不動産投資は「小口化」の時代へ!不動産ファンド投資の仕組みと市場拡大の背景

資産形成のための堅実な投資方法として人気が高い不動産投資。しかし、投資には一定のまとまった不動産購入資金が必要であり、また、賃貸経営においては、入居者(テナント)や建物の維持管理の手間がかかる。

近年は金融機関によるアパートローン審査の厳格化の傾向が強まっており、未経験者や自己資金が少ない人には、ハードルが高い投資方法となりつつある。

そこで、近年、インターネット上等から手軽に、少額なものは1万円など小口資金での投資が可能で、管理等の煩雑な手間が不要な不動産ファンド投資商品が次々に開発されている。本日は、不動産ファンド投資の仕組みと市場拡大の背景を解説する。

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【自己紹介】

不動産ファンドアドバイザーの石井くるみです。本日より、健美家不動産投資ニュースで不動産ファンドの特徴・魅力をみなさんにお伝えするシリーズを担当することになりました。

私は、北海道から九州まで、これまでに全国30以上の不動産会社のファンド事業開発をサポートしてきました。

その中で感じたのは、「余剰資金を高利回りで安定運用できる」という不動産ファンドの魅力です。この2~3年、個人向け不動産ファンド市場では、毎月のように魅力的な新商品がリリースされ、その市場規模は急速に成長しています。

「現物」不動産投資に興味のある読者の皆様も、余剰資金の運用手段を増やすため、不動産ファンド投資の基本を押さえておきましょう。

また、不動産ファンドの知識は、伝統的な「現物」不動産投資にも役立ちます。最初はすこし難しく感じるかもしれませんが、本連載を通じて、最新の不動産ファンドの知識を身に付けていただければと思います。

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不動産ファンドとは?

「ファンド(fund)」とは、「複数の投資家から資金を集めて特定の資産に投資を行い、得られた収益や利益を分配する仕組み」をいう。ファンドの投資対象となる資産には、株、債券、通貨、金、原油など、さまざまなものが存在するが、その中でも「不動産」は、安定的なキャッシュフローを生むため、ファンドに適した資産とされている。不動産に直接又は間接的に投資するファンドを「不動産ファンド」という。

厳しい法令要件をクリアした事業者のみファンド組成が可能
日本において、不動産ファンドを組成すること、すなわち、「不動産投資を目的として投資家から資金を募ること」は一般的に禁止されており、法律に基づく許認可(ライセンス)等を受けた事業者でなければファンドを組成することはできない。

いつの時代においても、「私にお金を出していただければ、必ず儲かりますよ!」という投資詐欺は存在するが、このような悪質な業者を排除するために、行政は絶えず監視の目を光らせている。

事業者がファンドを組成、運用するためには、法令上の一定要件を備え、投資家保護ができる体制を備え、維持しなければならない。

代表的な不動産ファンド3類型

不動産ファンドは、投資家から集めた資金で不動産を取得・運用し、そこから得られた賃料収入(インカムゲイン)や売却利益(キャピタルゲイン)を、出資した投資家に分配する。

投資対象となる不動産は、マンションなどの居住用不動産に限らず、ショッピングモールなどの商業施設やホテル、物流倉庫、病院な様々な用途のものがある。

不動産を対象としたファンドの代表的なスキームには、①REIT(不動産投資信託)
②不動産を担保とした貸付事業(ソーシャルレンディング)
③不動産特定共同事業法に基づく私募ファンド
の3つが存在する。

なぜ、今、不動産ファンドが注目されるのか?

近年、不動産ファンドに大きな注目が集まっている背景について説明しよう。その理由の一つに、個人向け投資不動産販売ビジネスが大きな転換時期を迎えていることが挙げられる。

2013年の日本銀行によるマイナス金利政策導入後、金融機関は個人向けの不動産担保融資(いわゆる「アパートローン」)に積極的となり、会社員を始めとするアマチュアの個人投資家を対象に、物件金額の満額又はそれ以上の借入を組ませて投資不動産を販売する不動産ビジネスが急成長した。

不動産会社は金融機関と提携して積極的に不動産を開発、販売し、いわゆる「サラリーマン大家」「メガ大家」と呼ばれる投資家が急増した。

銀行の融資が下りず、不動産が買えない!

しかし、このような個人投資家に有利な不動産の投資環境は、ほどなく終焉を迎える。株式会社スマートデイズを始めとする複数のシェアハウス運営会社の破綻、シェアハウス向けの不正融資を発端としたスルガ銀行に対する行政処分、融資資料の改ざんが発覚した東証一部上場の(株)TATERUに対する行政処分といった問題が次々と発生した。

これらの問題を受けて金融機関のアパートローン融資に対する金融庁の監督は強化され、金融機関がアパートローンに消極姿勢となった結果、個人向けのアパートローン設備資金の新規貸出額は2017年期中から継続的に減少し、それまで増加を続けていたアパートローン残高も横ばいの状況が続いている。

アパートローン残高と新規貸出額の推移 出所:日本銀行「貸出先別貸出金・国内銀行 (3勘定合算)」より日本橋くるみ行政書士事務所作成
アパートローン残高と新規貸出額の推移
出所:日本銀行「貸出先別貸出金・国内銀行 (3勘定合算)」より日本橋くるみ行政書士事務所作成

商品が売れない!不動産の新たな販売先としてのファンド

個人投資家が不動産を買えなくなったことは、不動産業者にとっては「商品」である投資不動産が売れなくなったことを意味する。

個人投資家が銀行融資を受けられことを前提とした商品販売のビジネスモデルが継続困難となったいま、不動産業者は、投資不動産をファンドに所有させ、個人投資家には不動産ファンド(不動産小口化商品)を販売するビジネスモデルへの転換を急いでいる。

今後、個人を対象とする不動産ファンドの市場規模が拡大するにつれて、不動産業者の役割は「投資不動産の販売者」から、投資家のために物件の選定、運営管理から売却までを一貫して行う「アセットマネージャー」に変化していくと予測される。

クラウドファンディング市場の拡大

不動産ファンド市場の拡大に追い風となっているのが「クラウドファンディング」の活用である。

クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語であり、不特定多数の人々がインターネットを通じて、社会的事業や新規事業等に、寄付や投資等を行う仕組みを言う。

クラウドファンディングは、一般的に、事業を営むために資金調達をしたい「資金調達者」、資金調達者の事業に対して寄付や投資をする「資金提供者」、そして資金調達者と資金提供者をインターネット上でマッチングする「プラットフォーマ―」の3者から構成される。

クラウドファンディングは、資金提供者が資金調達者から受け取る対価の別から、対価が支払われない「寄付型」、対価が商品やサービスで支払われる「購入型」及び対価が有価証券等の投資商品で支払われる「投資型」の3つに大別される。

クラウドファンディングの一般的な仕組み 出所:日本橋くるみ行政書士事務所作成
クラウドファンディングの一般的な仕組み
出所:日本橋くるみ行政書士事務所作成

投資家保護が必要な「投資型」には厳しい規制が

「寄付型」や「購入型」については、「(善意により)このプロジェクトを応援しよう」「プロジェクト支援のお礼としてもらえる製品が欲しい」などの理由から資金提供が行われるため、資金提供者が受け取る対価がない、あってもその内容が明確であるため、資金調達者やプラットフォーマーについて、投資家保護を目的とする厳しい規制は課されていない。(ただし、「購入型」は、いわゆる商品の通信販売として、特定商取引法に基づく表記が必要となる。)

しかし、「投資型」については、資金提供者による資金使途(投資対象)の別から、投資対象を貸付金とする「貸付型(ソーシャルレンディング)」、投資対象を株式とする「株式型」及び投資対象をその他の資産(事業、信託受益権、不動産など)とする「ファンド型」に更に細分され、それぞれ金融商品取引法や不動産特定共同事業法といった投資家保護を目的とする法規制の対象となる。

次回は、不動産ファンドの代表的な3スキームである、①REIT(不動産投資信託)、②不動産を担保とした貸付事業(ソーシャルレンディング)、③不動産特定共同事業法に基づく私募ファンドについて、その仕組みと特徴を解説していく

執筆:石井くるみ(いしいくるみ)

                                            株式会社 寧広