大阪・ミナミ3地域の路線価を異例の減額!インバウンド激減で店が撤退、賃料収益悪化で地価が下落New

ドラッグストアも退去、飲食店ため息
道頓堀の商店街は閑散、午後8時以降も客引き出没

国税庁が1月26日、大阪の繁華街・ミナミ(大阪市)の3地域の路線価を減額すると発表した。この地域は全国で唯一、新型コロナウイルスの影響を受けて20%を超える大幅な地価の下落があったからだ。2011年の東日本大震災など大規模な災害以外で路線価を引き下げるのは初めて。コロナ禍の異常さが浮き彫りになった。

1月27日夜8時過ぎの道頓堀。人通りはまばら
1月27日夜8時過ぎの道頓堀。人通りはまばら

「お客さんがほとんどいなくなりました。(かつては)店の前をたくさん行き来していた外国人客がいなくなったことが痛い。休業中の店もあるが、この近くでもたくさんのお店が閉めはりました。大手のドラッグストアも出ていきましたし・・。3月には回復するのではと思っているけど、2月は厳しいでしょうね」

路線価が減額された大阪・道頓堀の商店街にある飲食店の関係者はこうため息をついた。

本来なら仕事帰りの日本人や外国人客でごったがえす平日午後8時過ぎ。政府の緊急事態宣言を受けた大阪府からの営業時間の短縮要請で商店街の多くの飲食店はシャッターを下ろし、人通りはまばらになっていた。

道頓堀界隈の商店街も店が閉まり、人通りが少ない
道頓堀界隈の商店街も店が閉まり、人通りが少ない

そんな中でも密かに深夜まで営業している店の客引きが少なからず通りに現れ、2人連れ以上の通行人に声をかけている姿が目立った。褒められた行為ではないが、午後8時以降の営業をやめれば「死活問題」になる店側の必死さも伝わってきた。

「心斎橋筋2」「宗右衛門町」「道頓堀1」は地価23%下落
民間の分析では心斎橋の貸店舗空室率が9.0%へ悪化

今回、路線価が減額されたのは、大阪市中央区の「心斎橋筋2丁目」「宗右衛門町」「道頓堀1丁目」の3カ所だ。補正の減額率は3カ所とも4%。いずれも地価が23%下がったからだ。

地価下落率

路線価は相続税や贈与税の算定に使われる土地の評価額。全国の主要な道路に面した1平方メートルあたりの評価額をさす。毎年1月1日時点で評価し、7月に公表される。今年はコロナ禍を受け9月末時点の地価を再調査したところ、上記の3カ所で地価が23%落ちていた。

路線価は地価の80%をめどに算出する。このため、地価が20%を超えて下落すると、路線価のほうが地価より高くなり、その分、税金も高くなる。納税者に不公平が生じるため、国税庁は路線価を減額補正することにした。2020年7~9月に土地を相続や贈与で取得した人は、補正した後の路線価を使って財産を計算することが可能だ。

路線価が減額された3カ所は、いずれもインバウンド(訪日外国人客)の激増で潤った地域だ。

路線価の減額まではいかなかったが、3カ所に近い「千日前1、2丁目」「道頓堀2丁目」「難波1、3丁目」は19%、「難波千日前」「日本橋1、2丁目」「南船場3丁目」は17%の地価下落となっている。

これらの地域では、新型コロナでインバウンドが「蒸発」し、彼らを相手に利益を上げていた飲食店やドラッグストアなどの撤退が相次いだ。この結果、空室率が高まってテナントからの賃料が入らなくなったり賃料を下げざるをえなくなったりし、ビルの収益力が低下。不動産の取引額の低下、ひいては地価の下落につながったとみられる。

ドラッグストアが撤退した道頓堀の空き店舗(画像の一部を加工)
ドラッグストアが撤退した道頓堀の空き店舗(画像の一部を加工)

ちなみに観光庁の調査によると、大阪府の外国人宿泊客の延べ人数は、昨年8月が1万7640人で前年同月比99%減、9月が1万6540人で同99%減、10月が2万6090人で98%減だった。

一方、不動産サービス「CBRE」の分析によると、心斎橋の20年7~9月期の貸店舗の空室率は9.0%。4~6月期の1.3%や、19年10~12月期の0.9%から大きく悪化した。

CBREは次のように分析する。

「心斎橋筋商店街では、閉店や退去を決めた店舗が複数みられている。その多くはインバウンド需要の取り込みを想定して、比較的高額な賃料で出店していたテナント、かつ小規模の店舗だ。コロナ禍で売り上げが減少したため家賃の高さが大きな負担となっていた」

近辺で営業する不動産業者も次のように語る。

「実店舗での商売をやめて物件を退去し、オンラインだけでの商売に切り替えた店もある。コロナが長引き、テナントは苦しい。ただ、われわれが管理する物件では、家賃の引き下げには応じていない」

また、昨年秋の時点で大阪市中央区は感染者が多く、11月27日、ほかの大阪市内の地域に先んじて北区とともに、大阪府から営業時間の短縮要請を受けたことも、飲食店などには打撃となった。

コロナ禍が長引けば同じ事態は全国に
ワクチン、治療薬の普及や東京五輪の成功カギ

コロナ禍が長引けば、同じ傾向は大阪以外の全国にも広がる可能性がある。

このような異常な状況が改善するには何が必要なのか。

大阪に関していえばインバウンドの回復だ。大阪はじめ関西は観光資源にめぐまれているので、インバウンドの大きな受け皿になる。

そしてインバウンドを回復させるには、ワクチンや治療薬によってコロナを抑え込むことが重要だ。加えて、ある市場関係者は「今年夏の東京五輪の成功がカギを握る」とする。対策を徹底して感染者を出さず、東京五輪を成功させられれば、全世界に「日本は安全」とアピールできるからだ。

もっとも東京五輪も「開催はやめるべきだ」という声が強くなっている。先行きはなかなか見通せないといえそうだ。

                      株式会社 寧広