全国から問い合わせ殺到 事故物件買取センターの勢い止まらず。関西から東京に出店New

事故物件と聞くと関わりたくないと思う人が大半だろう。だが、そんな物件ばかりを買い取り、残置物を処理、改装して市場に出している会社がある。株式会社あきんどが手掛ける事故物件買取センターである。

5年前にスタート、ここ1年で急成長

同社は大阪府守口市に本社を置く不動産買取再販を行う株式会社なにわ工務店の関係会社で、事故物件を専門に扱う別会社を始めたのは約5年前のこと。

「なにわ工務店経営者の家族への、知人からの相談がきっかけでした。親が自宅で亡くなり、その家を処分したいと考えているが引き受けてくれる不動産会社がなくて困っているとのこと。

それまでの買取物件の中にもそうした物件はあったのでしょうが、相談を受けて改めてそうした問題で困っている人がいること、さらにこれからも増えるだろうことに気づいたのです。

それで株式会社あきんどを立ち上げ、事故物件を専門に扱うことになりました。2021年7月で立ち上げからちょうど5年になります」と広報担当の清田浩泰氏。

最初は地元である京阪エリアを中心にチラシを撒く程度で、問い合わせも周辺からだけ。月に数件くらいだったというが、1年ほど前にホームページをリニューアルしたことで徐々に問い合わせが増加。エリアを全国に広げたことで月に100件を超える個人や業者からの問い合わせが届くようになったという。

最近では同様のサイトが出てきてはいるが、顔が見えない、誰がやっているか分からないサイトもあり、そうしたサイトに比べるととてもリアル
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そのうちから買い取れるものがあれば月に15~20軒は買い取っているという。

この間で少しずつ競合と思われる会社も出てくるようにもなったが、全国に無料で査定に行って積み上げてきた実績は強く、今現在では日本で一番事故物件を扱っているのではないかと清田氏。

生死に関わることから建物、地域に瑕疵のある物件も

事故の内容としては孤独死、自殺、殺人や心中などのように人の生き死にに関わるもののほか、火事にあった、傾きがある、再建築不可、シロアリ問題がある、長屋・連棟、狭小地、借地などといった建物、土地に瑕疵や売りにくい条件がある、近隣とトラブル、もめごとがある、クレーマーがいる、ごみ屋敷になっているなど人の問題まで幅広い。

多くの人は最初、地元の不動産会社に相談するものの、そこで敬遠されてこの会社に、ということも少なくない。

事故物件という言葉だけで特殊なイメージを持ち、扱いたくない、扱いづらいと思ったり、残置物や清掃などの手間をかけたくない、そうしたノウハウがないなどが敬遠される理由だろう。地元だけに風評被害を懸念するということもあろう。

だが、同社の場合には残置物の処理から始まる改装、地元の不動産会社に依頼しての売却活動に至る一連の作業は事故物件以外でも同じ。つまり、ノウハウがあるのである。

査定に独自のノウハウ、売れなくても仕方ないという覚悟

さらに近畿圏から始まり、東海、九州などへ広がって全国で査定経験を積み重ねてきたこともノウハウとしては大きい。

「事故の影響性は物件、地域、居住者などによって違います。駅前の利便性優先のマンションならそれほどの瑕疵と思われないものが、新築の住宅での事故だと大きなダメージになりますし、高齢のご夫婦が住んでいたなら気にならないところが、若い夫婦で事故があったとなると売りにくい。

またその街の人口構成、購買層がいるかどうか、過去の成約事例に加えて人の流れや地域柄などを考えます。もちろん、必ず現地は見ます。従来の査定よりも検討することが多いですね」と営業担当の鎌田美智生氏。

相場はあってないようなもの。一般的な相場に比べれば安いのは確かだが、場所により、需要と供給によって異なるという。それは同社の急いで売ろうとしていないという同社の姿勢とも重なる。

「不動産には賞味期限がなく、適切に手を入れておけば腐りません。私たちの改装では床から壁、ユニットバスその他の水回りまで徹底的にリフォームするので事柄は残るとしても面影はなくなります。

そして、安ければ問い合わせはきます。とはいえ、反響が多くすぐに決まる物件もあれば、1年以上動かない物件も。必ず、すぐ売れるというわけではありません」。

物件としては父が亡くなるなどして相続した物件の売却依頼が多く、全体の半分くらいを占める。

その家で生まれ育った人もいるにはいるが、自分が使う家ではないという意識があるようで、感傷的になるよりは早く処分したいという気持ちが強い場合が多いそうだ。ちなみに人が亡くなった家のうちの7~8割は相続で取得したものだという。

プライバシーには細心の注意

事故物件の場合、特に注意すべきはプライバシーの問題と鎌田氏。

「当社に買取依頼を寄せてくる方々はネガティブな事情に直面された方が多いので、誰にも知られることなく、売却を済ませたいという要望をお持ちです。

今の時代、プライバシー保護は当たり前に言われていますが、事故物件を扱う場合にはそれ以上に最大級の配慮が必要だと感じています」。

その点から考えると事故物件で地元に事情を知られたくないと考えた場合、実は地元の不動産会社以外に依頼するほうが情報の流出を抑えられるという考え方もあり得るのではなかろうか。

ごみ屋敷居住者は複数のトラブルを抱えている

数は多くはないが、事故、事件があった物件の相談もある。本人以外にも士業を経由しての相談もある。近隣トラブル、近所のクレーマー、ごみ屋敷が理由の物件もあり、実に幅広い相談が持ちかけられると鎌田氏。

「ごみ屋敷の所有者の多くは債務を抱えています。問題をひとつ抱えているひとは、聞いてみると他の問題も抱えているものです。

そこで今のままで買い取りではなく、経済状況によっては自己破産を勧めることなどもあり、最良の解決が提案できるようにいつもなにかしらの勉強をしている感じです」。

こうした相談に応じ、全国に無料で査定に行き、すぐ売れるわけでもない、融資のつかない物件を現金で買い取れるのはなにわ工務店本体の資力があるから。あらかじめ、買い先を見つけてから購入という会社はあるが、出口を考えずに買えるのはそのためだ。

それでも買わない物件の条件とは?

他社が買わない物件を積極的に買っているとはいえ、買わない物件もある。それが過去に地域での売買履歴がなく、賃貸ニーズもなく、修復が困難なほど老朽化した物件で、仮に解体しても利益が全く見込めないものだ。

「流通性がなくても家がしっかりしていれば賃貸用に買う人がいるでしょうし、買取金額が安ければ残置物があって、建物が多少傷んでいても賃貸ニーズがあれば買うこともあり得ます。どれかひとつの条件をクリアしていれば考えますが、3つの条件が重なっている物件はダメ。買いません」。

この3条件が重なる物件は投資すべき物件ではなく、再度流通させるのは難しいというわけだ。

現状では同社物件を知る手立てはないが……

さて、様々な地域でワケありとはいえ、相場より安い物件が供給されているのであれば買いたいと考える人も多いはず。だが、現状では同社が手がけた物件を探すのは難しい。

「買うまでは他社には見せず、購入後もしばらくはどうリフォームするかを考えて寝かせていたりします。その後、リフォームしたら販売は地元の不動産会社に任せており、自社でレインズに載せることはあるにしても売るところにはあまり関与しません。

弊社が事故物件を扱っていることを知ったいろいろな地域の方から買いたい、賃貸に使えるような物件はないかなどお問い合わせは受けますが、将来的にホームページに載せることはあるかもしれませんが、現状では地元の会社さんにお任せしています」。

物件はきれいに改装され、地元の不動産会社が販売を担当。もちろん、過去の事情はきちんと説明した上で売られているが、そこでは同社の存在は見えなくなっているのである。

東京に支店、その次は九州、愛知にも

ただ、今後の展開次第ではもしかしたらという期待もある。なにしろ、同社の事業は現在急成長を見せている。手始めに首都圏に拠点を持つそうで、すでに御徒町にオフィスを手配済み。知事免許を大臣免許に書き換え、7月下旬からは本格的に業務を開始。同時に首都圏で流すTVCMも作成中。

さらに今年、来年くらいには福岡、愛知への出店を考えているとも。5年前にこれからニーズがあると読んだ通りの展開になっているのだ。

ちなみに関西から始めたビジネスながら現在の取り扱いでは東京23区を除く首都圏の千葉県、埼玉県、神奈川県を含めた関東エリアが多く、ついで福岡をトップに熊本、佐賀など九州エリアなどとなっているとか。

「これまで本当に大阪から無料で査定に来てくれるんですか?あとで多額を請求されたりしませんか?と不安がられていましたが、今後はそれが無くなります(笑)」。事故物件がきちんと流通するようになる日も近い。

                                                 株式会社寧広