大手行が住宅ローン金利引き上げ、不動産投資への影響は?

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大手銀行3行が住宅ローン金利を引き上げる動きが出ています。要因となったのは「長期金利の上昇」です。

本来、金利上昇は不動産に影響を及ぼす原因の1つですが、現在の日本は異常なまでの低金利に慣れてしまっており、金利が上がる可能性についてあまり考えたことがないという人もいるかもしれません。しかし、未来永劫、低金利が続くかは分かりません。

今回は、なぜ住宅ローン金利が上昇したのか、そしてアパートローン金利への影響などについて確認していきたいと思います。

金利上昇はなぜ起きた?

1月31日、日本の10年物国債利回りが一時0.185%まで上昇しました。ピンとこないという方もいらっしゃるかもしれませんが、金融業界では結構なニュースとなりました。この水準まで金利が上昇したのは約6年ぶりのことです。6年前といえば、日銀がマイナス金利政策導入を決めた時期です。つまり、マイナス金利政策導入後としては初めての高水準ということになります。

住宅ローン金利の話の前に、まずはその要因となった長期金利の上昇について考えてみます。

国債の利回り、つまり長期金利が上昇するということは、国債の価格が下落していることを意味します。言い換えれば、日本国債がマーケットで売られているということです。

米国では、インフレ率が急上昇しており、インフレを抑制するために金融緩和の縮小が行われる見込みです。インフレを抑制するためには、中央銀行が金融引き締めを行うのが王道です。インフレとは、誤解を恐れずに言えば「みんなが欲しい量よりも商品の方が少ない結果、価格が上がること」です。需要が供給よりも多いのです。

このような物価上昇や景気が過熱している局面では、金利を引き上げたり、中央銀行が国債などを売却して通貨供給量を減らしたりします。こうすることで、投資・消費などの経済活動を抑えてインフレを抑制するのです。現在、このインフレ抑制策を米国が行うだろうということが予測されています。そして、マーケットがそれを見越しているので、長期金利が上昇しているということです。

住宅ローンが上昇した理由

では、長期金利の上昇がなぜ、住宅ローン金利の上昇につながったのでしょうか。

一般的に、銀行は住宅ローン金利を決める参考指標として長期金利(長期国債の金利)を用いています。そのため、前述の通り長期金利が上昇していく中では、住宅ローン金利も上昇していくということになります。

長期金利の上昇を受け、大手銀行は、2022年2月から適用される10年固定の住宅ローン金利(店頭金利)を以下のように発表しました。

・三菱UFJ銀行=3.39%→3.49%
・三井住友銀行=3.4%→3.5%
・みずほ銀行=2.75%→2.8%

これは店頭金利、つまり希望小売価格のような位置付けのものです。実際にはこれがそのまま適用されるというより、各銀行が設定する優遇金利の適用となることが多いでしょう。0.1%の引上げ幅というのは決して大きいとは言えませんが、昨年9月ごろから住宅ローン金利は徐々に上昇してきており、傾向として住宅ローン金利が上昇しているということは言えます。

ちなみに、住宅ローン金利が0.1%上昇すると、借入人の返済額にどの程度の影響が出てくるのでしょうか。三井住友銀行における、3.4%から3.5%への住宅ローン店頭金利上昇を例に取ってみると以下の通りとなります。

【前提:借入金額3000万円、10年間で元利均等返済】
<3.4%の場合>
毎月返済額29万5254円
総返済額3543万480円

<3.5%の場合>
每月返済額29万6657円
総返済額3559万8840円
(計算は三井住友銀行Webサイト/新規借り入れシミュレーションを利用)

上記の通り毎月の返済額は1403円、総返済額は16万8360円の増加となります。これはあくまで10年の借入の場合ですので、長期借入になればなるほど、0.1%の重みは大きくなります。

金融緩和は続くのに、ローン金利が上がるのはなぜ?

ここで疑問が出てくるかもしれません。日銀は先の金融政策決定会合で、金融緩和を続けると表明しています。それなのになぜ、長期金利は足元で上昇しているのでしょうか。

日銀は、過去にマイナス金利政策を導入し、長期金利を一気に引き下げました。そのような「力」があるのであれば、金融緩和を続けると表明している以上、長期金利は上昇しないはずではないでしょうか。

もちろん、日銀の持つ「力」はかなりのものです。長期金利をマイナスに抑え込むことにも成功してきました。ただし、日銀の力も万能ではありません。マーケットが米国の利上げを織り込む中で、「日銀もいずれは金融緩和の修正を迫られる可能性がある」とマーケットは徐々に意識し始めているのではないでしょうか。

金融マーケットは思惑で動きます。日銀の黒田総裁は、早期の政策修正を否定していますが、要するにマーケットは日銀とは異なる見方を織り込み始めており、それが金利の上昇につながった、ということなのでしょう。

アパートローン金利に影響はあるのか

では、アパートローン金利への影響はあるのでしょうか。変動金利と固定金利の場合で考えてみます。

まず、変動金利はどのように決まるのでしょうか。一般的には「短期プライムレート」に連動する長期貸出金利をベースにしている銀行が多いと思います。

短期プライムレートとは、銀行が優良企業に1年未満の短期で行う融資の優遇金利です。市中金利に連動して総合的な調達コストをベースに決定されています。ただし、短期プライムレートは2009年1月より変わっておらず、長期金利との連動性は乏しいのが実情です。したがって、今回の長期金利の上昇による影響を大きく受ける可能性は高くないと筆者は考えています。

固定金利はどうでしょうか。固定金利は、主に「円金利スワップレート」というものに連動します。銀行は固定金利でアパートローンを融資する際、「金利スワップ」という手法で金利上昇リスクをカバーしているからです。専門的な話はここでは省きますが、円金利スワップレートは長期金利と似たような動きをします。10年国債の利回りなどがアパートローンの固定金利の指標として使われていると考えておけば良いでしょう。

したがって、今回のように長期金利が上昇している中では、アパートローン金利も変動金利については変動が想定しにくいものの、固定金利については上昇していくことになります。

今後の長期金利の見通し

金利や為替については、筆者は予想してもあまり当たったことがないので、一般論として付言します。

まずは米国の今後についてです。FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は、今年3月に利上げに踏み切る方針を示したものの、米連邦公開市場委員会(FOMC)は今後の金融引き締めの道筋を具体的に示していません。そのため米国市場では、しばらくは金融引き締めへの警戒が続く見込みとなっています。金融政策の影響を受けやすい短中期の米国債利回りは、これを受けて上昇基調になると想定されています。

一方、長期の米国債利回りについてはどうでしょうか。短中期の米国債に比べて上昇幅は足元で限定的となっています。これは本来、長期金利が織り込むはずの将来的なインフレリスクが、利上げの前倒しによって低下すると考えられているためです。

一方、日本では、日銀は長期国債の利回りの変動幅をゼロ±0.25%程度としています。この政策は、金利を低位に抑えながら、ある程度の金利変動を許容することで、国債マーケットの流動性を守る(金利=価格が変動しないと誰もマーケットでモノを買わない)ためのものです。

ゼロ±0.25%を超えて金利が上昇することを許容すると、日銀は金利を低位に抑えるつもりがない、もしくは金利を抑える力がないとマーケットから受け取られかねません。日銀はさすがにそのような事象を許さないでしょう。こうした状況の中、足元の長期国債の利回りはこの上限に接近しつつあることから、日銀を警戒して上昇余地は限定されると想定されています。

米国の足元のインフレ率の高さは非常に気になるところですし、日本の物価も今後どのようになっていくのか不透明ではあります。ただし、日本の場合は特に財政面を考えると、長期金利上昇の余地はそれほど高くはないと筆者は考えています。

そのため、住宅ローン、アパートローン金利は、ある程度の上昇とはなるでしょうが、大幅に上昇していくことは考えにくいというのが筆者の予想です。

                                                  株式会社寧広