国の借金、いくらになっても大丈夫? 「MMT=現代貨幣理論」注目も、急インフレで投資家はケガの恐れNew

バイデン米政権がMMTの考え方をどの程度反映するのか注目される
バイデン米政権がMMTの考え方をどの程度反映するのか注目される

一方、日本は「MMTの実験場」とも呼ばれている。安倍晋三・前政権下で始まった「異次元の金融緩和」と国債の巨額発行で財政赤字が拡大しながらも、金利は低く抑えられ、市場に混乱は起きていないからだ。

2020年度末での国と地方を合わせた長期債務残高は1182兆円で、対国内総生産(GDP)比207%と、先進国で最悪の水準。一方で、長期金利は0.1%程度という歴史的な低水準に張り付いている。

インフレも起きていない。国債をいくら発行して財政支出を増やし、財政赤字を膨らませても市場が混乱しない「証拠」ともいえるのだ。あとは日本政府のもくろみ通り、景気が力強く回復していけるかが注目される。

もっとも、日本政府はMMTに否定的で、「実験場」との見方を否定している。国会議員の中には、MMTを採用するよう政府に求める声もある。

急激なインフレは止められない懸念
不動産投資は資産価値の目減りや融資金利の上昇も

しかし、MMTに懸念はないのだろうか。

一番の懸念は、MMTが急激なインフレを引き起こさないかだ。政府がどんどんお金を調達して景気対策につぎこんだり、お金を作って借金を返したりすることで、市場に出回るお金が増え、急激なインフレになる恐れがある。

MMT論者はこのインフレを「抑える」とするのだが、抑えるためには、消費税を増税したりして買い物の意欲を冷やしたり、支出そのものを減らしたり、金利を上げて銀行から借金する動きをスローダウンさせたりといった対策が必要だ。

しかし、消費税増税をめぐる騒ぎでもわかるように、日本の場合、増税には反発が強い。さまざまな社会サービスへの支出が減ることにも反発があり、選挙に負けるのが怖い与党は、思い切った支出削減に踏み切れないだろう。

不動産の資産価値はインフレ下で目減りする恐れもある
不動産の資産価値はインフレ下で目減りする恐れもある

また、不動産の場合、価格や家賃の水準が、物価全般の急激な上昇に追い付かない可能性がある。たとえば、日用品の価格全体が1.5倍になっても、流動性の低い不動産の価格が突然1.5倍になる可能性は低く、その分、持っている資産の価値が目減りすることになる。家賃も、物価上昇のペースにあわせていきなり1.5倍へ上げるのは困難だろう。

また、インフレと景気の過熱を抑えるため日本銀行が金融政策の引き締めに走れば、金利が上昇し、不動産投資のために組んだローンの返済計画が狂いかねない。

たとえば、5000万円のローンを35年間、金利2へ3%上がったとすると返済額は月24万556円へと、約7万5000円も増える。

このほか、1980年代から90年代にかけてのように、余ったお金が流れ込んで土地の価格が急騰するバブルが生まれる可能性も否定できない。これはこれで、政府は過去の教訓からバブル退治にすぐ乗り出すだろうし、土地価格の乱高下があれば、痛手をこうむる投資家がたくさん出てくるはずだ。

懸念される副作用を考えれば、MMTは「極論」といえる。

だが、コロナによる経済の打撃が長引けば、想定外にどんな経済理論が支持され主流となるかわからない。不動産投資家としても、今後のMMTをめぐる動向に注目したい。