意外と身近な土砂災害「レッドゾーン」、危険な土地を避けるには

7月4日に静岡県がドローンで撮影した、土石流の起点となったとされる地点。近くには複数の家屋も見える(画像=静岡県)

静岡県熱海市で7月3日に発生し、甚大な被害をもたらした土石流。多くの家屋を飲み込みながら流れ下る発生当時の衝撃的な映像がSNSなどで拡散したこともあり、土砂災害の恐ろしさをあらためて認識させられた。

今回の被災地のような山あいに限らず、土砂災害が引き起こされる危険は、都市部にも潜んでいる。「想定外」の災害に見舞われて大切な命や財産が奪われる前に、平時は見過ごしている身近な場所の危険性を認識し、備えておきたい。

年間1000件以上の土砂災害が発生

土石流よりも規模の小さい「急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)」や「地すべり」を含めると、毎年1000件を超す土砂災害が全国各地で発生している。

土砂災害発生件数の推移。平成28年以降、毎年1000件を超えている(国土交通省HPより)

これらの場所の多くは、土砂災害が発生する危険性が高い「土砂災害警戒区域」としてあらかじめ指定され、自治体が発行するハザードマップなどで周知されていた。それにもかかわらず、不幸にも家屋や住民が巻き込まれ犠牲となるケースが後を絶たない。今回の被災地も「土砂災害警戒区域」に指定されていた。

「安全な場所と思っていた」「何十年も住んでいて初めての経験」ー。

過去に自然災害に見舞われた多くの被災地と同様、今回も住民からこのような声が聞かれた。

大規模な自然災害は毎年、日本のどこかしらで発生している。しかし、被災した地域にとってみれば、「経験したことがない」ということはよくある。

「同じ地域で同様の自然災害が起きる周期は、数百年に一度。起きていたとしても、曾祖父の代よりも前ということになる。伝承や自分の経験をもとにすると、自分が住む地域における災害の危険性を見誤る。『異常』や『例外』ではなく、いつかは自分の身に起きると考えるのが正しい」

こう警鐘を鳴らすのは、土砂災害に詳しい地質コンサルタントの太田英将氏だ。

土砂災害に詳しい地質コンサルタントの太田英将氏

では、土砂災害がいつ、どこで発生するかを予測することは可能なのだろうか。

今回の熱海では「家屋の揺れ」や「泥水」など住民が“異変”を感じたという証言もある。

「土石流の場合、山鳴りとか、木が裂ける音、石がぶつかる音、変な匂いがするといった現象を伴うが、実際には大雨の中で気付きにくい」と太田氏。土石流は時速20~40キロの速さで進むため、直前で気付いても逃げ切るのが難しい。流れと同じ方向に逃げても飲み込まれてしまうため、流れと直角の方向にある高台に向かって逃げなければならない。

教訓を基に制定された「土砂災害防止法」

発生時期や場所を正確に予測することが困難な土砂災害に対し、どのような備えが可能だろうか。

土砂災害対策に関わる法律の一つに、2001年4月に施行された「土砂災害防止法」がある。この法律が制定されるきっかけとなったのは、1999年6月29日、広島県で集中豪雨による土砂災害が発生し、24人が犠牲になった一件だ。

砂防施設などが未整備の中、土砂災害の恐れがある区域にも新たな宅地開発が進み、危険な区域に住んでいるという認識がないまま被災した人がいたことが問題視された。土砂災害の恐れがある区域を明確にし、周知する重要性が認識されるようになった。

土石流、地すべり、がけ崩れの違いは?

「土砂災害防止法」が対象とする土砂災害には、次の3種類がある。

まず、熱海市で今回発生した「土石流」は、山腹が崩壊して生じた土石や渓流の土石が水と一体となって流れ下る現象で、何トンもあるような巨大な石が混ざって周辺の樹木や家屋をなぎ倒すなど大規模な災害だ。これに似た現象で、土地の一部が地下水などに起因して滑り、それに伴って移動することで起こる「地すべり」。そして、傾斜度が30度以上の急傾斜地が崩壊する現象は「がけ崩れ」とそれぞれ区別されている。

土砂災害には大きく分けて3種類ある(東京都建設局の土砂災害対策事業パンフレット

これらの災害が発生する危険が高い区域は、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」とより危険性が高い「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」に分けられる。

イエローゾーンは、急斜面の崩壊などが発生した場合に、住民らの生命または身体に危害が生ずる恐れがあるエリア。宅地、建物などの取引時の重要事項説明が義務化される。

レッドゾーンは、建築物に損壊が生じ、住民らの生命または身体に著しい危害が生じる恐れがあり、斜面の崩落を防ぐ対策を取らなければ、住宅・宅地分譲、社会福祉施設、学校、医療施設の建築などの開発行為ができない。

 23区にもある「レッドゾーン」と「イエローゾーン」

土砂災害の危険は、山間部に限った話ではない。高層ビルが建ち並ぶ東京都心でさえ、例外ではないのだ。

東京都建設局によると、都内のイエローゾーンとレッドゾーンは計1万5493カ所(2021年5月28日現在)。八王子市(3670カ所)や青梅市(1465カ所)など都西部エリアだけでなく、港区(210カ所)、板橋区(149カ所)、文京区(106カ所)などの23区内にもかなりの数の指定箇所があり、都心といえども危険が潜んでいることがわかる。

赤い部分が「レッドゾーン」、その周辺の黄色い部分が「イエローゾーン」。六本木や赤坂など、都心の一等地にも土砂災害の危険性が高い場所が点在している(東京都土砂災害警戒区域等マップ)

災害種類別の内訳は、がけ崩れが1万3461カ所(約86%)と大半を占めるものの、多摩地域や島しょ部(小笠原諸島、八丈島など)では土石流や地すべりの指定箇所も少なくない。

東京都建設局が公表している土砂災害警戒区域の分布図。右側の23区にも警戒区域が多いことが分かる。

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