中国投資家の「換金売り」が日本の不動産市場で起こる?

一葉落ちて天下の秋を迎えつつある昨今、中国の恒大集団のデフォルトが世相を賑わしています。

これについて、ある人は「 リーマンショックの引き金になる 」と警戒し、別のある人は「 一企業の問題。大した事はないだろう 」という見方をしています。総じて金融や不動産業界では楽観的な声がかなり優勢なように感じています。

私の見方は悲観的で、「 恒大集団の問題はリーマンショックの再来にはならないが、日本の土地バブル崩壊の再来になる 」と考えています。

中国のバブルが少しずつ崩壊を開始していた件については、2020年1月のコラムの通りです。また、今秋のリスク資産価格調整に関しては、本年8月3日掲載のコラムで予測した通りになりつつあると感じています。

ではなぜ、恒大集団の危機が中国の土地バブル崩壊という現象における氷山の一角かと言うと、中国のビジネスモデルが、高層ビルやマンション、インフラなど建築をドンドン進める事で好景気を保つという仕組みになっているからです。

元々世界は2000年を迎える辺りに米国の元財務長官ローレンス・サマーズが言う「 成長の限界 」を迎えていたのです。先進国では住宅もインフラも一通り整備され、欲しいモノがあまりない「 需要の減退 」というフェーズに入りつつありました。

金属や石油等資源価格はこの世相を織り込み、1999年~2001年頃には「 資源暗黒時代 」とも言われる低迷期に陥りました。この時代から資源を仕込み、自国の経済発展を進めてきたのが中国です。

中国では猛烈な建築需要に連動して、資源価格も上昇しました。つまり、中国は2019年までの世界的な好景気の重要なドライバーになってきました。しかし、当然ながら永遠にこれを続ける事は出来ません。

すでに中国での鬼城( ゴーストタウン )の数は相当なものですし、無用なインフラの数もまた、建設中を含め膨大な量に上ります。人口数が天井を打ち減少に転じつつある中国は、これから成長のドライバーなしで不動産価格下落による不良債権処理に追われる事になるのでしょう。

■ 今後の中国では各銀行の不良債権問題が台頭か?

「 共産国だから不良債権処理は問題ないし、紙幣増刷もできる。処理は簡単だ 」「 中国は国が全て指図出来るから、良い解決法が見つかり市場も安堵する事になるだろう 」と言う人がいますが、そんなに単純ではないと思います。

魔法のように、「 債務を除去して不要建物を爆破すれば万事解決 」とは行かないのが歴史の教訓です。

振り返れば土地バブル期の日本も「 官民一体の日本株式会社 」という方程式があり、護送船団方式や官僚の統制でうまく行っているという神話もありましたが、住専や拓銀の破綻など、不良債権処理には時間が相当かかりました。

中国も今後、日本のように苦しむ時間帯がやってくる気配が濃厚です。この場合、日本と同様に中国の各銀行の不良債権問題が出てくる事になりそうです。

最近、仮想通貨保有を禁じる通達を中国政府が出したそうですが、これも資金流出を抑える方策の一端なのでしょう。

加えて資源価格から見ると、経済のファンダメンタルズの悪化が鮮明です。例えば鉄鋼石価格は今年の最高値、1tあたり225ドルから急落し、半値近い125ドル近辺まで直近で下落しています。

本年8月末のウォールストリートジャーナルには、「 全くの不意打ち。今後、様々な資源の需要減退も有り得るのだろう 」という関係者のコメントが掲載されています。

何れにせよ、資源価格から見るに実体経済が傷んでいる事は明瞭ですし、その中で不動産一本足打法を主軸として拡張してきた中国の苦難は相当なものになると思われます。

■ 中国投資家の「 換金売り 」が日本の不動産市場で起こる?

私が昨年から、「 余程の金融資産を持っている人は別として、基本的には借入してまで不動産投資をドンドン進めるタイミングではない 」と書いてきた理由の主因はここにあります。

中国が苦難な時代を迎えつつあるのに、隣国の日本が無傷というわけにはいかないでしょうし、中国人投資家の換金売りという現象も出てくる可能性もあり得ると考えています。

日本でもバブル期には財閥等の企業はもちろん、「 投げる不動産屋 」とか「 歌う借金王 」という人たちが海外不動産投資を進めました。しかし、バブル崩壊後にはその大半が、投資した海外不動産の売却を余儀なくされています。

今後、日本の不動産市場においても様々な影響が顕在化してくる可能性があります。私が2019年末までに保有不動産を半減させた理由はこのあたりにあります。

東京だけでなく、中国のバブルが世界の不動産バブルをも牽引してきたわけで、これはカナダや豪州、ニュージーランドや欧州の不動産価格や今までの買い手を見れば一目瞭然の話です。

「 パリやニューヨーク、ロンドンに比べれば東京は安い 」というロジックは日本の土地バブル期における「 銀座が坪単価12,000万円で西新宿も坪6,000万円だから、比較すると千葉の商業地が坪1,000万円の値段なら割安 」と言っているようなもので、正確性に欠けるように感じます。

中国のバブル崩壊が今後も少しずつ進む中で、「 換金売り 」が増えていけば、価格の変動も大きなものになりえると私は思います。

何れにせよ、今後は評価価格の下落や賃貸需要の低下等、私の賃貸業にも様々な苦難がやってくるのでしょう。私が2019年末までに物件を売り、ある程度身軽になったのは、ずっと保有しておきたい不動産をどんな時代が訪れても持ち堪える体力の涵養、という側面もありました。

日本の戦後直後も、食べる為に保有不動産を売りに出す例が後を絶たず、大阪駅前や御堂筋でも驚くほど安く不動産を買えたと、チキンラーメン開発者の安藤百福翁が回顧しています。

そこまで極端な話はまずないのでしょうが、今後、賃貸需要が落ち込もうが評価額が下落しようが、自分の保有している不動産をしっかりと保有出来るような体制作りが大切であると感じています。

■ 株式には買い頃が到来か?

不動産に比較すると株式は割安なものが散見されますし、価格次第ですが買い頃が到来しつつあるのではないでしょうか。株式の調整も当然ありますが、評価されずに割安な株式の場合指数とは逆行して高くなる事もままあるからです。

私の株式ポートフォリオについてですが、マイナス要因は株式指数ショートポジションです。もう少し下落が速く始まると思いポジションを取りましたが、現在はマイナスです。

プラス要因は割安な銘柄です。伊勢化学やK&Оエナジー、フクビ化学等、無借金経営ながら高配当で割安な株式は堅調です。これらは私の買値ですと年利3%前後の配当があります。年利5%程度の不動産を保有するなら、このような銘柄が良いと思い保有しています。

だからと言って皆様に上記銘柄をお勧めしているわけではありません。不動産も株式も同じですが、どんなに良いモノでも割高に購入した場合、それは「 良い資産 」とは言えません。いくら渋谷の一等地でも、年利3%での購入はお勧めできないのと同様です。( 除く超富裕層 )

不動産も株式も余裕資金で割安に買えるならばあまり失敗はないでしょうから、ともかくは「 購入単価が一番大切 」と言えるのでしょう。

中国がソフトランディングしていくようであれば望ましい事なのですが、短期的にはともかく中期的には難しいのだろうと考えています。例え苦難な時代を迎えることになっても、しっかりと堅実に進められるよう、今後も頑張っていくつもりです。