新築マンション価格がバブル期超え、価格を押し上げた4つの要因

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首都圏新築マンションの価格が高騰を続けている。

先月18日、不動産経済研究所が公表した首都圏新築マンションの平均価格は、前年同月比で10.1%上昇し6750万円となり、10月としてはバブル期の価格を超え過去最高となった。

新築マンションの価格は上昇し続けるのだろうか。これまでの価格推移を振り返りながら、高騰の背景や今後の動向を予想する。

新築マンション価格は2013年から上昇

まず、最新の新築分譲マンションの価格を確認する。新築分譲マンションの市場動向調査などを行っている「不動産経済研究所」によると、一都三県で10月に発売された新築マンションの平均価格は6750万円で、前年同月比10.1%上昇した。

地域別でみると、東京23区が8455万円(同11.8%上昇)、神奈川県が5101万円(同11.0%減少)、埼玉県が4698万円(同16.7%上昇)、千葉県が4288万円(同4.2%減少)と、東京23区が全体の価格を押し上げている状況だ。

そもそも、新築分譲マンションの価格はどのように推移してきたのだろうか。

全国宅地建物取引業協会連合が公表している「不動産市場動向データ集 年次レポート」によると、過去の平均価格の最高額は1990年の6123万円だった。しかしバブルがはじけ、翌1991年からは徐々に下落。その後は2007年ごろまで4000万円台前半で推移していた。

しかし、日銀の「異次元金融緩和」による住宅ローン金利の低下で需要が増え、新築マンションの供給が減少したことで、不動産価格は徐々に上昇していく。

2012年の新築マンション平均価格は4540万円だったが、2013年に4929万円、2014年に5060万円と毎年上昇が続いた。そして昨年、2020年にはバブル期以降の最高値である6083万円となった。

さらに、2021年上半期(1~6月)は6414万円だったことから、今年はバブル期に記録した最高額を上回ることになりそうだ。

出所:全国宅地建物取引業協会連合「不動産市場動向データ集 年次レポート」 新築マンション供給戸数と平均価格の推移(首都圏)

低金利や「パワーカップル」増加の影響で価格が高騰

では、なぜここまで首都圏マンション価格の高騰が続いているのか。要因としては、以下の4つが考えられるのではないだろうか。

1.史上最低水準の金利安
低金利により住宅ローンを借り入れるハードルが下がったことで、消費者の購買意欲が高まっている。

不動産市場が停滞していた2007年ごろ、民間金融機関の住宅ローンの金利は3%程度だった。仮に4000万円の融資を受け、金利3%の固定(元利均等返済)で返済期間35年で計算すると、総返済額は約6500万円だ。

一方、現在は変動金利であれば0.5%前後で融資を受けることができる。その場合、先ほどと同じ条件で計算すると、総返済額は約4300万円。金利3%と比べると、総返済額は2000万円以上の違いがある。

このように、低金利によって購入者の返済負担が減ったため、需要が増加したと言えるだろう。

2.リモートワークの増加
リモートワークなどで在宅時間が増え、より快適な時間を自宅で過ごすために持ち家需要が高まった。

さらに、コロナ禍による世界的な住宅需要の高まりによって住宅建材価格を含む建設費が値上がりしたことも、分譲コストを押し上げている要因だろう。

3.パワーカップルの増加
資金力のある共働き世帯「パワーカップル」の増加によって、マンション価格が押し上げられている。パワーカップルとは、一般的に共働き世帯で収入の合算額が1000万円を超える世帯を指す。

いくら低金利といっても、マンション価格が急激な値上がりを続ければ、購入できる層は一定額以上の収入がある世帯に限られてくる。首都圏で高騰したマンションを購入するためには、ある一定額以上の収入が必要であり、その代表例がパワーカップルなのである。

共働き世帯数は1990年時点で823万世帯だったが、2013年以降は1000万世帯を超え、2020年時点で1240万世帯まで増加している。

出所:厚生労働省「共働き等世帯数の年次推移」 共働き世帯は年々増加している

民間の広告会社が首都圏で新築マンションを購入した人を対象に行った調査によると、共働き世帯が購入したマンション価格は、片働き世帯に比べ高い。また、共働き世帯が購入したエリアは、東京23区が全体の51.8%に上ることが分かった。

これらのことから、資金力のあるパワーカップルが価格上昇を続ける東京のマンション需要を支えていることがうかがえる。

4.マンション用地仕入れ価格の上昇

建設事業者とマンション開発業者の仕入れ価格上昇によって、販売価格が上昇している。

一般的に新築マンションの用地仕入から実際の販売までの期間は、小規模マンションで1年ほど、大規模のものなら2~3年かかる場合がある。そのため、現在販売されている新築マンションはコロナ禍前に土地を仕入れた物件が大半だと考えられる。

コロナ禍前、東京オリンピック後のインバウンド需要を見込んだホテル建設事業者とマンション開発業者は、用地取得で競合していた。そのため、買い負けないように高値で用地を購入しているケースが多いのではないだろうか。開発業者が用地を高値で購入した結果、分譲コストが引き上げられたのではないかと考える。

また、コロナ禍以降はホテル用地との競合がなくなり、用地取得費は低めに抑えられると思われていたが、実際は住宅需要の高まりによって首都圏の土地は今も全体的に値上がり傾向となっている。

今年9月に国交省が公表した「都道府県地価調査」では、全国全用途平均地価が2年連続の下落となったが、東京圏の地価は住宅地・商業地ともに前年比でプラスに転じている。

出所:国土交通省 令和3年都道府県地価調査の概要 東京圏の以下は前年比プラス

中古マンションの在庫数が増加

新築マンション価格高騰の背景には、住宅ローンの低金利や共働き世帯の増加などが挙げられる。

今後首都圏の新築マンションはどのように推移するのだろうか。中古マンションの動向を確認しながら考察していく。

私は、今後の首都圏新築マンション価格動向を予想する際は、主に中古マンションの在庫数や成約件数、成約単価の動向を参考にしている。開発企業の思惑によって価格が左右されやすい新築マンションに比べ、中古マンションは実際に取引された価格を反映する傾向にあるため、市場価格を把握しやすいからだ。

では、中古マンションの平米単価の推移を確認していく。

全国宅地建物取引業協会連合会のデータによれば、2002年以降の新築マンションと中古マンションの平米単価は、これまでほぼ同じ曲線を描いて推移している。これらのことから、中古マンションの市況動向は、今後の新築マンション価格動向についての指標とすることができる。

出所:全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向データ集 2020年年次レポート」 新築マンション平均平米単価の推移(首都圏)

出所:全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向データ集 2020年年次レポート」 中古マンションの成約件数と成約平米単価の推移(首都圏)

続いて、中古マンションの成約件数を確認する。

東日本不動産流通機構が毎月公表している、首都圏の不動産流通市場動向をみると、2021年11月度の中古マンションの成約数は、今年7月から5カ月連続で前年同月比マイナスとなった。また、在庫件数は前年度比でみると減少傾向ではあるものの、前月比では5カ月連続のプラスとなっている。

短期的な市況だけで不動産価格動向を予想することはできないが、今後も成約数が減り続け、在庫数が増え続けるようなら、中古マンション価格は下落へ転じることもありうる。

出所:東日本不動産流通機構 「月例速報 Market Watch サマリーレポート」2021年11月度 成約数は、5カ月連続で前年度比マイナス。在庫件数は5カ月連続で前月比プラスとなっている

一方で、コロナ禍によって人口が減少に転じていた東京は、コロナ禍の収束とともに「人口流入」が始まる可能性もある。その場合、住宅需要が今後さらに増し、東京のマンション価格はさらに上昇する可能性もある。

今後のマンション価格動向は、今のところ不確実な要素が多い。いずれにせよ新築分譲マンションの短期的な平均価格だけではなく、中古マンションの在庫数・成約数の推移、新型コロナ感染症の収束状況、東京の人口移動状況などを総合的に注視していく必要があるといえるだろう。

                                                 株式会社寧広