アメリカが2年ぶりに金利を引き上げ。不動産投資への影響を考える

米利上げにより円安が加速することに
約6年ぶりに1ドル120円台を記録

3月15~16日、日本の日銀に相当するアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)はFOMC(連邦公開市場委員会:日本の日銀政策決定会合に相当)を開催し、コロナ禍が始まった2020年3月以来、2年間にわたり続けてきたゼロ金利政策を終わらせ、利上げに踏み切ることを決定した。

アメリカの金融政策を決めるFOMCは定期的に年8回開催。FRB理事や米連銀総裁などが参加している。
アメリカの金融政策を決めるFOMCは定期的に年8回開催。FRB理事や米連銀総裁などが参加している。

具体的に決まったのは、政策金利(中央銀行が設定する短期金利。市中銀行に融資する際の金利)であるフェデラル・ファンド金利(FFレート)を現状の誘導目標0.00~0.25%から0.25ポイント引き上げ、0.25~0.50%にしたことだ。

背景にあるのはご存じの通り、米国の過度なインフレ(物価上昇)。コロナショックで世界経済は混乱し、米国もそれは同じこと。FRBは株価暴落や失業者の増加を抑え経済を支えるため、金利の引き下げや現金の供給を増やす「金融緩和」を実施した。

これにより米経済は回復に向かい、ダウ平均株価など代表的な株価指数は過去最高を更新したのは記憶に新しい。

失業率も2020年4月に14.7%まで上昇したが、その後は下落に転じて20年10月~21年4月までは6%台、以降も下がり続け、今年2月には3.8%とコロナ前に近い水準まで落ち着いた。

一方、経済が回復する中、コロナ禍に伴う供給不足や賃金上昇は物価上昇を招き、2021年11月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比6.8%増と高水準に達することに。

食品や住宅、ガソリン価格の上昇は国民の不満につながり、こうしたインフレ懸念を解消するためFRBは量的緩和政策を縮小する「テーパリング」を開始。資金供給量を減らす金利を引き上げることでインフレを抑制する策に打って出たわけだ。

その一つが今回の金利引き上げで、パウエルFRB議長は会議後の記者会見で「経済は非常に堅調で、タイトな労働市場と高インフレを背景に、FOMCはFF金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切と予想する」と明言。次回以降の継続的な利上げを示唆した。5月のFOMCでもFF金利を0.5%引き上げる可能性があるという。

一方、2月下旬にはロシアによるウクライナ侵攻が始まっているが、FOMC後の声明文では「米経済への影響は極めて不透明だが、短期的にはロシアの侵攻とそれに関連する出来事がインフレにさらなる上昇圧力をかけ、経済活動を圧迫する可能性がある」と警戒感を示し、「原油やその他の財の価格上昇は、国内の短期的なインフレにさらに上昇圧力をかける」とも述べた。いずれにしても、積極的な金融政策を通じて、適切とされるインフレ率を目指すのが目標だ。

米利上げの影響を受けて、外国為替市場では円安が加速。今後も同様の動きが続くと、国内では深刻な物価上昇が起きるかもしれない。
米利上げの影響を受けて、外国為替市場では円安が加速。今後も同様の動きが続くと、国内では深刻な物価上昇が起きるかもしれない。

大胆な金融政策の転換で起きたのは、為替市場における円安シフトだ。それもそのはず、アメリカが利上げを実施すれば、日本円より運用などで有利な米ドルを買う動きが加速するのは当然のこと。これを受け、16日時点で118円台だった米ドル円は円安に振れ、22日には6年ぶりに1ドル120円台に達した。

円安の進行により物価上昇が顕著に
不動産投資への影響は避けられない?

円安によって進むのは、日本国内の物価上昇だ。食糧や石油をはじめとするエネルギー、鉱物などを輸入に頼っている日本にとって過度な円安は輸入面でマイナスに影響する。

加えて、コロナ禍における経済活動によって、世界規模でエネルギーや資源の争奪戦も起きていて、賃金は上がらないのに物価は上昇する「悪い物価上昇(スタグフレーション)」は進行するばかり。

今年に入っても多くの企業が食品や日用品の値上げを始めていて、ガソリンにいたっては3月16日に公表された店頭価格(レギュラーガソリン)は全国平均175.2円と、10週連続の上昇を記録した。

では、米国の利上げによる円安、日本の物価上昇は不動産投資にどう影響するのか。

その一つが「ウッドショック」だ。昨年から供給不足による木材の価格高騰が起きているが、円安が進むと輸入価格はさらに上昇する。

ウッドショックに拍車がかかると建築費のさらなる増加にもつながるに違いない。木材に限らず、ステンレスなど家に必要な材料は輸入品が多く、円安はもちろんウクライナ侵攻、世界的な需要の回復で供給不足が続くようなら、収益物件の価格高騰は避けられない。

あるいは、米ドルの金利引き上げで、投資資金が不動産から為替市場に流れる可能性もある。これまで、余剰資金で投資物件を買っていた層が、安定的な米ドル投資を選ぶようなら、国内でのライバルが減るかもしれない。

なお、アメリカの金利引き上げや今後のさらなる上昇を見越し、米国で長期金利が上昇。それに引っ張られる形で日本の長期金利の指標である10年物国債の利回りも上昇したが、日銀はその上限を0.25%に抑える方針を決めている。

そうすると、国内の金利水準は大きく変わらず、今と同じく低金利の状態で資金調達が可能だ。

ところが、日本でも物価上昇が激しくなり金融政策の転換を余儀なくされるとどうだろうか。

少し考えにくいシナリオだが、金利が上がると物件価格は下落しやすく、市場に出回る物件の数は少なくなるかもしれない。一方、住宅ローン金利が上昇すると、ローンを組んで家を買う層が少なくなり、賃貸需要は高まる可能性があり、物件オーナーにとっては追い風だ。

風が吹けば桶屋が儲かるではないが、アメリカの金利引き上げは、日本の不動産投資市場に無関係ではない。日本を含め両国の状況を確かめながらトライすることだ。

                                                 株式会社寧広