好決算でも再編は待ったなし、2022年の地銀はこうなる

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2月14日、上場地銀の2021年4~12月期決算が出そろった。政府によるコロナ対策もあり、融資先企業の倒産に備える費用が減少したことなどから、純利益は前年同期比で34%増となる7585億円と好調だった。

そうした中でも、「地銀にとって厳しい状況は変わらない」と話すのは、金融アナリストの高橋克英氏だ。人口減少という構造的な問題に加え、低金利で利ざやが低下、デジタル化の波によってさらなる淘汰が進もうとしていると高橋氏は言う。地銀は今後、どのような道を辿るのか。高橋氏に解説してもらった。

愛知銀行・中京銀行が経営統合へ

2021年12月10日、ともに愛知県名古屋市に本店を置く「愛知銀行」と「中京銀行」が経営統合を発表した。2022年10月に共同持ち株会社を設立、2024年を目途に合併する予定だ。持ち株会社の本社は愛知銀行本店に置き、社長は愛知銀頭取、副社長に中京銀頭取が就くという。

多くの地方が人口減少や地域経済の停滞に直面する中、愛知県はトヨタ自動車を筆頭に製造業が盛んであり、人口増加も続く恵まれた地域である。そうしたことから、メガバンク、地銀に加え信用金庫などが競合する全国屈指の金融激戦区でもあり、全国平均を大きく下回る金利はしばしば「ナゴヤ金利」などと表現された。

これまで地銀再編とは無縁だった愛知県。こうした事業環境に恵まれた地域でも、地銀の再編が始まった衝撃は大きい。

2022年も地銀再編は続く

愛知・中京の経営統合発表以外にも、昨年は地銀再編のニュースが相次いだ1年だった。

下図が示すように、1月には第四銀行と北越銀行が合併して第四北越銀行(新潟市)が誕生。そして5月には、三重銀行と第三銀行が合併し、三十三銀行(四日市市)が誕生している。その他、筑波銀行(土浦市)がSBIホールディングスと資本業務提携、10月には福井銀行が福邦銀行(ともに福井市)を子会社化などと続いた。

また、5月には、東邦銀行が20年振りに赤字に転落。さらにはきらやか銀行(山形市)の頭取が業績不振で引責辞任、そして6月には中京銀行が希望退職募集を発表している。他にも山口FG(下関市)の会長が臨時取締役会で解任されたり(12月に取締役も辞任)と、業績やガバナンス関連でも大きなニュースが相次いだ。

そして今年2022年も、地銀再編の流れは加速しそうだ。

4月には、青森銀行とみちのく銀行が持ち株会社「プロクレアHD」を設立し、10月には、冒頭の愛知銀行と中京銀行が共同持ち株会社を設立することも発表されている。

「同一県内の再編」が進むワケ

こうしてみると、昨年来、特に、同一県内での地銀再編が多いことに気付く。第四北越銀行、三十三銀行、福井銀行と福邦銀行、青森銀行とみちのく銀行、愛知銀行と中京銀行などだ。

背景には、地銀同士の統合・合併などを独占禁止法の適用除外とする特例法が、2020年11月に施行されたことが挙げられる。

従来は、例えば同一県内同士の銀行が合併すると、県内の預金シェアなどが7~8割となり、独占禁止の観点から統合が難しかった。しかし特例法により、今後10年間にわたる適用除外の期間中には、県内同士の合併なども円滑に認められることになったのだ。

現在、地銀・第二地銀あわせて99行が存在するが、すでに都道府県内に地銀が1行しかないところもある。埼玉県、山梨県、石川県、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県、鳥取県の8府県である。一方で、福岡県は県内に5行、静岡県は4行、岩手県、山形県、福島県、東京都、千葉県、富山県、沖縄県では地銀が3行ある。こうした地域を中心に、引続き再編が進むことになるだろう。

政府・金融当局による強力な後押しも

また、別の支援制度の存在も影響している。日本銀行は2020年11月、「地域金融強化のための特別当座預金制度」を導入すると発表。地銀などが、経営統合や一定規模の経営効率化を進めた場合に、日銀に預けている当座預金に0.1%の金利を上乗せし、事実上の補助金を出すという異例の措置だ。なお、これは2023年3月末までの時限措置である。

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さらに、政府による補助金支給である「資金交付制度」もある。これは、地銀などが合併に踏み切った場合、国がシステム統合などの費用を最大30億円程度負担するというもの。先述の特例法とあわせ、これら3つの施策の意味するところは、「この先10年間は、政府・金融当局としても地銀に対してさまざまな支援をするので、どうぞ合併を推し進めてください」ということであろう。

公的資金の強制転換が迫る地銀

上述した、「特例法」「日銀の支援制度」「政府からの補助金支給」に加え、「公的資金制度の存在」も忘れてはならない。コロナ禍における企業支援や金融システム維持の観点から施行された「改正金融機能強化法」だ。

そもそも金融機能強化法は、資本が十分でない金融機関に対し、政府が公的資金を投入する手続きを定めたもの。金融機関の経営が悪化し、融資が滞れば地域経済にも悪影響が及ぶ。こうした状況に対応するために2004年に制定された。その後2020年8月に、コロナ禍の広がりを受けて同法は改正、公的資金枠が12兆円から15兆円に増加となり、申請期限も2022年3月末から2026年3月末までに延期されている。

公的資金の存在は、SBIホールディングスによる新生銀行へのTOBでも注目された。現在、地銀では12行に公的資金が注入されており、金融機能強化法による公的資金残高は合計4725億円(2021年10月末)に達している。

こうした公的資金注入行は、概して自己資本比率が低いものの、できるだけ早く公的資金を返済し、国の管理下から離れたいと考えている。このため、例えば、みちのく銀行と青森銀行の動きにみられるように、「起死回生策」として、自己資本に余裕のある同一県内の上位行などと合併を目指す、といった動きを選択する要因になるとみられる。

特に、高知銀行、三十三銀行、東和銀行、きらやか銀行(一部)の4行では、再来年の2024年中に公的資金で注入された優先株が普通株への一斉転換日を迎えることになる。国の関与を避けるためにも、それまでに収益を上げて剰余金などで返済資金を用意するか、合併などで規模の拡大を図ったうえで返済する、など対応することになろう。

上位行同士の再編で「メガ地銀」の誕生も

残念ながら2022年も人口減少、低金利、デジタル化の3つの要素により、地方銀行の3大ビジネスである貸出、手数料、有価証券運用の見通しは決して明るくない。

特に、規模の経済が働かない、資産規模1兆円以下の銀行、コア業務純益が10億円未満の銀行がこの先も生き残れる可能性は低くなってきている。

先述した政府・金融当局による「3つの地銀包囲網」が構築されたことで、地銀の選択肢は狭まっている。2022年も、合併がメインシナリオだ。最終的に多くの地銀が規模の経済を享受するこの選択を選ぶことになる。

さらに今後は、前述したような公的資金返済を見越した弱者の救済合併・弱者連合ではなく、トップ地銀同士のいわゆる「メガ再編」も想定される。こうした動きは我が国でも都市銀行からメガバンク誕生の過程でみられたものだ。

地銀によるネット銀行設立やDX企業傘下入りも

もっとも地銀にとって、合併だけでは長期的かつ根本的な解決策にはならないだろう。地銀は、付焼き刃の策ではなく、1)店舗をゼロにしてネット銀行に転換する、2)DX企業などの傘下に入り、銀行免許を生かしグループの銀行部門として生き残るといった大胆な経営判断を下さない限り、明るい展望は見えてこないのかもしれない。

そして、既にその動きは出てきている。1に関しては、地銀最大手のふくおかFGが、スマホ銀行「みんなの銀行」を立ち上げている。また、東京きらぼしFGも、スマホ銀行「UI銀行」を開業した。2に関しては、「第4のメガバンク」構想を打ち出し、新生銀行も傘下に収めたSBIホールディングスによる島根銀行や福島銀行などとの資本業務提携が挙げられよう。

人口減少と低金利環境、デジタル化による3重苦に加え、政府・金融当局による3つの地銀包囲網が形成されたことで、地銀の再編は期限が定められ、不可避なものとなった。

地銀再編後も貸出が地銀ビジネスの中心であることは変わらない。大多数の地銀にとって、個人向けのアパートローンや不動産投資ローンは、中小企業向けローン以上に、厚い利ざやを享受できることもあり、積極的に伸ばしたい分野である。

再編により資産規模が拡大し、自己資本が分厚くなることで、公的資金返済が実現できたり、経営そのものが安定すれば、その分、積極的にリスクを取って貸出を行うこともできるようになる。スルガ銀行の不祥事以降、一部の個人投資家は、審査の厳格化などにより融資対象外とされていた。しかし2022年は地銀再編が進むことで、ローン対象者が広がる可能性がでてきてもおかしくはない。

                                                 株式会社寧広