変形地に建つ一棟RCマンションを一級建築士が徹底解説

建物のプロに実際に物件を見てもらい、物件でチェックすべき点を解説する連載企画。投資家が最低限知っておきたい建物に関する知識をわかりやすくお伝えする。

物件を見学していただくのは、一級建築士の資格を持ち、「NPO法人建築Gメンの会」の理事長を務める大川照夫さん。

※クリックで拡大できます

今回は、千葉県内にある1988年築のRC造の3階建てマンションを見学してもらった。三角形の間取りが特徴的なこちらの物件。1Rが8室ある単身者向けの物件だが、バス・トイレ別で独立洗面台が設置されている。

築古のRCマンションを購入する前に必ず確認しておく箇所はどこだろうか。また、RC造の物件を管理するために重要なことは何だろうか。

三角形の土地に建つ建物

まず、建物の「平面図」から確認していく。以下の図面からもわかる通り、今回の物件は三角形の敷地に建っている。

こうした敷地では、鋭角になる部分は使いづらい。この物件では、居室部分がなるべく四角くなるように、三角形の鋭角な部分には階段やバルコニーを配置している。居室部分は、風呂やトイレ、洗面台などの水回りを居室内の1カ所に上手くまとめて、使いやすくしている。三角形の土地を上手く活用して建てられていることがわかる。

2階の平面図。階段やバルコニーを隅に配置して、居室がなるべく四角くなるように工夫している

一般的なRC造の建物は「ラーメン構造」もしくは「壁式構造」のいずれかに分類される。今回の物件は「壁式構造」で建てられていた。

ラーメン構造は、柱と梁で構成されるため室内に柱が出っ張っている。壁式構造は、壁のみで構成されるため、室内がスッキリしている

ラーメン構造は、柱や梁で構造体を作り、そこに壁や床をはっていく構造。高層の建物も建てることができる。構造に影響しない壁であれば、基本的に取り壊すことができるので、間取りが変更しやすいという特徴がある。ただ、室内には柱が出っ張ってしまうため、部屋に圧迫感があり狭く感じるというデメリットもある。

一方、壁式構造は柱や梁の代わりに、「壁」という面で建物を支える構造。それぞれの壁が建物を支える重要な壁となっていて、簡単に壁を取り壊せないため、間取りの変更がしづらいといった特徴がある。一方、部屋には柱などの出っ張りがないため、スッキリとした空間にしやすい。5階以下の中・低層階の建物に用いられることが多い。

外壁にある「伸縮目地」の役割

外壁の一部には、タイルが貼られていた。

外壁の1階部分に貼られたタイル

大川さんは、「タイルの接着が悪いと剥落して事故が起きる可能性もあるので、定期的な点検を受けることが重要」と話す。

また、外壁には特徴的な溝が彫られていた。

物件の外壁にあった伸縮目地

この溝は「伸縮目地」と言い、コンクリートが温度変化で膨張や伸縮する際に生じる亀裂を最小限にとどめるために設ける、弾力性のある目地のこと。伸縮目地が設けられていないと、躯体そのものが温度変化や地震によって伸縮や変形した際に、外壁に不規則なひび割れが生じる。

排水管に使用されている「耐火二層管」って?

共用部のパイプスペースの中を見ると、排水管と給水管、そして電気ケーブルが確認できた。

共用部のパイプスペース。手前にある銀色のパイプが給水管で奥に見えるグレーのパイプが排水管

排水管は「耐火二層管」というもので、一般的な塩ビパイプの外側に耐火材が被覆してある。塩ビパイプは燃えやすいため、こうして被覆する必要があるのだ。

塩ビパイプを被覆する材料としては、現在ではモルタルなどが用いられているが、「今回の物件が建てられた30年前だと、アスベストが含有されていたかもしれない」と大川さんは言う。アスベストは、人が吸い込むとじん肺、肺がんを発症する危険性のあるものだ。アスベストが含まれているかどうかについてもチェックしておかなければならない。

屋上防水を補修するタイミングは?

物件の屋上には「塗膜防水」が施されていた。塗膜防水とは、液状の防水材料を何重にも塗り重ねて防水膜を作る工法のこと。密着性が高く、ひどく劣化する前であれば、塗り直して修繕することが可能だ。

屋上に施された塗膜防水

また、屋上には突起物が確認できた。

脱気装置。塗膜防水とその下のコンクリートの間に発生した水蒸気を排気する

これは「脱気装置」というもので、塗膜防水を施す前に敷き詰めたコンクリートと塗膜防水の間に水が溜まり、太陽光で熱せられて水蒸気となった際の水分を外へ逃がすための装置だ。

溜まった水蒸気を外へ逃がさないと、防水層が膨らみ下地との密着が不良になったり、シワが発生したりする。

塗膜防水の一部には、膨らんで割れている箇所が数カ所確認できた。

塗膜防水の一部が膨らみ、亀裂が入っていた

大川さんによると、「こうした膨らみは割れやすく、傷みやすいので傷み切る前に、膨らみを切開してから塗膜防水を塗りなおす必要がある」という。こうした膨らみが、すぐに雨漏りの原因にはならないというが、早めに修繕をしておきたいところだ。

変形地に建つマンションの室内

○室内

室内で大川さんが確認したのは、キッチン下の排水管だ。今回の物件では、蛇腹管ではなく排水管が直に排水溝とつながっていた。

左が今回の物件の排水管。排水管を使用して直接つながっている。右が蛇腹管を使用した排水管

蛇腹管の場合、排水溝との間に隙間が空くため、「臭気キャップ」などと呼ばれるもので隙間を塞いでおかなければ臭気や湿気が上がってくる。排水管を直に排水溝とつなげると、こうした問題が発生しない。

大川さんは「本来、排水管と排水溝はこのように直接つないでおくのが一番良い」と話す。

○天井裏

浴室の天井点検口から天井裏を確認する。

2階の天井裏。手前に見える銀色の管は排管のダクト

今回見学したのは2階の部屋だったため、天井裏には3階の床が確認できた。3階の床のコンクリートにひび割れなどは見られなかった。

物件をひと通り見学した大川さんは「傷みにくく、手入れのしやすい構造だ」と言う。

しかし、外壁の一部には細かいクラックがあり、屋上では塗膜防水が劣化して膨れている箇所がいくつか確認できた。どちらもすぐに雨漏りなどの問題につながることはないが、早めに対処して大きなトラブルに発展しないようにしておきたい。

物件を購入する際には、上記のような傷んだ箇所がどの程度あり、修繕にはいくらくらいかかりそうかということをしっかりチェックしてから購入を検討する必要がありそうだ。

※本物件情報は一部編集しています。
※物件所有者に許可を得て撮影しています。

                                                株式会社寧広