中国の投資マネーが「日本の不動産」に流れる日

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2022年、中国にとっては困難が予想される船出となった─。

中国の経済成長率が鈍化していることを取り上げた前回の記事(1月25日)では、最後をこのように締めくくった。そして現在、中国経済を覆う影は日に日に濃くなっている。

要因は大きく2つある。

1つ目は、ロシアによるウクライナ侵攻だ。ロシアがウクライナ全土の攻略を目指す全面的軍事行動に出たこと、さらにはロシアが苦戦し、開戦から1カ月あまりが過ぎた今も終わりが見えないという事態は、中国共産党にとっても想定外だっただろう。

外交においてロシアとの関係を重視してきた中国は、今回のウクライナ侵攻後もロシア寄りの姿勢を崩さなかった。そうした中、西側諸国によるロシアへの圧力は日に日に強まり、こうしたロシア寄りの姿勢が批判され、中国の多国間外交にとってマイナスとなっている。中国国内からも懸念の声が上がっているが、中国共産党は未だ従来の方針に固執しているのが現状だ。

2つ目は、国内の新型コロナの新規感染者の急増だ。中国政府は、感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ対策」を取ってきた。2020年4月以降は一定の成果を挙げていたものの、今年3月以降に感染者が急増、4月5日、1日あたりの新規感染者数が初めて2万人を超えた。一部都市では事実上のロックダウンが行われ、経済への影響が懸念されている。

複雑な問題を抱える中国の経済は、今後どのような道を辿るのか。「不動産市場」にも注目しつつ考えていきたい。

破綻したゼロコロナ政策

中国では3月初頭から新型コロナの感染者が急増している。特に広東省深セン市、吉林省長春市、上海市などの地域では事実上のロックダウンを実施するなど、2020年春以来最悪の事態となった。

世界最初のコロナ流行地となった中国だが、感染者が見つかった場合には大規模なPCR検査を実施し、すべての感染者を見つけ出す「ゼロコロナ政策」が奏功し、2020年4月以後は大規模な流行を食い止めてきた。しかし、感染力の高いオミクロン株は従来の対策では抑え込むことができず、感染拡大を許した。

加えて中国では、高齢者のワクチン接種が遅れているとされる。ワクチン接種には重症化を防ぐ効果も期待されるが、その助けがもっとも必要な高齢者の接種率が低い点は防疫対策の弱点となる。経済への打撃を考えれば、そうなると一定の感染を許容するウィズコロナ対策への転換も検討すべきだが、高齢者に多くの死者が出る恐れがある。

背景にあるのは「中国式対策でコロナに勝利した」との成功体験への固執だろう。本来であれば、感染力の強化と毒性の低下に応じて対策を修正する必要があったが、過去の成功体験からその準備ができていなかったのではないだろうか。

低迷長引く不動産市場

時にロックダウンまで伴うゼロコロナ政策は、経済に大きな負荷をもたらす。

3月、北京市で行われた全人代(全国人民代表大会)では、2022年、中国はGDP5.5%の成長を目指すとの目標が掲げられた。一部ではこれを控えめな数字と見る向きもあったが、ウクライナ問題を背景としたエネルギー価格高騰もあり、専門家の間では成長率は目標を下回る5%に留まるのではないかとの見方も出てきている。

中国経済の課題はそれだけではない。特に中国経済の柱とも言える不動産の不調は深刻だ。今年1、2月の不動産販売額は1兆5459億元(約29兆3700億円)、前年から3000億元(約5兆7000億円)以上もの減少となった。

中国政府は住宅ローンの融資拡大など不動産規制の緩和に踏み切ったが、その効果はまだ顕著ではない。不動産市況の先行きが見えないなか、消費者の買い控えは進んでいる。中国国家統計局が発表している、主要70都市新築住宅価格指数では、前月比で上昇した都市が27都市、変化なしが3都市、下落が40都市と低迷している。

先行きの不透明感もあり、中国の不動産デベロッパーは投資を減らしている。今後、新築物件の供給量が減少へと転じるが、新築住宅在庫はこの2カ月で5552万平米の増加を記録しており、解消には時間がかかりそうだ。

投機マネーは日本に向かう?

この状況への対応について、中国政府でも議論が進む。マーケットの安定維持、市場経済の堅持に向け、不動産企業問題に関しては速やかに対応策を打ち出すことを表明した。恒大集団など経営危機に陥った不動産デベロッパーの先行きが見えないことが市場の不安定感を高めているが、優良企業による開発途中の物件買収、M&Aの促進によって解決を図る構えだ。

加えて、中国銀行保険監督管理委員会は、問題解決のための融資を奨励するとの通達を出しており、今後の進展が進むことが期待される。

一方で、中国政府は不動産投機への警戒を解いたわけではない。李克強首相は3月4日、全人代の政府活動報告において「住宅は居住のためにあり、投機の対象ではないとのポジションを堅持する」と改めて表明している。

問題は中国の住宅価格と賃貸収入のアンバランスさにある。

賃貸価格の上昇は不動産価格の上昇に追いついていないため、結果として資産価値に比べ賃貸価格はきわめて低水準にある。投資利回りで見ると、1~2%という低水準でしかない。不動産投資は値上がり益を期待してのものであり、賃料収入を期待した場合には魅力のない投資商品となる。短期的には賃料の急上昇は予想しづらいため、不動産価格の上昇が止まった場合には投資マネーは別の商品を目指すことになるだろう。

マーケットの規模や安定性などの面で、中国不動産市場の代替は簡単には見つからないが、一部で熱視線を集めているのが日本の不動産だ。中国とは正反対に賃貸収入が高く、6%以上の投資利回りが見込める点が魅力だという。

中国と比べ1件あたりの価格が安い点も投資のハードルを下げている。日本で投資会社を設立すれば、経営ビザが取れることを売りとして紹介している不動産仲介会社も多い。

不動産市場の低迷が続けば、中国の投機マネーは次の目的地を探して動き出すだろう。2021年の中国不動産販売額は18兆元(約342兆円)に達した。この一部でも日本市場に流れこんできた場合、そのインパクトはきわめて巨大なものとなる。

                                                 株式会社寧広