コロナ禍でも高級外車「爆売れ」、カネ余りによる富裕層増加は続くか

PHOTO:Bantam/PIXTA

新型コロナウイルスのオミクロン株が世界各国で猛威を振るい、コロナ禍の収束はまだ見通せない状況が続く。日本でも新規感染者数が連日1万人を超え、再び人流抑制のための措置が取られるなど経済への影響が懸念される。

そうした中、豊富な資金力を持つ富裕層が、コロナ対応で市中に流れたマネーを追い風に、さらに資産の拡大を早めている状況も見られる。1000万円を超える高級外車が飛ぶように売れ、高級腕時計を投機目的で買い集める動きもある。コロナ禍のいま、富裕層に何が起きているのか。金融アナリストの高橋克英氏に解説してもらった。

高級外車が爆売れしている

東京都港区の白金台交差点から、新宿区の富久町西交差点までの約6.8kmは通称「外苑西通り」と呼ばれている。白金台、広尾、西麻布、南青山といった、都内屈指のセレブタウンを貫いている。

SUVがセダンから主役の座を奪ったなか、外苑西通りを走る高級外車SUVでよく見かけるのは、メルセデスベンツGクラスの「ゲレンデ」だ。芸能人御用達ともいわれるこの車、2018年に40年ぶりにフルモデルチェンジして以降、さらに人気に拍車がかかり、正規代理店では品薄状態が続く。

メルセデスベンツGクラス「G500」(出典:Mercedes G500, silber, eigene Datei ウィキメディア・コモンズ)

ゲレンデと双璧を成すのが、「ポルシェ・カイエン」だろう。弟分の「マカン」と合わせれば、この界隈の高級外車SUVでは数的には一番多く見かけるのかもしれない。

2010年発売型 カイエンターボ(出典:Thomas doerfer, CC BY 3.0 ウィキメディア・コモンズ)

ランドローバーも外せない。フラッグシップの「レンジローバー」は新車が発売されたばかりであり、新型の「ディフェンダー」は現在、納車まで1年近く待つという。

外苑西通りだけでなく、目黒通りや世田谷の環八沿い、青山通りなどには、その界隈の富裕層をターゲットにした高級外車ディーラーが軒を連ね、多くの高級外車を見かけることができる。

実際、日本自動車輸入組合(JAIA)が発表したデータによると、1000万円以上の高級輸入車の販売台数は前年から23%増の2万7928台で、統計を始めた2003年以降最多となった。

背景に「世界的なカネ余り」

高級外車が爆売れする背景には、「世界的なカネ余り」がある。コロナショックにより、世界中で史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられてきた。カネが市中に流れ込むことになり、流動性のある株式市場だけでなく、ミドルリスク・ミドルリターンで相対的に高い利回りが見込める不動産市場にもカネが流れ込んでいると思われる。

しかしながら、米中対立の激化や中国によるウイグルでの弾圧問題、ミャンマーでの軍事クーデーターを目のあたりにした、世界各地の投資家の間で、地政学リスクへの不安が高まっているのも確かだ。

株式市場においても、新興国より日米など先進国の株式、また不動産においても、新興国や地方都市よりブランド力のある先進国の都市やリゾート地の不動産にカネが流れている。ロンドンやパリ、ハワイなどと同様に、日本では、東京や京都のビルやホテルなどが買われたり開発されているということだ。

新興国に比べて政治的に安定し、市場規模も大きい日本の魅力度が相対的に高くなっているといえるのではないだろうか。日本の富裕層にとっては無論、ドルやユーロ建て資産が大半を占める華僑や欧米の投資家においても、保有資産の分散、通貨の分散という観点からみて、円建ての資産を日本の不動産で持つメリットが生まれているのだ。

株式市場や不動産市場からも溢れたカネは、冒頭で紹介した高級外車以外の市場にも流れている。資産価値の上昇が見込まれる「ロレックス・デイトナ」や「パテックフィリップ」といった高級腕時計、ナイキなどのスニーカー、トレーディングカード、高級ワイン、装飾品、デジタルアートなどだ。

こうした状況から、金融緩和の恩恵を最も受けるのは、すでに資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手にさらなる投資ができる国内外の富裕層だ、ということが言えるだろう。

コロナ禍でも増加する日米の富裕層

実際のところ、コロナ禍にも関わらず、日米の富裕層は増加している。

スイスの金融大手であるクレディ・スイスが発表した、世界の富に関する報告書「グローバル・ウェルス・レポート2021」によると、日本の富裕層(100万ドル以上の資産を持つ成人数)は、2019年から39万人増加し366万人に達している。さらに2025年には、2020年と比較して47.8%増の541万人に達すると予想されている。

日本の米ドル建てミリオネアは366万人(出典:クレディスイス「グローバル・ウェルス・レポート2021」)

世界最大の富裕層国である米国でも、コロナ禍にも関わらず富裕層数は増加している。2020年は前年比173万人増加の2195万人であり、2025年には2805万人に達するという。

そして中国や欧州における富裕層の増加も踏まえると、2020年末の全世界の富裕層の数は、前年比521万人増の5608 万人となる。これが2025年には 8400万人を超え、2020年から約2800万人増加する可能性があるという。

世界的なカネ余りは続く

インフレが進む米国では、今年複数回の利上げが確定的と見られている。一方我が国では、コロナ禍が継続していること、また2%の物価目標が未達である、といった理由から、日銀は金融緩和を大枠では継続する可能性が高いと見られる。

したがって、米国の動向を注視する必要はあるものの、カネ余り状態が続き、富裕層を中心とした不動産や株式市場への投資、高級外車など実物の購入もしばらくは続くことになるのではないだろうか。

もっとも米国においても、小刻みな利上げ予定や量的緩和の縮小はあるものの、大規模な金融緩和策がただちにすべて終わるわけではない。歴史的に見れば依然として低金利環境にあるといえる。欧州の状況もしかりだ。実際、世界の金利の中核指標である米国長期国債は、やや上昇傾向にあるとはいえ、依然として3%以下レンジ相場の低い水準で推移している。

個人の不動産投資にとっても悪い話ではない

昨今、FIRE、テレワーク、ワーケーション、メタバース、べーシックインカム、などといったキーワードがよく聞かれるようになった。コロナ禍もあり、個人における資産運用や働くことの意義やあり方が改めて問われるようになっているのだろう。

実際、いわゆる定職につかず、不動産収入、金融資産運用、権利配当などで生活している層も増えてきているように感じる。そしてこうした新たな富裕層は、その資産を元手にレバレッジをかけたり、ハイリスクハイリターンな投資をしたり、地域や通貨や商品の分散などを図ったりすることで、ますますその資産を増やすことになるだろう。

こうして富裕層による投資余力が増えることは、属性が高い個人の不動産投資にとっても決して悪い話ではない。投資エリアや融資条件など制約はあるものの、すでに保有する投資物件や新たな投資において、キャピタルゲインの可能性といった形の恩恵をもたらすことにもなろう。

現在の不動産市況をバブルと表現するかは評価が別れるところだが、慢性的なカネ余りがバブルに近い状況を作り出し、それがコロナショックでさらに加速してきたのは事実だ。

もっともこうした動きは、格差社会の拡大を生んでいる側面があることも忘れてはならない。個人の不動産投資においても同様だ。富裕層の増加によって現金をもったライバルが増え、物件価格が上昇することで、買いにくくなる弊害も考えられる。岸田首相の提言する「新しい資本主義」や金融所得への課税強化といった報道も、カネ余り政策によって起きた格差の是正が、喫緊の課題となっていることの裏返しといえよう。

                                                株式会社寧広