省エネルギー・環境配慮建築の評価方法と今後 ? 建築の環境スペックのメリット 「不動産投資家の建築知識017」N

社会的なSDGsの潮流の中で、建築、住宅における省エネルギーの要請が高まっている。もちろん一朝一夕に性能を変えることができない建築物の省エネ性能だが、だからこそしばらくの間は省エネ性能の高いものと低い既存のものが併存することになる。

そういった併存状況でこそ、省エネルギー性能評価が差別化の要件として注目されていくことになるだろう。今回はその建築物の省エネルギー性能評価方法について知っておこう。

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地球環境と建築

日本における建築物省エネ法の動向

1979年に1970年代前半のオイルショックを背景に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」を始まりとして減少してきた産業・運輸分野におけるエネルギー消費量に比較し、建築物部門のエネルギー消費量は遅れていた。

その割合は相対的に上昇し現在では国内のエネルギー消費の1/3を建築物分野が占める事態となっている。平成27年12月のCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、日本も採択したパリ協定とそれに基づく「日本の約束草案」(令和12年度削減目標)、2030年度に2013年度比-26%を達成するためには、建築物部門の大幅な削減達成が不可欠となっている。

その中で平成27年に定められた「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」は、さらなる目標達成努力が必要となった令和元年に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(改正建築物省エネ法)」として改正されさらなる措置を加えれ令和3年より施行された。

平成27年7月8日に公布された建築物省エネ法では、以下の四点が定められた。(適合義務・届出義務等の規制的措置については平成29年4月1日、容積率特例・表示制度等の誘導的措置については平成28年4月1日に施行された)

(1)大規模な非住宅建築物に対する適合義務及び適合性判定義務
大規模な非住宅建築物(特定建築物)について、新築時等におけるエネルギー消費性能基準への適合義務及び適合性判定義務を課し、これを建築確認で担保することとする。
→ここでの特定建築物には「集合住宅」が含まれるため、アパート・マンションに類するある程度以上の床面積規模(2000㎡以上)を持つものは、新築時に省エネルギー基準を達成して適合であることを確認される「義務」がある。

(2)中規模以上の建築物に対する届出義務
中規模以上の建築物について、新築時等における省エネ計画の届出義務を課し、エネルギー消費性能基準に適合しないときは、必要に応じ、所管行政庁が指示等を行うことができることとする。
→中規模(300㎡)以上の(基本的に全ての)建築物(オフィスなどを含む)は、新築時に省エネ計画(建設、利活用)を立て、それを届出する「義務」がある。

(3)省エネ向上計画の認定(容積率特例)
省エネ性能の優れた建築物について、所管行政庁の認定を受けて容積率の特例を受けることができることとする。
→上記届出、ないしは確認によって、容積のボーナス制度がある。

(4)エネルギー消費性能の表示
エネルギー消費性能基準に適合している建築物について、所管行政庁の認定を受けてその旨を表示することができることとする。
→一次エネルギー消費量を評価指標として用いた建築物のエネルギー消費性能を表示する仕組みが位置づけられた。
外皮性能PAL*と一次エネルギー消費量評価のBEI

外皮と設備
外皮と設備

このエネルギー消費性能の表示において、省エネルギー性能の内訳とは、
・外皮性能

・設備性能
の二つを主な対象としている。

外皮性能の指標をPAL*(パルスター/ペリメータ・アニュアル・ロード・スター)と呼び、これは建物の内と外の温度差、日射などによる影響のある室内の外周部(ペリメータゾーンという)の年間熱負荷をゾーン面積当たりに割ったものとなる。これが、平成25年に定められた地域ごとの基準値以下となるよう計画されることになる。

PAL*≦判断基準値

設備性能の指標は一次エネルギー消費量といい、建物の利用に伴う直接的なエネルギー消費量のことである。

住宅においては暖房設備、冷房設備、機械換気設備、照明設備、給湯設備、その他の一次エネルギー消費量の総和から効率化された設備による消費削減量を減じたものを算定し、基準値と比較して評価を行う。

この消費性能評価をBEI(ビルディング・エナジー・インデックス)と呼び、設計された一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値となる。このBEIが小さいほどよい性能を示すことになる。

特に大事なのが、BEIであり、住宅、非住宅を問わず、これからの時代最低でも1.0、可能なら0.8を切ることが望ましいのだ。そのためにはもちろんエネルギー消費の小さい設備を用いることであり、結果としてそういった設備で環境調整が賄えるよう、きちんと断熱性能と日射負荷のコントロールを上げて空調負荷を下げることが大事なのだ。

性能を「表現する」制度「BELS」「eマーク」「CASBEE」

BELS表示例
BELS表示例

これらの建築物の性能の総体として、省エネ性能を表示する制度がいくつかある。今後の不動産投資において、特に既存の建築物の利活用のための取得時にチェックしたいものを紹介する。

まず、近年普及し始めているのが「BELS」(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)だ。特に国交省、経産省、環境省がかかわる助成制度において、多く要求性能のエビデンスとして用いられることが多い。

基準一次エネルギーに対してBEI=1.0で★★、BEI=0.8(住宅)0.6または0.7(非住宅)で★★★★★となる星表示で性能ランクを示すことができる第三者評価である。

eマークは、主に既存建築物の基準適合を証する表示制度であり、省エネ改修の評価として建築物、広告に表示できる。
CASBEEは、「建築環境総合性能評価システム」の意味で、環境性能そのものを評価し格付けする手法である。「Sランク」から「Cランク」まで五段階評価が与えられる。

多角的な評価項目を持ち、総合的な評価が可能である。
評価を取ることの重要性

(1920)健美家017_04_LEEDのグリーンビルディング表示
LEEDのグリーンビルディング表示

これらの評価がどのようにこれから扱われていくのか、少なくとも政策的にはその重要性、必要性が増していく方向である。

一方で市場的にはどのような影響があるのだろうか。ここで、海外のLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)という指標がどのように活用されているかを紹介すると、この認証を受けることで「グリーンビルディング」という称号と、そのランク(Certified, Silver, Gold, Platinum)を取ることができ、市場でも特にそのカテゴリーにあるビルディングへ、良質な(家賃のプレミアな)テナントがそれを選択する動きが出てきている。

また、ESG投資との相性も良いなどのメリットを考えた時、取得しようとする、また所有する建築物に関するこれらの性能表示を意識していくことが今後ますます重要になってくるであろう。