融資状況は厳格化が進む。審査で職業・職種の選別がコロナ禍で加速

不動産投資を実行するのに重要なのが資金の手当てである。金融機関からどの程度の資金を引っ張ってこられるか。借り入れによりレバレッジを掛けられるのは魅力の一つだ。

だが、東京23区の収益不動産は高騰している中で、今の市場価格と銀行の評価との乖離、つまり売買価格と鑑定評価額の乖離率が大きく銀行の保守的な観点からの担保評価の額が追いつかないことが増えており、融資を断られることもある。

個人不動産投資家のAさんは、「東京都心部の区分マンションを購入したときに、10行とはいかないが、結構な数の銀行にアタックしたがなかなか色よい返事がもらえなかった、要は断られました。静岡銀行はすぐに断られましたが、50代という年齢と自営業であることが理由だったようです」と話す。

金融庁がコロナ前の2019年に実施した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」を見ると、銀行の投資用不動産向け融資の実行額は2017年をピークに減少し、融資に消極的な態度を取る金融機関が増加している。

銀行イメージ入稿原稿

金融機関の9割以上が給与所得は返済原資として考慮

こうした状況を踏まえると、2年あまりに及ぶ新型コロナウイルス感染拡大の影響が今の融資審査の判断に大きく作用していることは想像に難くない。

これまでに個人所得の面から断られる属性ではない人が審査に落ちるケースでは、飲食・サービス業や観光業を営んでいる人、大手の旅行会社や航空会社に勤務するサラリーマンなど新型コロナウイルスで大打撃を受けている職種が目立っている。

前述の金融庁の調査を見ると、金融機関はローンの返済原資として95の信用金庫・信用組合が返済能力を測る上で物件からのキャッシュフローのみならず顧客の給与収入等も考慮していることが分かっている。

給与収入を主要な返済原資のひとつとして考えている側面を踏まえれば、金融機関はコロナ禍で職業の選別が厳格化していると考えられる。

現在は緊急事態宣言が解除され、10月以降から新規感染者数が減少しているが、新たな変異株「オミクロン」が発見されたことで社会・経済の正常化に向けては予断を許さない情勢が続きそうだ。2022年以降の融資環境として厳しさが増す可能性もある。

不動産投資は個人参入のハードルが上がっている

冒頭の個人不動産投資家の場合は、既に複数の不動産を長期で運用して結果を出しているので素人ではない。そうした属性であっても融資を受けることが簡単ではなくなってきていることを窺わせる。

とはいえ、Aさんは、「最終的に融資に対応してくれたのが都内の大手信金でした。門前払いですぐに断られた銀行とは違い丁寧に対応してもらえ、3年分の決算書と確定申告書持って行ったところ審査を進めてくれて融資が受けられました」という。

都内の別の信金では、「個別判断をしている。自己資金がどの程度必要なのか、必要でないのか。自己資金比率が高いほうがデフォルト比率も低いとの考え方があるので、自己資金が多いに越したことはないが、投資家の属性や物件の属性によっては100%の融資もある」と融資の窓を閉めているわけではないとする。

申し込みの入り口の段階で融資できるかできないかの方向性をすぐに行い、融資審査をするがどんなに早くても3週間から1カ月ほどの時間が必要だとしている。

融資に柔軟に対応してくれる金融機関とそうではない金融機関を見極めることは難しいが、投資運用が長い投資家はこれまでの運用履歴を整理しておくことで突破口となりそうだ。

一方でサラリーマン大家を初めて検討する人は、預貯金や株など手元資金を用意できていて、どれだけ頭金を用意できるか、また月々の給与所得水準がどの程度かなど個人が不動産投資に参入するハードルが高くなっている。

                                                 株式会社寧広