年収2000万円超の「新富裕層」が郊外の中古RCを狙うワケ

画像=プラン・ドゥ提供

3年ほど前に世間を騒がせた「かぼちゃの馬車」事件以降、サラリーマン投資家にとっては融資を受けづらい状況が続いている。そうした中にあって、圧倒的優位な立場で融資を受け、不動産投資を行うことができる存在―それが「新富裕層」だ。

新富裕層とは、地主や二代目経営者とは違い、自ら起業して資産を築いたり、外資系企業でキャリアを積んだりした人たちのこと。年収にしておよそ2000万円超、純資産5000万円超を保有する彼らは、銀行から見れば「ぜひ貸したい人」であり、低金利、フル・オーバーローン、そして耐用年数オーバーなど有利な条件で融資を受けることができるという。

では、彼らは具体的にどれほどの条件で融資を受け、どのような物件を購入しているのだろうか。中古マンションの販売、仲介、管理などを通じ、新富裕層に向けて資産形成のサポートを行っている「株式会社プラン・ドゥ」の河合紘幸氏に、新富裕層向け融資の現状を聞いた。

新富裕層の「最新」融資事情

―融資の引き締めが続く中でも、「新富裕層」は有利な条件で融資を引くことができていると聞きます。

河合氏 そうですね。実際に当社で取引のある新富裕層の方も好条件で融資を受けられています。一例として、昨年の7月ごろに千葉県で1億円台後半の1棟RC物件を購入した当社のお客様、A氏のケースをご紹介しましょう。物件は郊外にある築28年の1棟RCですが、A氏は地銀のF銀行から1.15%でオーバーローンを引いています。融資期間は24年です。

A氏(会社役員)の場合
年収:2000万円以上
購入物件:1棟RC(築28年)
物件価格:1億円台後半
融資金額:物件価格の102%
融資期間/金利:24年/1.15%
表面利回り:8.34%
金融機関:地銀F銀行
購入時期:2020年7月
エリア:千葉県市川市

―法定耐用年数をオーバーして融資を受けられていますね

河合氏 この物件で言うと、法定耐用年数よりも5年ほど長い融資期間になっています。F銀行の場合、単純な法定耐用年数ではなく、簡便法による見積耐用年数での融資が可能なケースがあります。具体的には、築年数×20%伸ばせるということです。

もちろん、誰もがこうした条件で融資を受けられるわけではありません。年収で言うと2000万円超、金融資産1億円前後が1つのラインになると思います。こうした新富裕層でない、一般的なサラリーマン投資家さんの場合、現在は不動産向けの新規融資自体が難しいでしょう。

ちなみに金利については、F銀行の場合、新富裕層の方でも1.5%からというケースが多いのですが、A氏の場合は過去に取引があったこともあり、1.15%とより低い金利になっています。さらに当社のお客様の中には、上記のA氏と似た物件で、F銀行から0.85%、耐用年数も約10年伸ばして借りられた方もいらっしゃいます。その方もやはり、こちらのとおり年収2000万円以上の新富裕層です。

B氏(外資系金融会社勤務)の場合
年収:2000万円以上
購入物件:1棟RC(築34年)
物件価格:1億円台後半
融資金額:フルローン
融資期間/金利:21年/0.85%
表面利回り:10.88%
金融機関:地銀F銀行
購入時期:2020年7月
エリア:千葉県松戸市

―その他の実例についても教えてください

河合氏 法定耐用年数の壁をさらに大きく越えた例としては、郊外の築33年1棟RCを、地銀のG銀行から0.8%、30年という好条件で購入した方もいらっしゃいました。こちらのC氏も、年収2000万円以上、金融資産が1億円以上ある新富裕層の方です。

C氏(IT企業の取締役)の場合
年収:2000万円以上
購入物件:1棟RC(築33年)
物件価格:1億円台後半
融資金額:物件価格の90%
融資期間/金利:30年/0.8%
表面利回り:10.25%
金融機関:地銀G
銀行
購入時期:2019年9月
エリア:東京都立川市

G銀行の場合、建物の耐用年数よりも土地の価値を重視する傾向にあります。具体的には、まず土地値に対して35年の融資期間を設定し、固定資産税評価額の割合を見て、土地の評価額割合に応じて融資期間を調整するイメージです。

この物件のように土地の評価額割合が高ければ、残存14年のRC物件でも30年の融資が引けるケースもありますし、こちらのD氏のように、さらに高額な物件での実績もあります。

D氏(上場企業役員)の場合
年収:2000万円以上
購入物件:1棟RC(築31年)
物件価格:3億円台前半
融資金額:フルローン
融資期間/金利:30年/1.0%
表面利回り:7%
金融機関:地銀G銀行
購入時期:2020年7月
エリア:東京都品川区

―こうした銀行で、新富裕層でない一般的なサラリーマン投資家が融資を引く場合の条件はどのようなものでしょうか

河合氏 では、G銀行を例にお話ししましょう。G銀行は以前から不動産融資に積極的なことで知られていました。ただし、一般的なサラリーマン投資家向けの融資は「アパートローン」となり、この場合の金利は最低でも3%~です。

一方、上記のC氏やD氏はアパートローンではなく、プロパーローンで融資を受けています。アパートローンとは違い、パッケージ商品ではなくオーダーメードのローンですから、融資期間も金利も、自己資金の割合も融通が利きます。

このように有利な内容のプロパーローンを利用できるのは、やはり新富裕層のような十分な資産のある方だけになります。このプロパーローンは投資用ではなく、主に相続税対策という建て付けです。つまり、相続税対策としての物件購入が成立する資産、目安として3億円ぐらいの純資産がある方でないと難しいと言えるでしょう。

新富裕層が「中古・郊外・RC」を買うべき理由

―新富裕層は、高い与信力を生かしてどのような物件を買うべきなのでしょうか

河合氏 私たちが主として新富裕層のお客様に提案しているのは、「中古・郊外・RC」の物件です。ここまでに紹介したA氏、B氏、C氏の事例も、まさに「中古・郊外・RC」物件です。

ではなぜ、新富裕層の方に「中古・郊外・RC」を提案しているのか。その理由を一言で言うと「資産性と収益性のバランスが取りやすい」ためなのですが、これについて順を追ってご説明しましょう。

河合紘幸氏(かわい・ひろゆき)  株式会社プラン・ドゥ オーナーコンサルティングチームシニアマネージャー。同社の売買・仲介責任者で、これまでの取引実績は約100億円。資産運用のコンサルティングだけでなく、賃貸募集や管理など豊富な経験がある

まず、収益物件を選ぶ際の基準はさまざまありますが、「資産性」と「収益性」という2軸に分類すると、メリット・デメリットがシンプルに理解できると思います。まず資産性とは、わかりやすく言えば銀行が担保評価の基準とする「積算評価」のこと。そして収益性は、利回りやCFのことです。

ただしこの2つは相反するものですから、どちらも同じくらい高い物件を探すことは困難です。資産性を求めれば収益性が下がり、収益性を求めれば資産性が下がります。したがって、この2つのバランスを見ながら落とし所を見つける必要があるわけです。

「中古・郊外・RC」物件は資産性と収益性のバランスが取りやすい理由を教えてください

河合氏 理由はいくつかあります。まず郊外のRCには、バブル期に供給された品質の高い物件が多いということ。こうした物件は築年数が多少古くても元々のクオリティが高いため、適切にメンテナンスを行えば十分に稼働し続けて収益をあげてくれます。また、現在は当時に比べると建築費が高騰しているので、周辺に競合となる新築RC物件が建つ可能性は低いと考えられます。つまり将来的にも希少性が維持できるのです。

なお、ここで言う「郊外」は、都心への通勤圏のエリアを指しています。具体的には、環状八号線と国道16号に挟まれたドーナツ状のエリア。山手線のターミナル駅にドアツードアで30分~1時間ぐらいの立地です。

こうしたエリアの賃貸需要は底堅く、賃料も非常に安定しています。先述したような品質の高いRCは、このエリアに多く存在しています。

こうした理由から、「中古・郊外・RC」なら毎月のCFをしっかり確保したうえで、長期的な入居も見込めて資産性も確保できる、つまり資産性と収益性のバランスが取れているということが言えます。

―中古物件は融資期間が短くなる傾向にあると思います

河合氏 そこにチャンスがあります。一般の投資家が「中古・郊外・RC」を狙う場合、融資が引けたとしても法定耐用年数の壁に阻まれて融資期間は短くなり、CFが出ず収支が回らなくなるでしょう。

しかし新富裕層は、先ほどの実例で紹介した通り、法定耐用年数の壁を破ることができます。バブル期に建てられた物件でも、20年、30年と長期の融資を引くことができ、十分なCFを生み出すことができます。

新富裕層にとって「中古・郊外・RC」への投資は、不動産投資の醍醐味であるレバレッジを最大限活用しつつ、資産性と収益性のバランスも取れる最適解の投資と言えるのではないでしょうか。

―「中古・郊外・RC」の出口戦略については、どのように考えればよいのでしょうか

河合氏 はじめから「いついつまでに売却する」と戦略を立てるのではなく、売却時期を見極めながら運用していくのがよいと考えています。

先ほどご説明したように、「中古・郊外・RC」は資産性と収益性のバランスが取りやすい物件です。都心や新築物件より利回りが高く保有期間中のキャッシュフローが安定することから、長期保有の優位性が高くなります。完済後も所有し続けるという選択肢も当然ありますし、市況や自身の資産状況などを踏まえ、その時その時で売却を検討してもよいわけです。その間、日々の管理やリフォームを適切に行い、資産価値の維持・バリューアップに努めていれば、おのずと出口戦略の幅も広がるでしょう。

このように売却時期をコントロールできるというのは、「中古・郊外・RC」の強みだと考えています。

                                                株式会社 寧広