災害リスクについて知ることが安心な投資につながる:「不動産投資家のための建築知識008」New

「不動産投資家のための建築知識」シリーズ、今回は近年ニュースでも大きく取り上げられる「災害」に対して、どうリスクを認識するかについてまとめよう。

財産を失うリスクに対して建築でできること、建築ではできないことを区別することで、不可抗力である大きな災害に対して、少しでも安心を持つことにつながるだろう。

災害現地の様子
災害現地の様子

その不動産投資の
安全・
安心の根拠は何か

近年、風水害、また地震などの災害のニュースがいつもどこかで起きているという感じを持ったことはないだろうか。災害の規模、起きる頻度が上がったような印象を受ける。

もちろん、現時点では統計データ的にその確率が大きく変化したということはなく、むしろ情報や報道のありようが変化した部分によるものが多いのだが、逆に言えばこれまでも報じられてこなかっただけで、各地において同様な災害はあった、ということだ。

すなわち、見える見えないにかかわらず、どこにあれ常に非常時に備える心構えが必要だということに立ち返らなければならないのだ。

不動産の安心安全は、一つは建築の安心安全、もう一つはその土地の安心安全、三つめは使う人、使い方がつくる安心安全で成り立っているということだ。

前回の賃貸DIYの紹介において建築の安全性の根拠の一つとしての「建築基準法」「消防法」に触れた。それを確認するための建築確認、完了検査などがあることを書いた。

では、土地の安心安全とは何によって確認できるのだろうか。
最も端的にみておくべきなのは「ハザードマップ」だ。
現在、日本の全国各地においてその場所に想定される災害リスク、土地の特徴、過去の災害状況などを一覧できるマップが公開されている。

ここに示されているものだけでも、エリアごと事情が異なるのがわかる。津波、洪水などは通り一つでリスクの分かれ目になることもあるのだ。

これらのハザードマップの整備は2001年の水防法の改正、土砂災害防止法の施行、1980年代以降の火山噴火ハザードマップの充実、地震については1995年阪神淡路大震災などを契機に進められてきた。

これらを個別の災害ごとではなく、統合された情報としたものが上にあげたポータルサイトだ。これまで、学会などでは発表されていた事実が、一般の目にも触れる場所で簡便に確認できるようになったことの意義は大きい。公表された情報の価値は、あとは市民がそれをどう使うかということになる。

土砂災害ハザードマップ
土砂災害ハザードマップ

建築の安全と土地の安全

本題の不動産投資の話にフォーカスすると、投資とは未来の収益、利潤をあげる資本(不動産)というエンジンへ燃料を供給することと言える。したがって、エンジンである不動産はなるべく長く安定して稼働するということが望ましい。「長く安定して」ということについて、それを不動産の表現で言い換えると「安全・安心」ということになる。

もともと、他の財に比較して「安全・安心」という点にこそ不動産の価値は卓越しているものと考えられるものだが、ここで一般にはそれが建築の安全と土地の安全との二つの組み合わせで成り立っているということに注目したい。

建築設計者として、これまで見てきた震災を含む大災害の現場で確認されることとなったのは、「土地の安全性>>建築の安全性」という不等式だった。

つまり建築の安全性は土地の安全性の上ではじめて成立し、逆は成り立たないということだ。言い換えれば、土地が不安定な場所で、建築をどれだけ安全に構築したとしても、土地の災害によってそれが失われるということだ。

それを初めて目にしたのは、阪神・淡路大震災の現場だったが、日本の耐震建築最強の鉄骨鉄筋コンクリートの柱脚が破断するという場所と、何事もなかったかのように残った木造瓦葺の民家とが、地盤の切り替わる通り一つで近接しているという場所を各所で見かけたのだ。

だからと言って地盤が良ければ構造設計は不要ということはそのためだけの構造設計ではないので言えないが、本当の意味での耐震性は建築×地盤(土地)という双方で決まるということだ。

土地の安全とエリアの安全

先日来報じられている、静岡の土砂災害においてその原因分析にはまだ時間がかかると思われるが、現時点でも10年以上前の上流における盛り土土地改変の影響が話題となっている。

一般に盛り土で成形された土地は、切り土で成形された土地に比べ安定度が少ないということは常識的に知られているが、今回流された下流の家についてはその建物の建てられた敷地(境界)においては安全だと判断されていたものもあったかもしれない。

しかしながら、その敷地に近接した小さな川につながる上流エリアがはらんでいたリスクが、天象によって顕在化しそして下流に達する「エリアの災害」となったのだ。

土地(敷地)はそれ単独で安全であることはない。連続するエリアの安全の上の安定性になるのだ。

エリアスケールの災害(国交省
エリアスケールの災害(国交省)

では、不動産投資においてこの安全はどのように考えていくのが良いのだろうか。

建築の安全を法令で確保し、また土地の性状をハザードマップで確認(必要であれば地盤調査などでも確認したほうが良い)したうえで、さらにそのエリアの安全も見る「目」を持つことが、この災害の多い日本においては必須である。

それらの上に古い住宅地、市街地などが発展してきたことを歴史の中に見ることも可能だろう。

利回りだけでない、多角的な目をもって不動産を評価することが賢い投資家の資質の一つとなるのだ。

                                                 株式会社寧広