不動産投資に影響ある日本の人口は12年連続で減少。賃貸オーナー「上から目線」の経営では行き詰まる時代にNew

総務省が公表した2021年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態を見ると、日本人住民の人口は2009年をピークに12年連続で減少した。

現行調査開始(1968年)以降、2006年に初めて減少し、2008年と2009年に増加したが、2010年から減少が続いている。全国の人口総計は1月1日時点で1億2665万4244人(△48万3789人、△0.38%)だ。このうち外国人住民が281万1543人(△5万5172人、△1.92%)だった。

三大都市圏(東京圏、名古屋圏、関西圏)の人口は、外国人住民を含めた総計で6639万5732人となって人口割合は69.53を占めているが、三大都市圏は調査開始(2013年)以降で初めて減少した。

出生者数から死亡者数を引いた自然増減数では、日本人住民の自然増減率は△53万608人となり、自然減少数が13年連続で拡大して1979年度以降で最大となった。一方、外国人住民の自然増減数はプラス1万884人と拡大傾向で2012年度以降で最多だった。

あらためて人口の減少が進んでいることがわかる。賃貸住宅経営にとって、この人口動態は将来の稼働率を占う上で外せない統計である。都道府県別でみると、人口が一番多いのは東京都で1384万3525人だった。この総計に占める外国人住民の割合も東京都は3.95%を占めて全国で最も大きかった。

総務省の統計からは、賃貸住宅を経営する上で東京の優位性が変わらず大きく、人口規模が小さい地方の賃貸オーナーにとっては入居者を確保するための工夫が今まで以上に求められていることがうかがえる。

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新型コロナウイルス下で東京から田舎が注目され始めている

安心感を与える快適な生活の提供

賃貸住宅管理会社や賃貸住宅業界にいくつかある業界団体などからは、

「これからの時代は、賃貸オーナーの意識に、住むところを提供している、貸してあげている、という上から目線の発想ではいずれ経営が立ち行かなくなるだろう」

「地方だけではなくてオーナーの顔が見えない賃貸経営では、都市部でも空室が埋まらない状況になってしまう。賃貸オーナーの生活費やローン返済、物件の管理費など諸々の費用はすべて家賃から出ていることを忘れてはならない」

このように危機感をあらわにする発言が聞かれ、賃貸住宅を管理する会社も含めて気持ちを引き締めるべき時期に来ている。

入居者に安心感を与える要素が非常に重要だ。入居者に対して、家主と管理会社はなにをどこまでできるのかを明確にしておくこと。例えば、エアコンが故障して使えなくなったときに夜でも電話できるのか、壊れた設備を入居者が修理していいのか、修理した場合その修理の請求先はどこになるのか。

賃貸借契約時になにも知らされないまま、確認されないまま、いざその場面になったときに入居者が不安になる物件は珍しくない。国民消費者センターなどに寄せられる賃貸住宅に関するトラブル事例にも挙がってくる。入居者に寄りそう丁寧な対応は快適な生活の提供で最上位に位置付けられていなければならない。

賃貸住宅から最寄り駅までの距離が近くて商業施設や病院、役所・出張所など生活利便性を高める施設が周辺にある場合はそれだけで入居者から選ばれそうだが、そうではなく真反対の住環境は賃貸住宅になんらかの特徴やメリットがないと入居者に選んでもらえない。

『入居者にどういう快適な生活を提供できるのか』。入居者から選んでもらえるキーワードとして、このフレーズは、これまで以上に重要になってきている。

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地方では人口減少に負けない工夫を打ち出している

地方の創意工夫に入居者を集める賃貸経営のヒント

賃貸住宅市況については、地方と都市の格差が拡大しつつあるが、もちろん全てが悪くなるわけではない。なかには入居者が順番待ちという人気の賃貸住宅があり、地方でも満室で稼働している物件がある。そうかと思えば、大都市の賃貸住宅で空室に悩んでいるオーナーもいる。

入居者にどういう快適な生活を提供できるのか、を考えたときに無料インターネットやモニター付インターフォン、24時間ゴミ出し可能、宅配ボックス設置、身一つで入居できる家具家電付きといった賃貸が増えているが、このようなハード面に対処していくだけでなく、賃貸借契約時に工夫をすることで入居者を集めている好例もある。

苗加不動産(石川県金沢市)では、敷金・礼金・仲介料・退去修繕費が全部タダという『タダ賃』を提供している。

初期費用を抑えて気軽にひとり暮らしが始められるサービスとして展開しているものだが、その賃貸運営方法は、抑えた初期費用を契約時から2年間の家賃に分散して上乗せしている仕組みとなっている。しかし、更新料もタダであることから、更新した後は初期費用の分散分がなくなり家賃が安くなる。『長く住めば住むほどお得感が増す』という工夫で入居者を集めているのが特徴だ。

賃貸物件の稼働率を向上させるために家賃を下げる。そうすると確かに入居希望者が増えるかもしれないが、賃貸オーナーとしては地域の相場にあった家賃か相場以上の家賃が取れることができればそちらの方がうれしい。

リノベーションやDIYはそこに向けての手段である。入居者が自由に室内の模様替えができるようにしたり、退去時にリノベーションやDIY前の原状回復を求めないなど一昔前に比べて入居者にとっての多様性が広がった。

コロナ禍でお家時間が増えたことでリノベーション需要も増加しているようだ。クラスココンサルファーム(石川県金沢市)は、自社ブランドで展開するリノベーション「リノッタ」の2020年6月~2021年5月の施工数は1067室とコロナ前の2019年6月~2020年5月の施工数と比較して1.3倍に拡大したという。

リノッタ後の平均家賃上昇率は33.3%となり、リノベーション施工後の平均成約期間は25日としている。

人口減少によるネガティブな見方に意に介さない地方の取り組み。東京など大都市の賃貸オーナーほど地方の創意工夫から学べることがありそうだ。膨大な情報量に埋もれているだけでは能がなさすぎる。情報の取捨選択が運用実績に影響を与える。

                                                 株式会社寧広