地主の婿養子大家が2021年に買った物件、出口戦略は「土地の切り売り」【前編】

昨今の価格高騰で思うように物件が購入できず、規模拡大のペースが落ちているという投資家は多いのではないだろうか。

そんな中、物件を購入し続ける投資家もいる。楽待新聞の実践大家コラムニスト「地主の婿養子大家」さんもその1人だ。

一棟マンションや一棟アパート、戸建、区分店舗、一棟ビルを所有し、総投資額は30億円。年間家賃収入は2億5000万円、税引き後キャッシュフローは1億円に上る。コラムニストとしては、これまで700本以上を執筆、2021年に最も多くの「いいね」を獲得している。

そんな地主の婿養子大家さんだが、2021年は自身の条件に見合った物件を見つけるのに苦労していた。苦労の末、昨年末に物件の売買契約が叶ったそうだが、いったいどんな物件なのだろうか。

また、地主の婿養子大家さんは今後賃貸経営を行っていくうえで「出口戦略が重要だ」と述べる。では、出口戦略はどのように考えれば良いのか、解説してもらった。

2021年に取り組んだ「買換え特例」

―昨年は物件の「買換え」に注力していたのですね

13年間保有した不動産を2019年に売却し、昨年は新たな物件を購入するために活動していました。「事業用資産の買換えの特例」という制度を活用するためです。10年以上保有した事業用の不動産を売却し、一定期間内に新たな不動産を購入した場合、譲渡所得税の8割を繰り延べることができるという制度です。

例えば、売却益が3000万円だった場合、20%課税されるので600万円ですよね。この制度を利用できれば、600万円のうち80%、480万円を繰り延べすることができます。この特例を繰り返すことによって、節税対策につながるわけです。すでに不動産投資を行っている人であれば、これほど税金を圧縮できる制度の重要性を理解していただけるはず…。

―この制度を活用できれば、手元の現金が多く残りますね

この制度を利用できるのは売却後1年間ですが、コロナの影響もあったため10カ月期間猶予してもらいました。2019年の2月に物件を売却していたので、2021年中に何としてでも購入契約をしたいと思っていました。しかし、なかなか条件に見合った物件を見つけられませんでしたね。

ここ数年、物件価格は上昇傾向にありました。それでも、2020年くらいまでは指値をすれば、なんとか希望通りの価格で購入できる価格帯で販売されていたと思います。

しかし、昨年はそういう余地すらもないぐらい参入者が増えていて、需要が多いことから高い値段で売られていました。

私の場合、購入エリアを神奈川県の一部に絞っていますが、利回り換算すると2%くらい下がっているように思います。以前コラムにも書きましたが、利回りが1%くらい低くても、購入後にバリューアップさせるなどして家賃を引き上げ、利回りを高めることはできます。しかし、利回りが2%低いものを購入するのは高値掴みになってしまうと思っています。

また私が狙う物件は、買取再販業者とバッティングするケースがかなり増えているように思います。

彼らはエンドユーザーよりも現金を多く持っている傾向にあり、素早く購入することができます。それを理由に、エンドユーザーよりも安い価格で価格交渉をするというのが彼らの常とう手段だと思いますが、今はエンドユーザーに近いような金額で買っています。

―なぜ、買取再販業者はエンドユーザーに近い価格で購入するのでしょうか

その価格で購入したとしても、その後さらに高い価格で買ってくれる投資家がいると見込んでいるからでしょう。不動産投資家の皆さんは、買取再販業者と売却のタイミングが異なるので、買取再販業者と同じ値段で購入しないように気を付けるべきだと思っています。

不動産会社は1年程度の短期間で相場をとらえていますから、今のままの相場で上がり続ければ十分に儲かります。

一方、不動産投資家の多くは、数年間持ち続けることを前提としています。保有期間が長くなる分、市場が暴落するタイミングとぶつかる可能性は、短期間で売却する不動産会社よりも高くなります。基本は相場を上がるものとして見てはいけなくて、同じか下がるものとして見ていないといけないのかなと思います。

―上昇し続ける相場で物件を購入するのは難しいのですね

でも、昨年末に購入契約ができたんです。

楽待の提案サービスで送られてきた物件で、横浜市にある築20年くらいの重量鉄骨の一棟マンションです。2億円台半ばで利回りは7%くらいです。

物件は、比較的資産性の高いエリアに立地していて、利回りはものすごく低いわけではなかったので、ひとまず問合せました。

その後不動産会社から販売資料をもらって情報を調べると、その建物のすぐ隣に同じデザインの建物がありました。土地を広く取得できた方が、出口戦略の選択肢が広がりますから、バルクで売ってくれないかと相談したところ、了承してもらいました。

また、その物件は駐車場がものすごく広かったんです。なので駐車場を切り売りして、売却するのもアリだと思いました。

出口戦略は「切り売り」

―「切り売り」とはどういう意味でしょうか?

土地を分筆して売却するということです。

この物件のレントロールを見たところ、賃料帯は8万円前後でした。築年数が徐々に経過すれば、家賃はここから下がっていくのが一般的だと思います。

きちんとしたデータがあるわけではないのですが、私の投資対象エリアでは、ある一定の家賃帯を下回ると車の所有率が急に低くなるという傾向があるんです。

今回の物件の駐車場は、まだ利用している世帯もあるのですぐに分筆して売る、ということはできません。でも、将来的に家賃が下がれば、車を必要としない世帯が出てくる。そうすれば駐車場の必要性がなくなるので、分筆して宅地として売る、という選択肢が生まれるというわけです。

―駐車場を切り売りするという出口戦略もあるのですね

私は不動産会社で働いていた経験もあったので、土地としてどれくらいの価値があるのかを見る力が備わっていたんだと思います。

駐車場の切り売りについてもう少しお話しすると、この駐車場は公道に面していません。そのため、再建築の要件を満たしていないので、分筆したとしても宅地として売却することができません。

この場合、宅地1と2は公道に面していないため、建物を建築することができない

そこで、駐車場部分を分筆して売却する場合、「位置指定道路が入るか」という点が非常に重要になりました。位置指定道路は、簡単に言うと建築が可能になる私道のことです。

行き止まりになっている道路を、新築住宅が取り囲んでいる「コ」の字型の場所を見たことがあると思いますが、その道路の多くが位置指定道路です。

位置指定道路を通すことで宅地1と2は建築が可能になる

位置指定道路を建築したい土地まで通すことができれば、再建築の要件を満たすことができます。知り合いの不動産会社さんに調査してもらい、位置指定道路が入ることがわかったので、購入を決断しました。

購入時点での利回りは7%程度で、周辺相場と比較すると少し低い利回りです。しかし、切り売りした利益も含めると10%くらいまで高められると思い、購入を判断しました。

―土地を見定めることは不動産投資家にとって重要でしょうか

利回りやキャッシュフローは建物の評価を見るうえで判断しやすいですが、土地を見る力が身につくと、より多くの情報で賃貸経営を判断することができます。

例えば、土地面積が300坪ある物件が2つ販売されていたとします。1つは、容積率いっぱいに建物が建っていて、利回り10%。もう1つは利回りは7%だけど、土地に対して建物が10分の1程度しか使われていないものです。この場合、利回りだけで見れば前者を選択しますよね。

しかし、土地を切り売りしたり建物を建築したりするなど、土地の活用方法を把握していれば、後者の物件の方が、利益が出ると判断できるわけです。

土地を見定めることができれば、利回りは6~7%程度で低いけど、売却すればとんでもない利益が取れる物件を見つけることもできます。

物件探しのコツは「裾野を広げる」

―この物件は楽待の提案サービスで購入したのですね

楽待の提案サービスは、欲しい物件条件を入力すると、不動産会社から物件情報を紹介してもらえるというものです。私は4年くらい利用しており、今回初めて購入に至りました。これまでもらった提案数は約200件です。そのうち問合せをしたのが約30件。実際に内見とか現地確認をした物件は約10件です。提案数が200件で1件購入ですので、成約確率は0.5%ですね。

―提案サービスでは、どのような物件情報が欲しいかという「ニーズ」を登録して利用します。地主の婿養子大家さんはどのようなニーズを設定していますか?

私は一棟マンション、一棟アパート、戸建賃貸、区分店舗を登録しています。エリアの条件はすべて同じですが、物件種別ごとに金額の幅と築年数、駅徒歩、利回りを設定しています。

提案サービスのニーズ登録画面の例。物件種別や所在地、物件価格などを登録しておくことで、不動産会社から物件情報が届くようになる

また、提案が送られてきたことに気が付いたらすぐに回答するように心がけています。「問合せ」か「お断り」の回答は必ず返しています。未回答のままでいると次の物件を紹介してもらえなくなりますから。私が不動産会社に勤めていた時は、嫌なお客さんには物件を紹介したくないと思っていました。そうならないための最低限の行動をするように気を付けています。

―問合せる場合は、どんな内容を不動産会社に送っていますか?

自分の条件とある程度合致した物件が届いた場合は、周辺環境や物件情報を確認してから問合せています。問合せの際は謄本、販売資料、レントロールなど、持っている資料をまとめて送ってもらうように依頼しています。不動産会社と何度もメールでやり取りするのは、お互いの時間がもったいないですからね。

特に、資料は謄本をよく見ています。謄本は、土地や建物の広さなどの情報を把握するだけでなく、売主やその前の売主がどんな人か、現在の売主はどれくらい借り入れているのかなどを把握することができるからです。どれくらい指値ができるのかを把握するためにものすごく大切にしています。

―送られてくる物件はどうですか?

提案サービスを使う不動産会社さんは、おそらく未公開情報として物件の鮮度を売りに、提案をしていると思います。しかし、私はやっぱり一般の投資家さんよりは情報網が広いので、すでに知っている物件は結構ありますね。そういうのは断ってしまいます。また、対象エリアから離れている場合もすぐに断っています。

ただ、自分の条件と多少異なっていたとしても、問合せることもあります。

これまで、物件を紹介してもらった当初は自分の購入条件とは異なるものの、購入することにした物件はいくつもあります。「駅徒歩〇分以上」「築年数が〇年以上」などといった細かい判断軸を設定しないことも大切なんだと思います。

そのため、ある程度自分の購入条件を設定してはいますが、その先入観だけで他の情報を切り捨てることをしないように気を付けています。私は良い物件情報を逃さないためにも、できる限り裾野を広げておきたいと思っています。実際に裾野を広げたことで購入できましたから。

                                                株式会社寧広