コロナ禍でガレージ付き賃貸住宅のニーズが高まっている。今年3月、福岡県福岡市で1LDK+駐車場のガレージ付き賃貸住宅が完成し、家賃15万6000~8000円と、相場の2倍の家賃で募集したところ、4戸の募集に対して16組の申し込みが入った。ガレージ付き賃貸住宅を手掛ける株式会社LDKの玉田敦士社長に話を聞いた。

店舗ニーズの高いエリア、職住一体化の
新たな住空間を求めるニーズに合致した
コロナをきっかけに、「入居者もオーナーも、以前とは明らかに求めるものが変わってきている」と玉田氏。
ガレージ付き賃貸住宅に関する問い合わせが増え、オープンハウスを開催すると、定員を上回る申し込みがあり、申し込みを断っている状況だという。いったいどんな変化があるのだろう?
「これまでガレージ付き賃貸住宅を利用する人の約30%は、自営業やフリーランスで、店舗や事務所として利用する人が多くいました。それが最近ではリモートワークの増加や、外出自粛によって、職住一体化が進み、ガレージの使用用途が広がっています」
ニーズの変化にいち早く気づいたオーナーからの依頼で手掛けたのが、福岡市早良区の物件だ。店舗ニーズが高い場所だったこともあり1LDK+駐車場で、家賃は15万6000~8000円と強気な設定だ。アットホームによる福岡市早良区の1LDK~2DKの家賃相場は6.4万円。福岡県の月極駐車場の平均額は、カーパーキングによると1.5万円。上記を合わせた家賃相場は月7万9000円と、募集家賃は、相場の2倍になる。
それにもかかわらず4戸の募集に16組の申し込みが入り、入居審査を行うことで、より優良な入居者で満室になった。


玉田氏の会社が手掛けるガレージ付き賃貸住宅は、千葉や東京など全国で広がりを見せている。艶消し黒の鉄骨の素材感を露出させたガレージが魅力的で、車やバイクの愛好者に、根強いファンを持つ。車好きな人に向けた自動車雑誌『カーマガジン』やライフスタイル雑誌『Daytona(デイトナ)』と20年近く、「クルマ共生住宅」を開発してきた。
東京・板橋では、3LDK+駐車場、家賃30万で募集し、4戸中3戸の入居者が決まっている。30万円の強気の家賃設定でも成立するのが強みである。
「ビニールクロスをほとんど使用していない特徴を生かし、『ペット可』にしていることも人気を下支えしています。ペットを飼いたい入居者が増えていることも『アフターコロナ的変化』の1つ」

東京・都心から1~2時間以内の郊外が狙い目!
土地の安いエリアでも高い家賃設定ができる
注目すべきは、入居者の募集は、SNS(フェイスブックとインスタグラム)がほとんどで、従来型のポータルサイト経由の申込みは、ほぼゼロである点だ。
「いま、縄文遺跡の聖地といわれる長野県茅野市で、デュアルライフ(2拠点生活)を始める人向けのガレージ付き賃貸を建設中です。自転車で遺跡を巡ることができ、外の共用部に、キャンプファイヤーができるファイヤーサークルを構える予定です。SNSのほかに、自転車雑誌で入居者を集う予定ですが、すぐに満室になると思います」
コンセプトを明確に打ち出した「コンセプト型賃貸」で、ターゲットを絞った戦略と、入居者の募集方法が、高い家賃設定でも満室にするポイントになっている。
コロナの影響で、電車を使わない人も増えており、デュアルライフ(2拠点生活)を求める人も増えていることから、今後、ますます郊外エリアのニーズが高まりそうだ。
「ガレージ付き賃貸は、移動手段である車やバイクを格納できるため、駅から近い場所にある必要がなく、鉄道インフラの序列に制約を受けません。そのため、土地から購入して建てる場合でも、100坪2000万円ほどの土地の安い郊外エリアで、高い家賃設定が可能になるため、表面利回り10%を超えるケースもあります」
主要エリアは、下図の赤色で示した郊外だ。都心からの所要時間が1時間~1時間半で、土地の坪単価が20万円以下の場所である。
「コロナ以降の新たなニーズとして、都心から2時間以内で移動できる軽井沢、八ヶ岳、山中湖、那須などのエリア(下図の黄色部分)にも注目です。デュアルライフ(2拠点生活)向けのガレージ付き賃貸のニーズがあります」

ガレージ付き賃貸住宅は、他に代わる物件がほとんどないため、長く入居する傾向にあり、家賃下落を回避できるといった利点もある。
「新たな機能として、ガレージのシャッター部分にガラス素材のアタッチメントを装着できるようになりました。店舗や事務所に早変わりさせることができ、好評です」

最近では複数の賃貸物件を保有する『プロ大家』からの問い合わせも増えてきているという。
長引くコロナの影響で、自宅で仕事も、生活も、いかに楽しめるかが問われている。そうした中で、趣味や仕事に応用がきく、ガレージ付き賃貸住宅は、新たな可能性を秘めていそうだ。
株式会社寧広