不動産投資にも活用? ビットコインだけじゃない、広がり続ける暗号資産の世界New

2008年に、「サトシ・ナカモト」という人物(もしくはグループ)がネット上で公開した論文「ブロックチェーン技術を使った中央管理者不在の決済システム」をきっかけに誕生した、暗号資産のビットコイン。

現在は決済というより投資対象としての色合いが濃いのはご存じの通り。昨年後半から価格は急激に上がり、今年4月には史上最高値の1BTC(ビットコイン)=680万円超を記録した。ただし、5月に入ると米テスラ社のイーロン・マスクCEOによるネガティブな発言や中国の規制発表により急落に見舞われ、下旬には一時400万円を割り込むことに。

とはいえ、ここ数年で暗号資産に対する認知度は上がり、保有者を増やしてきた。

ビットコインなど暗号資産は、円やドルなど法定通貨と異なり管理者がいない。ブロックチェーン技術を使うことで改ざんも難しいという。
ビットコインなど暗号資産は、円やドルなど法定通貨と異なり管理者がいない。ブロックチェーン技術を使うことで改ざんも難しいという。

暗号資産で人気なのはビットコインだけではない。この技術をもとに、イーサリアムやライトコイン、リップルなどが作られ、一説によるとその種類は世界で2500を超えるとか。

メジャーどころからマイナーなものまで、さまざまな暗号資産がネット上で生まれ、暗号資産取引所で取引されている。

芸術作品やトレカをトークン化
コスト減になり証明書としても機能

そんな暗号資産の世界でいまトレンドなのが、芸術作品や不動産といった現物資産を「トークン化」する動きだ。

トークン化(トークナイゼーション)とは、ブロックチェーン技術などを使い、ある資産を売買可能なデジタル単位に変換すること。これにより、ネットさえつながっていれば、どこに住んでいようが仲介者不在で市場に参加できるようになる。

例えば、ネット証券。現金をオンライン上の口座に移して取引するので、場所を気にせずに金融商品を売買できる。

ただし、証券会社(仲介者)を介するので、それなりの手数料を支払わないといけない。対してトークンの場合、仲介者がいないので低コストの取引が可能だ。かつ、ブロックチェーンに取引が記録されるので、情報の改ざんや変更なども基本的にはできない。

また、トークンにはいろんな種類や分類があり、それを示す方法のひとつが、別のモノに代替可能かどうかで、代替できるものを「FT(ファジブルトークン)」、できないものを「NFT(ノンファジブルトークン)」と呼ぶ。

FTは資産を別の資産に交換きるトークンのこと。モノやサービスに交換できる法定通貨はFTと言えるし、決済に使うことができるビットコインやイーサリアムも同様の存在だ。

注目すべきはNFTだ。これは特別な価値を持つトークンで、それ自体を分割・交換できない。

例えば、知人からお金を借りた場合、まったく同じ紙幣で返す必要はない。それが1万円なら、別の1万円札や、何なら1000円札10枚でも構わない。

ところが、絵画のようにそれ自体に価値があるものを借りたら、同じものを返す必要がある。同じ作家の別の作品やコピー品だと相手は納得しない。

つまり、この絵画は非代替性(ノンファジブル)であり、同じような特性を備えたトークンがNFTなのだ。他と交換できないから希少性があり、可変できないので所有権を主張できるのが最大の特長と言える。

NFTを使い、アートやスポーツ、ゲーム、そして不動産をトークン化する動きが加速。売買コストが下がり、所有権の証明にもなる。
NFTを使い、アートやスポーツ、ゲーム、そして不動産をトークン化する動きが加速。売買コストが下がり、所有権の証明にもなる。

そして、この特長を活かして進められているのが、 NFTによる現物資産のトークン化だ。

例えばアート場合、有名画家の作品をトークン化して販売すると、購入者はNFTを持つのでオーナーの証明になり、億単位の作品を1口100万円など小口化したNFTにして販売すると、購入のハードルが下がる。

仲介者による手数料もないので、低コストで有名な作品を手にすることができ、高額なアート作品の流動性も高まるだろう。

既に事例はあり、今年3月には「エブリデイズ:ザ・ファースト5000デイズ」というデジタルアートが75億円で落札された。デジタルなので実体はないが、NFTを入手することで所有権を示すことができる。

具体的には、次の通り。作品の所有権を販売したアーティストがNFTのオンライン取引所でNFTを発行し、そのNFTがオークションなどで落札されると購入者に譲渡され、作家は暗号資産の形で対価を受け取る流れだ。

こうした動きはスポーツやゲームの分野にも波及している。米NBA選手のトレーディングカードや「クリプトキティ」と読ばれる猫を育成・交換するゲームの猫のキャラクターなどの所有権もNTFとして売られていて、高額で落札したケースがある。

デジタル上のアイテムやツールは容易に複製ができ、価値や所有権を主張しにくかったが、NFTは「トークンの持ち主が本当の所有者」という、デジタルで保証した所有証明書になる。なお、日本初のメタルダンスユニット「BABYMETAL」は今年5月、結成10周年を記念し、NFTによるトレーディングカードをアメリカの特設サイトで販売したことで話題になった。

期待される不動産のトークン化
収益物件の取引にも影響する?

不動産もトークン化が期待されている分野だ。日本は法制度などが確立されているが、海外では売買や所有権の制度・仕組みが未整備な国もあり、NFTが一役買うと考えられている。

また、不動産の取引は相当な手数料がかかるが、トークン化するとこうしたコストの削減にもつながる。コーカサス地方の国家、ジョージアは2016年にブロックチェーン技術を使った土地登記システムの試験導入を始めていて、これにより土地登記手続きの費用は大幅に下がり、私有地の登記率が改善したという。

シンガポールのブロックチェーン関連企業のEnjinは、ホテルやアパートなど不動産の所有権をNFTで発行し、多くの投資家が大型の不動産に小口で参加できる仕組みを作ると今年2月に発表した。大型不動産の投資に個人が参入しやすくなり、国内外の案件にアクセスしやすくなると見られている。

このように、新たな技術を使い資産の流通性を高め、証明の役割も兼ねるNFTの仕組み。日本でもNFTに関心を持つ企業は多く、アートや不動産など、さまざまな分野で活用されていくに違いない。

                                                 株式会社寧広