次の募集は、家賃を上げるか下げるか? 二極化するマーケットでの、新しい戦い方New

新型コロナの感染拡大もあいまって、ここ数年仲介件数はトータルでは減少傾向にある。いまだ決まらない長期空室に加えて、3月末退去の申告も受けると、不安にもなり、弱気の家賃設定も検討したくなる。さて、これからいったい、いくらで募集すべきだろうか。

感染対応で、仲介件数は減少。
「しかるに、家賃を下げる」というステレオタイプは、必ずしも正しくない

ウィルスとの闘いは長く続いている。国内の感染者数はかなり減ってきたものの、海外では感染者は多く、まだ予断を許さない。オミクロン株という新しいウィルスは感染力が高く、自粛かGoTo再開かは、微妙な情勢だ。

この間、仲介件数は減少傾向にあった。法人・学生・外国人といった各分野での仲介件数はダウントレンドにあり、そうした人をターゲットとした物件は、入居促進が厳しくなってきている。

また、テレワークやオンライン授業の普及で、「駅に近い」「職場に近い」だけでは、簡単に満室にならず、首都圏の人気物件がなかなか決まらず、ちょっと遠い郊外エリアの物件が決まるといった現象も起った。

しかるに「こんなに空いているのに、次の繁忙期が来る」ので「募集賃料は下げて競争するか」という声を耳にする。さて、ざっくりマクロには正しいが、どうだろうか。

家賃を下げて募集するか、設備強化して出来ればあげて募集すべきか
家賃を下げて募集するか、設備強化して出来ればあげて募集すべきか

大手を中心に、法人は
今後も厳しいというヨミ

2020年下期・日管協短観・成約件数
2020年下期・日管協短観・成約件数

感染拡大で、国はテレワークを要請し、在宅勤務が首都圏を中心に拡がった。「7割テレワーク」という極端なメッセージは記憶に新しいだろう。

2021年9月28日には、NTTグループがコロナ禍後もリモートワークを基本とし、転勤・単身赴任の段階的な削減を発表した。実際に日管協短観でも「法人」の仲介件数が減少したと答えた不動産会社は、44.1%であった。次の繁忙期は苦戦するのではないだろうか。一般の法人に関しては、厳しいトレンドが続きそうだ。

なら、家賃を下げて闘うべきだろうか。答えはNOだ。
法人顧客は、「できる限り安い物件を探す」というわけでもない。法人契約では会社が借り上げを行うので、「上限賃料」は各会社で設定されているが、一般に、その上限賃料より下回れば、賃料の勝負ではない。

またフリーレントなどの施策は、法人契約では馴染まない。となると、「テレワーク時のネット代がかからない」ので「ネット無料がよい」など、設備強化が望ましい。「ディスクワークがしやすい」「書斎スペースがあり、子供やペットの乱入がない」といった時代に即した住環境強化が良いだろう。

テレワークが進むことで、法人向け物件はきびしくなる可能性が高いが、かといって家賃勝負より設備強化が有効か
テレワークが進むことで、法人向け物件はきびしくなる可能性が高いが、かといって家賃勝負より設備強化が有効か

マンスリー・家具付きが
好転する可能性

また、苦戦を続けていたマンスリーマンションのマーケットにも明るい兆しはある。非常に短期間での就業などを前提としたマンスリーは、少し回復している。

例えば、これまで営業自粛をしていたモールの従業員。パチンコなど全国展開の従業員の居住などは、これからの感染の収束ムード次第ではあるが、現状の賃料設定で良いのではないだろうか

ショッピングモールは時短営業などなくなり、モールで働く従業員向けのマンスリーなどは期待できる
ショッピングモールは時短営業などなくなり、モールで働く従業員向けのマンスリーなどは期待できる

学生物件は、
家賃+ネット代で勝負

厳しいトレンドは、学生マーケットでも顕著である。感染拡大で、アルバイト先となっていた飲食店などは経営が厳しく学生は困窮している。

一方で、オンライン授業の普及により、「わざわざ下宿を借りないで、たまにあるリアルの授業のときだけ、長距離通学する」という学生むも増え、実際に日管協短観でも「学生」の仲介件数が減少したと答えた不動産会社は、39.1%であった。
しかるに学生向け物件は、法人とは異なり賃料での優位性は重要である。

一方で、オンライン授業の普及に伴い、ネット無料は必須となっている。となると自分で5000円かけてネットを引くか、それとも5000円家賃が高くても、ネット無料の物件にするといった選択肢となるであろう。

学生物件は、賃料+ネット代で勝負
学生物件は、賃料+ネット代で勝負

外国人入居者が多い物件は、
大きく迷う情勢

では、外国人の入居を積極的に展開していた物件はどうだろうか。ここは情勢がとにかく読めない。感染者の減少に伴い2021年11月8日から外国人の新規入国制限の緩和措置により、技能実習生・留学生は,「特段の事情があるもの」として、入国が認められることとなった。

これで、かなり収益物件オーナーとしては期待してすぐ、オミクロン株の登場。政府は11月30日から外国人の新規入国を禁止。南アフリカなど10カ国からは再入国も拒否とした。

こうなると、感染がどう拡がるか次第ではあるものの、外国人の入居はまたしばらく厳しさが続くことが想定される。

すでに賃料が低いというケースも考えられるため、これ以上のプライシング施策は難しい物件もあるかと思われるが、そう簡単に設備強化を図るにも間取りや立地などで苦戦が想定されるケースもある。フリーレントなどの施策も含めて、対処を考えねばならないかもしれない。

一方で、一般単身・一般ファミリーは
増加傾向

さて、「法人」「学生」「外国人」をターゲットとして考えると、コロナ禍で厳しい情勢もある一方で、特に対象を限定せず募集をしていくと、実は36.6%の企業は、増加を実感している。

「結婚します」「就職します」「親から独立します」といった動機でのお部屋探しは、むしろ「感染がおさまりつつある今」。となると強気の賃料設定でも良いのではないだろうか。

高い新築は、フリーレントなどで
満室に

人気の高い新築物件であるが、円安による輸入資材の高騰に加え、ウッドショックでさらに建築費は上昇。高い利回りを確保するために、募集賃料が高く、苦戦している物件が多い。

こうした物件は、そもそも利回り確保を意識しているため、賃料の設定を下げるのは困難だ。しかも設備は、ほぼなんでもついている。バストイレも別・エアコンも完備・温水洗浄便座もネット無料も。なんなら、宅配ボックスもあればテレワーク用の小部屋まであったりする。

「賃料も下げられない」「設備もほぼついている」ならば「フリーレントを付ける」のは王道だ。埋まらないまま、入居者がつかないなら、何ヶ月かは空室でも家賃が入らなかったのだから、その分我慢してフリーレント。とにかく、設定賃料が高いので、プライシング面での妥協点が必要かもしれない。

築浅は、フリーレントか
設備プラス

こうした高い家賃設定で建てた新築が、そろそろ一回りして、退去となり空室となる。この際は、新築同様フリーレントを基準にして考えたい。が、どうせ一ヶ月分家賃を無料にしてフリーレントとするならば、その範囲内で、設備強化をするというのも手だ。

アクセントクロスやダウンライトなどで、インスタ映えにするとか、エアコンをもう一台つけるとか、そうした「個性で勝負」もありだろう。なにしろ新築が高いので、「それより高い」なら厳しいが「新築よりは安い」ならば、「新築では無いけど、●●」という個性が必要だ。

どうしようかな、と悩んでいる入居希望者に、「でもおしゃれな部屋ですね」「防犯が行き届いていますね」「キッチンが素敵ですね」「独立洗面台が」「ペットが」と、入居希望者の「背中を押す」ポイントでの強化もありえる。

投資は伴うが、今後の入居募集でもその強化して設備は有効だ。フリーレントは一過性で、次の募集でもまたやるのかとなってしまう。ならば、もうワンポイントの勝負をしてはどうだろうか

アクセントクロスなどで、個性のある物件として勝負
アクセントクロスなどで、個性のある物件として勝負

築古は、「家賃を下げて闘う」か「設備強化して闘う」か
「リノベで勝負をかける」かを、今、決める

では、築古はどうだろうか。新築の相場が高い一方で、時には「新築の半額で借りられる」という状況もありえる。

ならば、「家賃を下げて闘う」か「設備強化して闘う」か「リノベで勝負をかける」かは、今、12月にすぐ考えたい。

なぜなら、「工事が間に合わない」のだ。多少、利回りや入居者の質には目をつぶって、家賃を下げて入れるのか。それとも、設備強化をして、頑張るのか。しかし、「ネット無料」「宅配ボックス」「防犯カメラ」などの人気設備は、工事に時間がかかる。

思い切って、畳みをフローリングにする、あるいは白い無垢の床にする、2DKを1LDKにする、ベランダにある洗濯機を室内にする。こうしたリノベーションは空室対策に有効である。

仮に250万円かかったとしても、5万円で借り手がつけば、5万円×12ヶ月÷250万円=表面利回り24%。250万円で区分所有の中古を買うより、自らの空室に投資をしてちゃんと埋めたほうがいい。しかし、このリノベも、工事期間は3ヶ月ぐらい必要だろう。

ただ、リノベは「家賃を上げて」勝負してもいい。ネット無料などの施策も、自分でネットを引けば、5000円はかかるから、多少家賃を上げもいいだろう。

むしろ設備強化して入居したほうが利回り好転も
むしろ設備強化して入居したほうが利回り好転も

賃料相場と設備状況を

とある地方都市での賃料平均と設備設置状況(プリンシプル住まい総研調べ)
とある地方都市での賃料平均と設備設置状況(プリンシプル住まい総研調べ)

たとえば、当社で調べたとあるエリアの賃料相場と設備状況は上記のとおり。新築で6.1万円のマーケットであるが、築10年を超えると相場が下がり5万円台、築20年で4万円台となり、築30年では新築の半額だ。

たとえば、仮に、築10年で家賃5.7万円・温水洗浄便座がなければ、競争劣位となり、ネットが有料ならさらに厳しいことがわかる。しかし、家賃を仮に5000円下げても、設備強化をしないと、築20年の物件に負けるかもしれない。築30年の物件は温水洗浄便座やネット無料でない物件も多いが、これ以上下げて闘うのもきつい。

むしろ、家賃を5000円あげて、バストイレ別・エアコン付き・温水洗浄便座付き・ネット無料にして、築29年で闘っても十分入居は決まるのではないだろうか。
こうしたデータは、自らポータルサイトを検索して、物件をみてみるとわかる。そう入居希望者もそうしているのである。

「厳しいから家賃を下げる」というのは、立派なプライシング戦略である。その一方で、下げて闘うだけでなく、マーケットを冷静に分析して、落ち着いて闘うべきだ。

ただし、打ち手を打つには、時間がない。4/1入居に間にあうタイミングで、施策の工事期間を見込んで決断したい。

                                                株式会社寧広