物件購入前の”建築の瑕疵” チェック方法。外装と構造、設備について

建築の建て方を知ることがチェックの要諦
後から直せるものと直せないもの

現地確認前の基本的な書類で遵法性チェックにパスした物件であっても、やはり取得前には現地を訪問し実見してチェックすることが望ましい。というより、リスク意識からは必須だと言えるだろう。

というのも、実際の建築物が確認申請、及び完了検査の図面、書類どおりの合法的状態、健全な状態であるかは、その後の管理、マネジメントによって変わりうるからだ。

・まず合法状態か、そうでないか

前回の記事で説明したように、日本の建築の安全に関わる制度が担保するのは、審査(検査)時の安全の確認でありそれ以降の管理によってそれが守られることを前提としている。

しかし、その管理内容、またその結果である現在の状態を常に確実にキープし続ける制度にはなっていないのが現在の建築基準法なのだ。※1)

消防法に関しては防火対象物となっていれば、適宜検査が入り指導が行われるそれによってある程度の安全状態がキープされる運用となっている。(とはいえ、消防検査自体の間隔や内容は所轄の消防署ごとの判断によるので、全国一律、かつ完全ではない。)

※1:建築基準法でも、12条報告という制度があり、対象となる(地方自治体ごとに定められた)規模、用途の建築物の建築主は本来、建築については3年ごと、設備について毎年報告を行うことが義務付けられている。
例(東京都)

すなわち、現地で実際に法規が保証した安全な状態にその建物があるのかを確認することがまず基本書類のチェック→現地確認での第一チェックポイントになる。

それが異なっていた場合、具体的には検査後の増築、改築、変更などが認められた場合は、それが違法でないかどうかを知ることが必要だ。例えば一般に確認申請を出さずに増築はできないが、その敷地の都市計画区域の地域指定によっては、10平米までは確認申請を不要とするケースもある。

図面と実際に相違があって、それについて判断がつかない場合は建築士や行政窓口などの専門家に必ず確認しよう。

万が一建築が違法状態であった場合、そのリスク(安全性の不足、是正工事の負担)を考えると、どんなにお買い得なように見えても取得自体を考え直す必要がある。

違法の三階増築が行われていた事例
違法の三階増築が行われていた事例

・建築が健康か、そうでないか

次に、法的な要件がOKであっても、その後の補修、改修に費用がかかるケースを避けるために建物の健康状態に関わる状態をチェックしよう。

この時、各部位の重要度を考える手がかりとなるのが、建築がどのように作られていくかの工程の順番だ。

一般には、基礎→構造→防水/外壁→建具→設備→内装/防火→外構/什器と考えておけば良い。

そして、この順番が大事なのは、前の方の工程に何かある場合ほど後から直しにくい、直すのに時間と費用がかかる部位だということだ。それは竣工後には見えにくい場所でもある。

基礎については、既存の建築では外壁と地面が接する部分、及び最下階の床下を覗くぐらいしか現地確認の方法はないが、もし監理報告書などで基礎工事の工程写真があれば確認しておこう。

そしてここに問題がある(水平が出ていない、大きな割れがあるなど)場合は取得を見送るべきだ。

基礎の欠陥は最悪倒壊だけでなくその上の構造の欠陥を引き起こすことにつながる危険があり、さらにリスクを大きくするものだからだ。

確認された土間床基礎のクラック
確認された土間床基礎のクラック

構造についても通常は内外の仕上げ材の中に隠されているので、確認できる箇所は限られてしまうだろうが、小屋裏、床下、また収納の内部などで見えるところ、また基本的な床、壁の水平垂直に歪み、傾きが出ていないかなどはチェックできる項目だ。

構造が歪んでいる場合、あるいは劣化(コンクリート、鉄部の錆びなど)がある場合には、その欠陥が進行するに従ってそれ以降の部位にも影響が出てくる=運用中の費用負担が増えていく。

また同時に耐震性、耐風性など、建物を支える、建物が守る性能における安全性が低下する点でもゆるがせにできない部位だ。

これについては、外から見えない場合があるので、床下、天井裏などを確認する必要がある。できれば建築士などの専門家に同行してもらってチェックしてもらった方がいいだろう。

床下を確認、基礎コンクリートスラブ上への浸水と床を支える根太の腐食
床下を確認、基礎コンクリートスラブ上への浸水と床を支える根太の腐食

建築で大事な「強・用・美」
それを入居者に与えられるかどうかが鍵

そして、外皮と呼ばれる部分、外壁、防水(屋根)、外部の建具(サッシュ)が次に重要な部分となる。

これらに不備、欠陥、老朽化があると、漏水という大きな不具合につながる。生活にも、また建物寿命にも大きな影響が出ることを考えると、この部位についてのチェックは当然となるだろう。

タイル外壁に現れたクラック
タイル外壁に現れたクラック

具体的には、外壁(防水層)の割れ、隙間、屋根、防水部の劣化や滞水、外部建具の劣化、破損など、基本的に目視でもチェックできる部分であり、ちゃんと確認、記録しよう。

逆に漏水の事象が起きるということはこの部位のいずれかに欠陥があるわけで、その確認、及び修繕には費用と時間がかかるのだ。保有期間中には当然、長期修繕計画の中で補修費用と工事を見込んでおくことが必要となる。

外部サッシュ枠まわりの劣化
外部サッシュ枠まわりの劣化
屋上防水の滞水状態
屋上防水の滞水状態

ここまでは、建築完成後には使い手、入居者からは通常目に触れない部分でありながら、建築全体の寿命や機能の基本的なところを作る部分である。これ以降の設備、内装、外構などの部分については、使い手、入居者の生活・活動を直接に支える部分であり、その物件の人気や募集、入居率に影響のある部位となる。

チェックの方法は、使い手の立場に立って細かいところを見ていくことが基本だが、大事なことはその使い手、入居者の視点を持つことに他ならない。

建築の価値について、有名なローマ時代の建築家ヴィトルヴィウスの有名な格率である「強・用・美」、すなわち「安全・安心」「機能・便利」「美しさ・清潔さ」というものがあるが、それをユーザーに与えられるかどうかということを念頭に見ていくことが、優れたオーナーが物件を取得するにあたってのリスクを避けるチェックの判断基準だと言える。

以上が投資物件建築評価の基本の考え方そのものでもあり、投資物件が投資期間中にどのような状態を辿るのかを事前に読む、判断することでもある。

とはいえ、それぞれの状態のどこをみて、どう判断するかについては、やはり建築を見る経験も必要だ。

一つの建築への投資を慎重に進めたい場合、建築のリスク判断に自信がない場合は、建築士などの専門家に同行を依頼し、参考の所見レポートを委託することも、リスクを避ける手段となるだろう。うまく専門家を活用してリスクを避け、安心の上に投資をしていこう。

                                               株式会社 寧広