新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ観点から外国人の入国を規制してきたが、入国後の待機期間を短縮するなど政府はビジネス関係者の入国で水際対策を緩める方向だ。海外でも渡航制限を緩和する動きが出始めて経済の正常化に向けて動き出している。ビジネス客をどこで線引きするのかが難しいが、海外渡航が緩和されれば、個人投資家もビジネス客として来日できるようになるかもしれない。

新型コロナウイルス感染前は東アジアや東南アジアなどの個人投資家が東京や大阪などの大都市部のマンションを購入する動きが活発だった。特に東京五輪・パラリンピックが決まった2013年9月以降に東京湾岸に乱立するタワーマンションなどを買い上げる動きが相次いでいたことが各種メディアでも取り上げられた。特に中華圏からの個人投資家が目立った。
コロナ禍で来日できなくなり、物件の見学会などは急減したが、そうした投資家向けに国内の不動産会社は、代替策としてオンラインセミナーを開催してきた。
来日して10年以上経ち永住権を取得している台湾出身の陳さん(仮名)は、「日本に来られなくなって物件の見学会ができなくてもオンラインで室内を見られるので、それを見て購入している人や日本に居住している親戚や友人、知人などを通じて購入している。過去には東日本大震災や尖閣諸島問題で停滞感が漂ったこともあったが、基本的に中華圏の投資意欲は続いている」と今の状況を語ってくれた。
短い滞在期間で投資物件を決める
特に台湾人は、伝統的に資産を国内だけでなく海外に分散する傾向が強い。株式投資も活発だ。中台対立が緊迫感を増している中で、そうした意識が一層強まりそうだ。台湾人の不動産投資先としては東京都心や都心周辺のマンションを探すが、例えば一棟賃貸マンション1階部分に長期契約で安定的に収入が入ってくるコンビニなどの店舗入っている物件を好んで購入するのが特徴だ。
台湾国内で物件を探すときも1階の店舗を好んで探す。店舗部分は積極的に収益(高い賃料と高い売却益)を得るタイプとして、上階の居住部分は安定志向の投資家が選ぶという。日本の場合、マンションの価格は、より良い眺望が得られるとして高層階ほど高い値付けとなる。
台湾ではそうではなく、高層部分より1階部分の価格が高くなる。固定資産税の元となる路線価(台湾でも日本と同様な制度がある)は、階数に関係なくどの区分でも変わらない。つまり1階の店舗部分は高い値段で売却できるため、路線価との開きを相続税対策に利用できることが1階店舗に人気がある理由となっている。
話を日本の不動産に戻すと、海外投資家は、何度も来日できる距離ではないため、検討期間が短いのが特徴の一つだ。ある台湾人投資家は、1度の来日で1~2週間ほど物件を見学して、ときには見学したその日に決めて帰国ケースは珍しくない。コロナ禍前だが、見学に訪れて10分もかからずに購入を決めたでケースもある。来日時に見学するのは、もちろん人により違うが4~10物件ほど。不動産を購入する税金などの手続きも台湾と似ていることもなじみ深い。コロナ禍であっても日本の不動産を安定感のある資産として評価している。
東京の不動産は諸外国より割安
2002年のウイルス感染症サーズ(重症急性呼吸器症候群)も中国での発生が飛び火した格好だったが、その時も経済活動が停止する事態に陥った。
台湾の不動産仲介会社に勤務経験のある江さん(仮名)は、「このときに台湾の不動産価格は大打撃を受けたが、それが日本では見られないことに驚いている。でも、サーズで価格が下がった時期に購入した台湾の不動産価格は数倍になって結果的に儲けた人もいますけどね。いまの台湾の不動産価格は東京よりも高い」という。
日本の不動産価格は高騰していると言われるが、台湾だけでなくシンガポールや香港、ニューヨーク、ロンドンなど諸外国の主要都市と比べると安い。この割安感を求めて海外の富裕層マネーが入り込めば東京の不動産にはなお上昇する可能性がありそうだ。
株式会社寧広