市場規模が広がるに従い
社会課題の解決に貢献する商品が続々
一つの不動産を小口化して、複数の投資家が購入出資する「不動産小口化商品」。同じ不動産を共同で所有することから「共同出資型不動産投資」とも呼ばれている。
例えば、都心の好立地に建つ10億円の物件を個人が買うのは現実的でないが、100口にわけて販売すると一口1000万円になり、小口化することで投資のハードルは大きく下がる。
現在は一口十万円程度の案件もあり、資金面から二の足を踏んでいた層を中心に、支持を集めている。

不動産小口化商品の対象は商業施設やマンション、戸建ての住宅など多岐にわたり、それらの特性に応じて投資をするのがポイントだ。
一般的に取得した商品は賃貸用として貸し出され、テナントや入居者から得た賃料収入を口数に応じて投資家に分配するが、テナントが中心の商業施設なら景気により賃料収入が上下したり、賃貸ニーズのないエリアに建つマンションだと満室にならず、十分な分配を得られない可能性がある。
多くの商品は販売時に運用期間や想定利回り(年利)を明示しているが、インカムゲインを得たり、売却時にキャピタルゲインを期待できるかどうかを精査することだ。
そんな不動産小口化商品の世界では対象不動産のジャンルが広がっていて、近年は障がい者施設やグループホーム、サ高住など、障がい・福祉に特化した案件も登場している。
言わずもがな、背景あるのは少子高齢化だ。日本ではすでに人口減少が始まっていて、今後は賃貸物件を必要とする現役世代は減っていくだけ。他方、高齢者は増加の一途をたどっていて、「令和3年版高齢社会白書」によると、高齢化率は28.8%に達している。今後もその割合は増え、2025年には30%を突破、50年には37.7%のなるとみられている。

出所:ニュースリリース
これに伴い必要とされるのが、先に挙げたグループホームやサ高住、老人ホームをはじめとする高齢者向けの福祉施設だが、供給量は不足しているというのが、もっぱらの見方。
そのため、不動産小口化商品を活用した施設づくりが進められているのだ。既存の建物や中古不動産を活用すれば空室問題の解消にもなり、供給の足りない施設を作ることで地域貢献にもつながる。商業施設や住居用物件だと賃貸ニーズを把握するのが難しくても、障がい者や高齢者向けの施設なら、日本が置かれている状況を照らし合わせることで、リターンの確実性をイメージしやすいかもしれない。

出所:ニュースリリース
これまで、高齢者施設などを保有するヘルスケアリートは徐々に増えていたが、いよいよ不動産小口化商品にも広がってきた格好だ。新たな投資先として検討の余地があるのではないだろうか。
高齢者施設には医療・介護職による独自のオペレーション、法による規制など、施設づくりや運営における専門知識が求められ、個人ができるものではない。ところが不動産小口化商品の場合、日々の管理は専門事業者が手掛けるので安心だ。
一方、空室が続くと賃料収入は減り、不動産価値が下がると売却時の収支がマイナスになることも。中途解約ができない、できたとしても買い手がいつからないこともある。
運用会社と匿名組合契約を結び、運用会社に出資する「匿名組合型」の商品だと投資家に所有権はなく、不動産共有持分を購入し、事業者とともに出資する「任意組合型」は所有権があるなど、出資方法によって不動産の持ち方にも違いがあるので、配当金の税務区分や相続時の扱いも異なってくる。メリット・デメリットを理解したうえで始めたい。
いずれにしても、人口減少に直面した始めた日本にとって、不動産の有効活用は社会問題の一つ。今後も、ユニークな対象に投資する不動産小口化商品は出てくるだろう。投資のバリエーションが広がりとともに、より多くの人にとって不動産投資は身近になっていくのかもしれない。
株式会社寧広