投資用ローンに特化、「オリックス銀行」に聞く不動産融資の現在

不動産投資と融資は深い関係にある。金融機関が投資用不動産ローンに対してどのような姿勢なのかは、投資家にとって非常に関心が高いだろう。

本記事では、楽待新聞編集部が金融機関担当者に取材を行い、投資用不動産ローンに関する歴史から、融資姿勢、不動産投資市場に対する見解について、話を聞く。

今回は、「オリックス銀行」。営業第一部長森田宏明さんに話を聞いた。アパートローンに携わること20年、2017年には名古屋営業部の立ち上げも担当している。現在は、アパートローンを取り扱う営業第一部の部長として、アパートローンの営業推進や融資案件の決裁業務を行っている。

スルガショックやコロナ禍で、各金融機関の融資状況が気になる中、オリックス銀行は投資用不動産ローンに対してどのような姿勢なのだろうか。印象の良い投資家の特徴や今後の展望などについて聞いた。

40年のノウハウを蓄積、投資用不動産ローンに特化

-オリックス銀行の成り立ちについて教えてください。

1993年8月に設立された山一信託銀行株式会社が前身です。その後、1998年4月にオリックスグループに入り、「オリックス信託銀行株式会社」へと商号を変更しました。

ATMや店舗網、決済機能などを持たないことを逆手に取り、1999年に電話と郵便を活用して定期預金口座の開設を行う、いわゆる無店舗販売方式による通販型定期預金(ダイレクト預金)の取り扱いを開始しました。また、オリックス株式会社より事業譲渡を受け、同年10月に取り扱いを正式に始めた「投資用不動産ローン」は現在、貸出金残高の86%を占める主要事業に成長しています。

旧本社ビル(東京都中央区日本橋兜町)

-当初(1990年代)と現在を比較して、投資用不動産ローンはどのように変わってきましたか。

当時は、会社経営者など高所得者の方が投資用不動産ローンを利用する大半を占めていました。世間的にも一般の方が投資用物件を購入することは珍しかった時代です。

最近では、サラリーマンの方で不動産投資家を目指される方が非常に増えました。申し込みの約9割はサラリーマンの方です。年金不安などから50代前半の方のお申し込みが増えています。

また、20代後半~30代前半の若年層の方の申し込みも増えている印象です。以前は、「働き始めて間もない若者に高額な融資をしてもいいのか」という議論が社内でもありましたが、現在はそういった方にも融資させていただく機会が増えました。ただしその場合、勤務先の会社の将来性や年齢に伴う年収の増加など、借入される方の成長性を重視します。

他には、夫婦で資産管理会社を設立して、不動産投資を始めるといったケースも増えてきているように感じます。

-投資用不動産ローンを積極的に推し進めてきたのにはどのような背景があるのでしょうか。

他の金融機関との差別化を目的に、投資用不動産ローンに注力してきました。住宅ローンのような実需向けの融資はほとんど取り扱っていません 。一般的な銀行のように、保険などを取り扱うフルラインナップ型ではなく、不動産投資用ローンなど得意分野に特化したニッチな商品を提供しています。

投資用不動産ローン事業の歴史は、親会社であるオリックス株式会社が取り組んでいた期間を合わせると、40年を越えます。同じ業界で約40年もの間、経験やノウハウを積み重ねてきたことが、私たちの財産です。

バブル崩壊やリーマンショックなど、日本経済が大きな打撃を受けた時期も、一貫して「投資用不動産ローン」に注力してきました。その甲斐があり、この業界で一定の地位を築くことができ、現在も積極的に融資をすることができていると考えています。

-40年蓄積した経験やノウハウから得たオリックス銀行の強みはありますか。

世の中の情勢に左右されず、長年一貫したスタンスで融資を出し続けてきている点は強みです。スルガショックやコロナショックのような騒動が起こったとしても、事業縮小や撤退といった選択肢は取りません。長年の経験とノウハウを駆使して、どのように対処してくべきかを慎重に考え、融資を続けます。

審査に対するスピード感にも自信があります。不動産投資において、融資可否は購入に大きな影響を与えます。案件の内容にもよりますが、融資可否に関する回答を速やかにお伝えできるよう、経験豊富な担当も付けています。

-投資用不動産ローンはどのような組織構成で対応しているのでしょうか。

扱う物件によって部署が異なります。アパートなど1棟物件は、アパートローンを中心に取り扱う営業第一部が担当します。ワンルームなどの区分マンションは、マンションローンを取り扱う営業第二部と第三部が担当です。マンションローンのほうが、融資実行高の規模が大きいため、組織人数は多いです。対して、アパートローンは約30名の少数精鋭で運用を行っています。

-アパートローンとマンションローンで、審査上重視する点などは異なりますか。

事務フローや融資審査で重視するポイントが異なります。特に、審査では入居率に伴う返済リスクの見方が大きく変わります。1棟アパートであれば、多少空室があっても全空にならない限り、家賃は一定額入ってきます。一方で区分マンションの場合、空室になれば家賃は入ってきません。空室になった場合、問題なく返済できるかという点が大きく異なる点です。

また、区分マンションと比較して、アパートのほうが融資金額が大きくなるケースが多いため、借入される方の属性やキャッシュフローをより重視しています。物件の個別性も強いので、遵法性なども含め、より入念に確認しています。

印象が良い投資家とは

-融資審査の際に重視しているポイントを教えてください。

融資を行う際は、借入される方と必ず1時間半から2時間程度面談を行います。その面談時、特に「話す内容の辻褄があっているか」を意識的に聞いています。例えば、物件と法人を1対1で対応させて投資規模を急拡大させていく「1法人1物件スキーム」をしていないかなどを確認します。面談時に少しでも違和感があったことについては、踏み込んで聞くようにしています。

また、「不動産投資を行う目的」も必ず聞いています。投資用不動産を購入することに対する意気込みはやはり重要ですね。不動産業者さまに勧められた物件をそのまま購入するのではなく、「なぜこの物件なのか」、「不動産投資をしてどのような目標を達成したいのか」という事業に対する熱い思いを語っていただきたいです。もしかしたら古い感覚なのかもしれないですが、年収などの属性や、物件の良し悪しだけでは判断できない定性的な要素を面談では重点的に見るようにしています。

あとは、経歴書や事業計画書などを事前に作り込んでくる方は印象が良いですね。物件に関する情報をきちんと調査してきているので、私たちが知りたい内容や情報をすでに把握されています。また、「なぜこの物件を購入して不動産投資をしたいのか」という質問に自分なりの考えをもって回答できる方も素晴らしいと思います。

-「このような物件には融資はしない」といった基準はありますか

「絶対に融資しない」という物件は基本的にはありません。物件と借入人の属性を総合的に判断して融資可否を決めています。

個別事例ですと、水災による被害が深刻と予想されるエリアの物件は、融資を避けることがあります。融資を承認する際には、火災保険の補償をつけてもらい、リスク回避をしてもらうよう伝えることもあります。一概に融資を避けるというわけではなく、ハザードマップの確認をしながら物件状況を見て判断します。

また、最近は中古戸建の申し込みもありますが、築年数が古く、さらに金額も小さいため、融資はなかなか難しい状況です。

-融資額の算出はどのようにしていますか。

原則、「収益還元法」を用いて融資額を算出しており、対象の不動産がどの程度稼ぐ力を持っているのかという観点を重視しています。もちろん積算価格による評価も参考にはしますし、物件の立地や入居付けの状況なども勘案したうえで、最終的な評価を行っています。

また、収益性を確認するためにレントロールと賃貸借契約書を提出してもらい、違和感がないか、周辺家賃相場の調査や物件の現地調査をもとに確かめます。現地に足を運ぶことで、街の雰囲気もわかりますよね。私は昔から現地調査に行くのが大好きでした(笑)。

決裁する立場になっても、街の雰囲気が分からないと稟議が通しにくいですよね。部長となった今は、全物件で現地に行くことは難しいですが、基本的には物件を直接見て、入居状況や周辺環境を確認するようにしています。借入される方の立場に立って、1案件ごと丁寧な審査をするよう心がけています。

-昨今、融資を引き締めている金融機関が多いですが、フルローンは出していますか。

物件と借入される方の属性に応じて、フルローンでの融資も行っています。5年ほど前は、フルローンが当たり前に出ていた時期もありましたが、最近の状況は変化しています。フルローンは出ないと理解している方が増えており、自己資金をご用意いただくケースが多いです。

スルガショックにコロナ禍、続く騒動の影響は

-2021年3月期の決算報告書では、アパートローンの実行高が減少しています。コロナショックによる影響が大きかったのでしょうか。

初めての緊急事態宣言が発令された2020年4~6月、世の中は未曾有の事態になったかと思います。当行でも一部業務縮小体制を取りましたし、新規営業が滞ったことなどで、案件のご相談やお申込みが減少しました。その後、お申込件数は回復し、現在に至るまで大きな影響は出ていません。コロナショックにより将来の資産に対して不安を抱いた方が増えたためか、不動産投資に興味を持つ人が以前に比べて増えた印象です。

-コロナ禍の影響で、返済に困窮した投資家はいましたか。

コロナ禍直後は「返済が厳しい」といった相談を受けることもありましたが、数カ月で持ち直した方が大半です。 実際に対応が必要となったケースはほとんどありませんでした。おそらく高額家賃の賃貸物件に住んでいた方の受け皿としてアパートへの転居が増えたことなどで、入居は比較的安定していたのだと思います。

-2018年3月に「スルガショック」がありました。一連の騒動以降、審査体制などを変更しましたか。

特に大きな変更はしていません。以前から借入される方には不動産投資のリスクを十分理解していただいたうえで、不動産業者さまの確認や借入される方の属性に問題がないかを徹底して確認を行い、融資をしてきました。エビデンスの確認なども徹底して行っています。そのため、今回のような問題が起きた際も、大きくスタンスや審査体制を変えることはありませんでした。

-預金通帳などのエビデンスの確認はどのように行っていますか。

エビデンス確認が必要な場合には、原本の確認を必ずしています。最近はオンライン面談が主流なので、画面越しに通帳を目視で確認し、キャプチャで撮影して記録を残すケースもあります。加えて契約の際には、通帳のコピーを提出してもらい、保証書に一筆いただいています。原本でないなど不正が判明した場合は、一括返済も含めて対応を検討します。

-取引を行う不動産業者はどのように判断していますか。

不動産業者さまの選定と定期的なモニタリングを行い、取引について問題ないか判断をしています。まず、取引を開始する際は、ガイドラインとして制定した基準、例えば業歴やコンプライアンス体制、情報管理体制や風評などを調査したうえで、社内の承認を取る必要があります。

また、承認を受けた不動産業者さまは、毎年所定のモニタリングを実施しています。定期的にすべての業者さまを確認することで、不正を未然に防ぐようにしています。

-他に、「スルガショック」以降に起こった変化はありますか。

これまでは、不動産業者さま経由で融資申し込みをする方が多かったです。最近では、WEBから直接融資申し込みをしていただく個人の方が増えてきています。実際に、2018年度(2017年4月~2018年3月)と2021年度(2020年4月~2021年3月)のWEB相談受付累計件数を比較すると、約1.6倍に増加しています。

もちろん、世の中の風潮でデジタル化が進んでいる影響もあると思いますが、安易に不動産業者さまに個人情報を教えたくないという理由から、直接銀行に融資の申し込みをする方が増えているのかもしれないですね。

今後の展望

-現在、会社全体で力を入れている取り組みはありますか。

在宅ワークが普及したことなどを受け、デジタル化を積極的に推進しています。最近では、今年7月より融資契約を電子化しました。申し込みから契約までの取引を直筆サインやはんこを用いないペーパーレス化、またオンラインツールを用いた非対面での面談を実施しています。投資用不動産ローンにおけるデジタル化を推し進める専門のプロジェクトチームを設置し、今後もさらに取引を進めていく予定です。

また、2018年9月にリリースしたキャッシュフローシュミレーターは既に多くの方にご利用いただいております。AIにより賃料相場や空室率などのデータを解析し、想定キャッシュフローを算出します。

-オリックス銀行の今後の展望について、教えてください。

オリックス銀行は長きにわたり、投資用不動産ローンを積極的に行ってきました。年金不安など、全世代が将来的な資産形成に不安を抱え、不動産投資に注目する方が増えてきています。

浮き沈みのある業界ですが、私たちにとってこの分野が主力事業なので、基本的なスタンスは変えずに投資用不動産ローン事業は継続していきます。健全な不動産投資市場を作っていくことを念頭に、これからも投資を考えられる方のサポートを積極的に行っていきます。

-最後に、不動産投資家の方へメッセージをお願いします。

購入を検討している物件は必ず直接見てほしいと思います。よく「物件は朝昼晩見なさい」と言いますが、その通りだと思います。物件の状況を詳細に把握して、周辺の管理会社に聞き込みを行うなど、ご自身が納得した状態で購入いただくのが理想です。不動産を株式などのように「資産」として捉えるのではなく、不動産投資という「事業」を運営する経営者であるという自覚をもって、融資の申し込みをご検討いただきたいです。

                                                 株式会社寧広