コロナ禍でも積極投資を継続中!大手デベロッパー東南アジア大規模プロジェクトが続々発表される理由New

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東京のタワーマンション

海外不動産の投資で最も大きな不安。

その一つとして、見ず知らずの外国の企業が開発しているため施工や品質に安心を持てないということが挙げられる。しかしながら昨今は三菱地所、野村不動産をはじめとする日系の大手不動産会社による東南アジア新興国の大規模投資・開発の発表が相次いでおり、日系プロジェクトが目に触れることが多くなってきた。

日本国内の不動産市場を見渡せば、コロナ禍において打撃を受けていない、いやむしろ絶好調といっても過言ではない「住宅市場」。国内市場が十分な盛り上がりを見せる中なぜこのタイミングで東南アジアの不動産開発に積極的に取り組むのだろうか。

その理由について、日本における不動産市場の未来と大手デベロッパーが見据えている将来の不動産事業から説明していく。

「一般人が買えないほど高騰」している
活況な日本の住宅市場

コロナ禍において日本の不動産価格の上昇が止まらない。パンデミックにおけるマネーサプライの増加から、貨幣価値の減少や資産バブルへの懸念を背景にアッパーミドル層から富裕層を中心として不動産を積極的に物色する動きが見られる。

実際に東日本不動産流通機構が毎月出している「Market Watch」2021年6月号では、東京における中古マンションの平均価格は5,000万円を超え、平米単価においては前年同月比で16.7%の上昇を記録。価格上昇の数字だけ見るとバブルのような様相を呈している。

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東京湾岸エリアのマンション

また新築マンションにおいて、不動産経済研究所発表の首都圏新築マンション供給戸数によれば2013年には約56,000戸あったものが、2020年に29,000戸まで減少。供給戸数は約半分となった。同時に建設関連費用も2013年から高騰。

当時であれば一般的な鉄筋コンクリート造のマンションの開発費用は延坪で坪100万円程度であったが、現在では坪130万円から仕様によっては坪150万円近い水準となっている。

土地価格の上昇があまりない見られないエリアであっても、資材を含む建設価格の上昇により不動産の販売単価は上昇傾向だ。

巷で「もう一般人が不動産を買えない」と言われている理由は年収に対しての不動産価格からである。例えば東京都の新築マンション価格は東京都区部で約7,700万円、一方で総務省が2021年に発表した2019年度の東京都の30代の世帯年収は776万円。

世帯年収の10倍を出さないと新築マンションを購入できない。中古マンションであれば6.5倍となるが、仲介手数料やリフォーム費用などの費用がかかる。

日本には史上最低水準の低金利の住宅ローンがあるとはいえ、一般庶民は好立地の不動産を購入することが難しくなってきており、不動産をめぐる格差が露呈してきていると言える。

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リノベーションをしているマンションの一室

一方、開発をするデベロッパーは、マンションの新規供給を進めたくとも出来ない事情がある。首都圏の開発用地が限られていることが新規供給減少傾向の理由だ。毎年安定的な供給戸数を保てないとなると、企業の売上にも影響を及ぼす。

さらに、テレワークの拡大により都心のオフィスの空室率が上昇中で同時にオフィス賃料の減少も見られる。日本国内だけの市場では不透明感を拭えないというのがデベロッパーの本心だろう。

大手不動産会社を中心に
海外投資開発シフト進む

そのような日本の不動産市場環境をよそに、毎月のように日系大手企業による東南アジア新規開発情報が舞い込んでくる。前述のように、日本国内の開発だけでは成長戦略が描けなくなる中、比較的場所が近く日本企業としてのプレゼンスが発揮しやすい東南アジアの新興国での事業展開は中期計画を達成していく上で、経営上の中核事業となりつつある。

以下は日系大手デベロッパーが現在手掛けている東南アジアでの不動産開発事業である。この数年で多くのデベロッパーが必要に応じて現地企業と組んで開発を促進していることがわかる。

以下は日系主要デベロッパーによる東南アジア新興国の事業の中で、住宅を含むプロジェクトかつ敷地面積が約10,000㎡を超える大規模案件を列挙した。

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大手日本企業の東南アジアの主要プロジェクト

こういった当地でも目玉となるような大規模プロジェクトであるが、日本ではあまり大きく報道されていない。特徴は住宅開発に限らず、周辺の商業施設やオフィスの開発を含めた一体開発も手かげているということだ。日本のプロジェクトが小さく感じてしまうほど海外においてはスケールを各社追求しているといえる。

コロナ禍においても現地に日本からチームを送り込み、施工管理、テナントリーシング、現地政府の所轄官庁との許認可や調整などを行っている。

いま「海外事業」は不動産開発会社の花形となりつつある。とある大手不動産会社の営業担当は「10年・15年後を見据えたキャリアの中で、海外事業を経験したことがない人材では社長はおろか役員の椅子も狙えなくなるのでは」と漏らしている。

三菱地所による
インドネシア首都ジャカルタプロジェクト

直近でリリースがあったプロジェクトを2つ取り上げてみたい。2021年6月三菱地所株式会社は、インドネシアの公務員年金基金運用会社である国営企業 PT Taspen (Persero)の不動産部門子会社である PT Taspen Properti Indonesiaと共同で、首都ジャカルタ特別州中心部における大規模複合開発事業「Oasis Central Sudirman」に参画すると発表した。

三菱地所のプレスリリースより 「Oasis Central Sudirman」 外観完成イメージ
三菱地所のプレスリリースより
「Oasis Central Sudirman」 外観完成イメージ

これは三菱地所におけるインドネシア最大のプロジェクトで、ジャカルタ中心部の約33,000㎡。地上75階と地上65階の2棟のタワーには、商業施設・オフィス・ホテル・サービスアパートメントの複合用途で運用される。

東南アジアでは
野村不動産・東急の活躍が目立つ

野村不動産というと自社マンションブランドの「プラウド」が高級マンションの代名詞となった一方で、昨今は武蔵小金井のマンションにおいて施工トラブルが発生しており、そのブランドにも揺らぎが生じている。

東急は電鉄会社ながら不動産事業を中核に据える意図もあり、社名を東急電鉄から東急に変更したことは記憶に新しい。この2社は東南アジア開発といえば、日系デベロッパーの中でその存在感がひときわ光る。

今週、新規販売発表の
フィリピン・マニラ「ザ・シーズンズレジデンス」

全体イメージパース
シーズンズレジデンスの全体イメージパース

野村不動産、三越伊勢丹ホールディングス、フィリピンの大手デベロッパーであるフェデラルランド社の3社による大型開発プロジェクトの「ザ・シーズンズレジデンス」、その豪華なショールームもさることながらタワーマンションの下には三越モール(Mitsukoshi)がオープンするマニラで最も注目を浴びている日系のプロジェクトである。

場所はフィリピンマニラ、「ボニファシオ・グローバルシティ地区(BGC)」というマニラで最もホットな場所である。清水建設がJICAの円借款で開発している「メガマニラ・サブウェイ」の駅も2025年(遅延の可能性は高い)に本エリアに2駅開業予定だ。日本人学校までも徒歩圏であり利便性も高い。

地図2
シーズンズレジデンスのロケーションマップ

さらに、日本を代表する設計会社である日建設計、三越モールにおいては乃村工藝社が関わっている。

フィリピンで初めての「制振ダンパー」も採用している。フィリピンは日本と同様に地震のリスクが有る国であり、今後の高層建築において日本の制振ダンパーは一つのトレンドになるかもしれない。

気になる価格帯と買主は?

2022年第3期に開業を予定する三越モールに直結する「タワマン」は4棟構成。シーズンズという名前にあるようにタワーの名称も春夏秋冬「HARU(春)」「NATSU(夏)」「AKI(秋)」「FUYU(冬)」。

全体が竣工するのは2027年だがコンドミニアムの販売はすでに始めており、売れ行きは順調ということだ。

価格帯は40㎡後半で約4,000万円から。東京でいえば丸の内や六本木のようなエリアに位置する高品質なタワーマンションであり外国人の購入者が多いのではと思ったが購入者の70%はフィリピン人だというので非常に驚いた。

フィリピンでは現地のパスポートを持っている人が60%以上の戸数を購入しなくてはいけない規制がある。本物件も同様なのだが、とりわけ現地の富裕層が自己居住・投資用の双方で購入しているようだ。今後フィリピンに駐在をする日本人の家族が本物件を借りる際はオーナーがフィリピン人であるケースが多いかもしれない。

今週3棟目「AKI(秋)」が販売開始

コロナ禍においても売れ行きは堅調のようだ。最初の2棟の売れ行きが好評だったこともあり、7月20日に3棟目のAKI(秋)の申込みが開始となった。

フィリピンの不動産は、通常売れ行きに応じて次の販売を開始する。順調に進んでいる販売状況を踏まえ、LOI(購入意向書面)という形で購入希望者を募り始めた。

開発を担当している野村不動産の海外事業部の西田氏によれば、AKI(秋)のコンセプトは先行して販売したHARU(春)とNATSU(夏)と異なり、共用部分はゲストハウスやビジネスルームに近く「リラクゼーション&ビジネス」のコンセプトとなっているとのことだ。

左から2棟目がAKI(秋)
左から2棟目がAKI(秋)

日系企業の東南アジア投資・開発の今後

紹介をしたインドネシア、フィリピンに限らず、ベトナムをはじめ多くの東南アジア諸国で日系企業の活躍が目立ってきている。東南アジアの国の規模は様々で法律、慣習、民族、文化も多様性に富んでいる。そのような中で日系企業がたくましく進出し市場の活性化と企業成長を目指している。

既に高度で完成された世界一とも言われる最先端都市「東京」。日本の人口減少とオフィスの分散化から、今以上の新規都市開発の必要性について問われることも多い日本の不動産開発市場。

国内市場だけで成長戦略を描くことが難しくなってきている今、日本企業として積み上げてきたハード面、ソフト面の双方の開発ノウハウを後進国で活かすことで存在価値を示している日系企業の活躍に今後も期待していきたい。

                                                  株式会社寧広