く。

賃貸イメージ
賃貸住宅の入居は単身者向けが埋まりにくいが、地方都市では全体的に需要が落ち込んでいるという現場も多い。(写真はイメージ)

「ワクチン」と「緊急事態宣言解除」が改善キーワード

こうした影響が賃貸住宅市場にどう波及するのか。不動産のプロの見方として、景況感は上向いていくと想定している。

不動産情報サービスのアットホームとアットホームラボは「地場の不動産仲介業における景況感調査」を定期的に実施している。直近7~9月の業況DI指数を見ると、首都圏が38.9となり前期(4~6月)と比べてマイナス3.3ポイントだった。

近畿圏も37.3(同マイナス2.8ポイント)と2期連続で下落している。仲介店舗への来場者数と問い合わせの数がともに冴えず「去年同様に減少した」(東京都品川区)。アットホームでは、長期化するコロナ禍による影響が賃貸住宅事業の回復に影響を与えていると見る。

ただ、来期(10~12月)の業況DI指数の見通しは強気姿勢に転じている。首都圏が42.9、近畿圏が43.3と両エリアとも上昇を見込んでおり、「ワクチン接種が進んで感染者数が減少していけば、動きが出てくると予想」(神奈川県小田原市)、「ワクチン接種者が増え、通常の生活に戻りつつあり、住宅探しを控えていた人が動き出しそうだ」(大阪市)などワクチン効果に期待する声が多く上がっているのが特徴だ。

昨年は、コロナで人の動きが滞るとともに住み替え需要が減っていたが、今年は住み替えが増えていると実感する地場事業者も増加してきた。賃貸市況は「ワクチン」と「緊急事態宣言解除」の2つが改善のキーワードとなっている。

募集家賃は単身者向けなど下落傾向が続く

こうした点を踏まえながら来期の業況DI指数の予測をエリアごとに見ると期待感が大きい。東京23区は40.9と今期(7~9月)の33.8から大幅に改善する。都下も45.0(同40.3)となり、神奈川県が45.6(同43.4)、埼玉県が41.7(同45.3)、千葉県が44.5(同42.9)となった。首都圏は埼玉県を除いて10~12月は業況指数が改善する見通しだ。

近畿圏についても、大阪府の来期は43.6と今期の36.9から大幅な改善に向かう。兵庫県も42.9(同38.9)となり、京都府が43.1(同34.5)の見通し。首都圏と同じように改善期待が大きい。

一方、家賃については大幅な改善が見通せていない。同社の「賃na貸マンション・アパート募集家賃動向」を見ると、東京23区では2020年4月以降から単身者向けの家賃が下落している。

その他の面積帯を見ても横ばいか下落傾向に転じている。賃貸から購入へという流れが表れているという。住宅ローン金利が低い水準であることに加えて、住宅ローン減税の縮小前に駆け込みで家を購入する動きにつながった可能性がある。

不動産経済研究所の発表によると、首都圏の新築マンションの発売戸数が大幅に増えた。11月の発売戸数は5452戸(前年同月比95.4だった。

発売戸数が大幅に増えたのは都内の大型物件の供給が影響しているものの、初月契約率が約8割に達したのはローン減税縮小の動きを反映している。

政府・与党は2022年度税制改正大綱で住宅ローンについて年末の借入残高から1%を所得税や住民税から差し引ける控除率を0.7%に引き下げることを決定。

自民税調の動きを報道ベースで察知している消費者がマイホーム購入に動いた可能性がある。住み替えもあり、すべてが脱賃貸の需要とは言えないが、低金利とローン減税縮小にコロナ禍の在宅勤務が相まって脱賃貸が進んでいることが募集家賃に影響を与えている可能性がある。

                                                 株式会社寧広