不動産投資家のための経済統計講座Vol.3 政府の公式見解「月例経済報告」 景気対策の手掛かりにも!New

景気

内閣府が毎月発表、14の指標から景気を判断
7月は「持ち直しているが一部で弱さ」

不動産投資の戦略を練っていく上で、景気の先行きを読む力は重要だ。そのために重要な経済統計の読み方を解説するこのシリーズ。最後となる第3回は「月例経済報告」を紹介したい。

内閣府が毎月下旬ごろに発表する月例経済報告は、その時点での景気に対する政府の公式見解となる。この見解をふまえて、政府は新たな景気対策を打つことを決めたりする。景気対策には家賃補助など賃貸経営にかかわる政策も含まれるので、不動産投資家としても注目してたい。

月例経済報告では、14個の代表的な経済指標を踏まえ、内閣府が景気の現状の判断を行っている。それを西村康稔経済再生担当大臣が、菅義偉首相も出席する関係閣僚の会議に提出し、政府の見解として共有している。

ちなみに14の指標とは、「個人消費」「設備投資」「住宅建設」「公共投資」「輸出」「輸入」「貿易・サービス収支」「生産」「企業収益」「業況判断」「倒産件数」「雇用情勢」「国内企業物価」「消費者物価」だ。

具体的に、7月19日に発表された直近の7月の月例経済報告ではどんな景気の分析が行われたのか見てみよう。

内閣府の月例経済報告から
内閣府の月例経済報告から

まず、景気に関する判断は「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している」とした。

同じ表現は3カ月連続となる。海外経済の回復を受けて製造業の輸出や生産が回復に向かっているが、新型コロナウイルスの感染拡大で外食などが低迷し、個人消費が弱いことを踏まえた。

景気の先行きについての判断も「感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。

ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」とし、6月と同じ表現で据え置いた。

7月の消費はコロナで「サービス支出が弱い」
住宅建設「底堅い」、住宅着工・貸家など増える

また、月例経済報告では14の指標について、それぞれ判断している。

内閣府の月例経済報告から
内閣府の月例経済報告から

たとえば、個人消費については、6月と同じく「このところサービス支出を中心に弱い動きとなっている」にした。

根拠は、別途、関係閣僚会議に提出される資料が、豊富に図を使っていて分かりやすい。「カード支出に基づく財・サービス消費」や「外食売上高」の動向をグラフなどを示し、個人消費についての断の根拠を説明している。

閣僚会議資料から
閣僚会議資料から

同様に、設備投資は「持ち直している」とした。やはり関係閣僚会議に提出した資料では、機械への投資や、設備投資に先行指標である機械受注などをグラフで示し、判断の根拠を示した。

閣僚会議資料から
閣僚会議資料から

輸出は「緩やかな増加が続いている」、生産は「持ち直している」とした。根拠は以下の図」の通りだ。
閣僚会議資料から

閣僚会議資料から
このほか、不動産投資に直接関係するのは住宅建設。7月の月例経済報告では、「底堅い動きとなっている」とし、6月の見方を引き継いだ。関係閣僚会議に提出した資料では、住宅着工戸数が賃貸も持ち家も分譲も上向いているグラフを示し、判断の根拠を説明した。

閣僚会議資料から
閣僚会議資料から


雇用は賃貸需要に影響 7月は「弱いが求人に底堅さも」

景気判断に「後退」など入れば景気対策の可能性高まる

雇用情勢も、「高い家賃を払ってでも賃貸物件に住むニーズがある」「解雇されたので入居している物件から出ていかなければならなくなる」といった賃貸経営がらみの動向を大まかに判断する材料になる。

閣僚会議資料雇用情勢
閣僚会議資料から

7月の月例経済報告では、雇用情勢について、「感染症の影響により、弱い動きとなっているなかで、求人等の動きに底堅さもみられる」とした。

関係閣僚会議への提出資料では、「雇用者数と完全失業率」「日次有効求人数」「現金給与総額」「休業者数」「民間転職市場の求人指数」「景気ウォッチャー調査 雇用関連DIの推移」のグラフを挙げ、判断の根拠を説明している。

東京都千代田区の首相官邸
東京都千代田区の首相官邸

このように、さまざまな項目に関する判断を積み上げ、景気判断を政府がリアルタイムで行う月例経済報告だが、冒頭説明したように、みていれば、政府が景気対策を打つタイミングをはかることも可能になる。

たとえば、景気に関する判断の表現が「後退」などに変われば、政府による景気対策や、歩調を合わせた日本銀行の金融緩和策が打ち出される可能性が高くなる。

政府の景気対策の中には家賃支援策などが盛り込まれることもあるので、各種の報道などもみながら、いち早く政策の見通しを入居者に伝えるのも、より親切で丁寧な賃貸経営として喜ばれるだろう。

                                              株式会社寧広