中国不動産バブル崩壊から見る「日本デベロッパーの財務状況と崩壊可能性」N

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中国不動産会社のデフォルトが相次いでいる。毎日のように報道される中国恒大集団のデフォルト懸念と「中国不動産バブル崩壊」のニュース。

現在デフォルトしている中国不動産会社は、花様年控股集団や中国地産集団。また新力控股(シニック・ホールディングス)も約280億円のドル建て社債についてデフォルトが発生し連鎖的な状況が続く。

恒大を始めとして中国不動産会社の株価及び社債価格は暴落。恒大の社債価格は20%~30%程度まで落ち込み、実質的にデフォルトするものとして市場は捉えている。

ここでは、中国当局が定めた「3条紅線」と呼ばれるレッドラインと、日本不動産会社の財務状況とバブル崩壊の可能性について確認したい。

中国恒大の負債規模は
トヨタの1年間の営業収益をふっとばす

恒大の2021年6月末のBSを簡素化したものが以下だ。恒大の2021年6月末の総資産は2兆3,776億元(約40.4兆円)、総負債は1兆9,655億元(約33.4兆円)にも上る。

トヨタ自動車の2021年3月期(通期)の営業収益が27兆2,145億円なので、トヨタが1年間に稼いだ営業収益よりも大きな額の負債を抱えている。

恒大集団の2021年6月末の貸借対照表イメージ
恒大集団の2021年6月末の貸借対照表イメージ

これにヒットしたら借り換えが厳しくなる
中国不動産会社を苦しめる「レッドライン」とは

そもそも問題の発端は昨年8月、中国政府は、不動産デベロッパーの財務の健全性を改善すべく、3つの財務指標を導入、3つの「紅線(レッドライン)」と呼ばれる指標を満たせない企業に対する貸付過熱を沈静化させる動きに出したことから始まる。

特に不動産開発に対しては、一定基準である「3条紅線(3つのレッドライン)」を満たさない企業の資金調達を禁じるとなったのだ。

なお、「3条紅線」(レッドライン)とは以下である。

①総資産負債比率が70%を上回らないこと
②自己資本負債比率が100%を上回らないこと
③現金に対する短期負債の比率が100%を上回らないこと

恒大の場合は、2020年12月末時点で「3条紅線」(ストレステスト)のすべてに抵触し、新たな資金調達ができなくなったのだ。

恒大集団に関して3つのレッドラインを一つづつ検証すると

①総資産負債比率が70%を上回らないこと

総資産負債比率=総負債÷総資産=19,665 ÷ 23,776 × 100 = 83%

②自己資本負債比率が100%を上回らないこと

自己資本負債比率=総負債÷自己資本(純資産)
=19,665 ÷ 4,110 × 100 = 557%

③現金に対する短期負債の比率が100%を上回らないこと

現金に対する短期負債の比率=現金・現金同等物÷短期負債=868÷15,728×100=1,813%

すべてにおいて満たしていないどころか、②と③については健康診断でいえばE判定であろう。

ちなみに中国の多くのデベロッパーが3つすべてを満たすことができていないのが現状で、40超の企業は少なくとも1つの紅線を越えている。

日本のデベロッパーの多くも
レッドラインにヒットしている

日本のデベロッパーの健全性をみていきたい。大手6社の直近の財務状況はこちらだ。

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色がついているところで中国で定めたレッドライン項目と比較することができる。

①の総資産負債比率は平均して71%

②自己資本負債比率は平均で256%

③現金に対する短期負債の割合は平均で377%

②と③については全会社がヒットしていることがわかる。

三井不動産、三菱地所、野村不動産を除いて、①も含めて3項目全てアウトだ。

日本の不動産会社の財務状況は
危機的といえるのか

気になるのは、中国同様に日本の不動産会社もデフォルト懸念が生じ得るのかということだ。

レッドライン指標が適正かという点と不動産を売却しやすい環境の2から考えていきたい。

まずレッドライン設定はデベロッパーにとっては守ることが厳しいと言える。基本的にデベは土地を仕入れて、不動産を建設して、販売したり、保有した上で収益を上げていくのが商売。開発する過程での土地の購入のみならず、開発資金、またビルや商業施設を売却せずに企業として持ち続ければバランスシートにおける負債は膨れ上がりやすい。

デベロッパーとしての本業で「自己資本負債比率が100%を上回る」とアウトと言われると苦しいものがあるといえる。

不動産売却ができれば問題はない

日本の不動産会社が開発した不動産を売却しにくい環境下であれば日本不動産会社の健全性には疑義が生じてくる。

しかし、日本にはREIT(リート)市場(REIT:大型の商業施設やビル、ホテルなどを証券化して小口で投資家に販売する投資信託)が整備されている。

大手のデベロッパーは間接的にREITを運営しているため、そのREITへの売却をするのは比較的スムーズ。また開発にあたってはREITやファンドに売却することを目的として開発している物件もあるため、開発時から出口戦略が決まっていることもある。

住宅に関しては、現状日本の新築・中古住宅の市場は需要が旺盛で価格の上昇局面を維持しており在庫が残る懸念は少ない。また、中国と異なり個人が不動産(住宅)を購入する際の規制も特にないため環境が異なるため安心できる。

一方で中国ではREIT市場が今年からスタートしたばかりで日本の30分の1の規模。さらにはオフィスや住宅のREITはないため売却先に困っているのが現状だ。さらに、個人の不動産購入に関しても購入できる人の審査やローン規制を設けるといった規制を設けたため住宅販売環境も良くない。

このように中国不動産バブル崩壊への道筋は中国当局の規制強化により出口を失っている特有の事由であり、日本不動産会社が同様の状況に陥る可能性は極めて低いと考えられる。しかし間接的、心理的に市場に波及する要因はあるため注視は必要だ。

                                                 株式会社寧広