借入金利を下げるには?金融機関の儲けのカラクリ

長期金利の指標である新発10年もの国債の金利が上昇しており、長期固定金利の借入については、金利の上昇リスクが高まっている。

10年物国債金利推移 出典:Trading View HP https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-JP10Y/
10年物国債金利推移
出典:Trading View HP
https://jp.tradingview.com/symbols/TVC-JP10Y/

ところで、皆さんはこう思ったことはないだろうか。
銀行に預金を預けると、0.001の利息が取られる。銀行はもうけすぎなのではないかと。

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金融機関の収益管理の基礎

その疑問を解明するために、金融機関はどのように収益を管理しているのかを見ていこう。

例えば町の魚屋が商品である魚を魚市場で仕入れてくるように、金融機関も商品となるお金を金融市場(※)から仕入れている。

魚市場と金融市場の違いは、魚市場の場合は、魚の売り手(漁師など)と魚の買い手(魚屋など)の役割がはっきりしているのに比べ、金融市場の場合は、金融機関はその時々で保有する資金の状況により、資金が余っていればお金の売り手になる一方で、資金が足りない場合にはお金の買い手になるなど、役割が決まっていないという特徴がある。

(※)金融市場は細かくいうと短期金融市場(コール市場、手形市場、現先市場、CD市場など)や長期金融市場など様々な種類があるが、ここでは簡略化して、金融市場という言い方で統一する。

金融機関がお金を売り買いする時の取引値が、LIBOR(2021年12月末で一部を除き廃止)やTIBORなどと言われているレートである。

LIBORはLondon Inter Bank Offered Rate、TIBORはTokyo Inter Bank Offered Rateの略であり、それぞれロンドン金融市場、東京金融市場での主要金融機関の取引値(お金の売り手の提示レート)の平均が採用されていることになっている。

金融機関で収益計算を行う際、この取引値が仕入れ値となり、収益計算が行われる。

つまり仕入れ値よりも上乗せしたレートが金融機関のもうけの源泉となる。

例えば6か月物TIBORが0.13だった場合は、1.93=1.8%が金融機関の儲けの源泉となるのだ。

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しかし、仕入れ値からの上乗せ分が全て金融機関のもうけとなる訳ではない。
「お金を貸す」ことは「お金が返ってこない」というリスクを伴う行為であり、一定の確率でこのリスクが顕在化するからだ。

金融機関はこのお金が返ってこないリスクにかかるコストを仕入れ値に上乗せすることで損失を回避する仕組みを構築している。

このコストは云わば保険料のようなもので、例えば、A社と同じような信用力のある会社が100社ある場合に、その100社のうち、1年間で倒産する会社が1社あるという経験則(統計値など)があるとすると、1年間の保険料は、1 ÷ 100 = 0.01となり、1%と計算される。

そのように考えると、A社に対しては、仕入れ値のレート+保険料(1%)で計算したレート以上で貸出を行わないと金融機関としては赤字となるリスクを抱えることになる。

先の例で言うと、1.8%であった儲けの源泉から1%を保険料に割り当てるため、儲けの源泉は0.8%まで減少することとなる。

一般的には、この仕入れ値のレートをファンディングコストと言い、保険料を信用リスクプレミアムなどという。

これに加えて、金融機関は貸出をする際に事務処理を行い、かつ貸出実行後も貸出管理をする必要があるが、これらの事務費も考慮に入れなければならない。

つまり、金融機関が採算を取るための金利は、【ファンディングコスト】+【信用リスクプレミアム】+【事務費等諸経費】であると整理できる。

仮に金融機関が1億円の貸出を行う際の事務手続きや貸出管理事務を行うために、営業担当者、審査担当者、事務担当者の人件費やシステム費等の諸費用が50万円(0.5%)必要であれば、先の例の儲けの源泉であった0.8%は0.8% ? 0.5% = 0.3%まで減少することとなる。

借入金利を下げるには?

それでは、借入金利を下げるにはどうしたら良いのか。
金融機関の借入金利は、【ファンディングコスト】+【信用リスクプレミアム】+【事務費等諸経費】の採算レートに金融機関のもうけとなる【利ざや】を追加し、決定される。

先の例だと最後まで残った儲けの源泉である0.3%が利ざやとなる。

借入金利を下げる手段を考えるために、それぞれ【ファンディングコスト】、【信用リスクプレミアム】、【事務費等諸経費】、【利ざや】を別々に見ていこう。

【ファンディングコスト】:信用力の高い金融機関の方が、信用力の低い金融機関よりも低利での資金調達が容易となりファンディングコストは低くなるが、その金融機関が破綻危機にあるなどの特殊事情が無い限り、その差は軽微であることからあまり気にする必要はないだろう。

【信用リスクプレミアム】:信用リスクは、倒産確率により決定される。このため、自身の財務諸表を強化することで信用リスクプレミアムを低下させることができる。具体的には、借入金を減らし自己資本比率を高める、収益性を高める、など様々な手段がある。

【事務費等諸経費】:自身の会社の信用力が高いほど、金融機関は管理コストを軽減できるため、事務費等諸経費部分を安く見てもらえる可能性が高まる。よって、信用力を高め信用リスクプレミアムの低減させれば自動的に事務費等諸経費も低減されると言えよう。

【利ざや】:ここは非常に人間らしい要素が絡まりあう場合が多い。金融機関の担当者から見て、この会社に資金を出したいと思ってもらえれば多少利ざやが薄くても貸出を実行するインセンティブにつながるだろう。

そのため、利ざやを薄くするための手段としては、金融機関との関係を出来るだけ良好に保つことが有効である。

金利内訳表 ( )内の数字は例示のため使用したものを記載
金利内訳表
( )内の数字は例示のため使用したものを記載

以上より、自己資本を充実させ、収益力を高めたりすることで、自社の信用力を盤石とすることに加え、金融機関との良好なリレーションを構築することで、より低い金利での借入が可能となるであろう。

                                                 株式会社寧広