アスベスト対策で規制強化、4月から「事前調査」の報告も義務化

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人体に有害なアスベスト(石綿)が飛散するのを防ぐための規制が強化されている。昨年4月から原則すべての建築物で、工事前にアスベストの有無を調べる「事前調査」の実施が義務付けられた。今春からはさらに、その調査結果を行政に報告する義務が追加される。

建物にアスベストが含まれていた場合、除去費用が余分にかかることになる。そのため、不動産投資家にとっても見過ごせない問題だろう。一方で、規制強化の内容については、詳しく知らない不動産投資家も多いだろう。そこで、最近のアスベスト対策の動向をまとめてみたい。

「事前調査」の費用はどうなるのか

アスベスト対策の一環で、今春から何が変わるのか。その前に、昨年4月に行われた「大気汚染防止法」の改正によってどのようなことが変わったのかを整理しておこう。

昨年スタートした主な規制としては、アスベストが含まれているかどうかを目視や設計図などで確認する「事前調査」がある。実施とその調査結果を3年間保存することが義務付けられた。

こうした規制強化の背景には、不適切な方法で除去を行ったことによりアスベストが飛散した事例が発生したことなどがある。

アスベストを含む可能性がある戸建て住宅の建材(出典:国土交通省「目で見るアスベスト建材」)

事前調査は、解体やリフォームを予定しているすべての建築物などで実施が求められる。工事を受託した元請け業者または、自主施行者が行う。調査は主に、現地で部材の製品情報などを目視で確認する方法と、設計図など所有者から提出された書類を基に確認する方法がある。木材や金属、ガラス、畳など明らかにアスベストが含まれていない部材以外はすべてが調査対象となる。

このほか、国はこれまで規制の対象外だった「石綿含有成形板」など、アスベストを含むすべての建材に規制の対象を拡大。アスベストの除去方法に違反があった場合には、3か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるようになった。

「80平米以上」と「100万円以上」に報告義務

今年4月からは、この事前調査の結果を行政に報告する義務が新たに加わる。報告が義務付けられる工事は規模で決まる。建築物の場合、「床面積が80平米以上の解体工事」や「請負金額が100万円以上の改修工事」が対象となる。今年4月1日以降に着工する工事から対象になる。

報告義務を負うのは、解体やリフォームの請負業者で、アスベストの有無に限らず、調査結果を報告しなければならない。報告は電子システム「石綿事前調査結果報告システム」からできる。

新システムの導入に伴い、国は操作方法を説明するマニュアルを公開している。それによると、報告対象の部材は「吹付け材」「保温材」「スレート波板」などに細分化されている。それぞれについて、石綿含有の有無、含有無しと判断した根拠などを選択していく方式になっている。

石綿事前調査結果報告システムの入力画面。部材ごとに詳細な報告が求められる(出典:Youtube厚生労働省公式チャンネル)

このような規制強化によって、物件の解体やリフォームに伴う費用にどのような影響が考えられるだろうか。

ある解体事業者は「報告を求められる内容によっては、事前調査の費用が今までより膨らむ可能性もあるのではないか」と話す。この事業者は、法改正以前からすべての解体工事で事前調査を実施してきたという。

事前調査にかかる費用は所有者が負担するが、平均的に1現場で3~5万円。アスベストが含まれている可能性がある部材ごとに検体を採取して、専門機関に調査を依頼しているそうだ。事前調査はすでに義務づけられているため、このコストは変わらないが、改正によって調査対象となる検体の数が増えれば、その分コストがかさばる可能性がある。

事前調査でアスベストが含まれていることが判明した場合は、さらに費用がかさむことになる。国土交通省によると、アスベスト含有吹付け材の除去費用の相場は、処理面積が1000平米以上の場合で1平米当たり1~3万円、処理面積が300平米以下の場合は2~8.5万円とされる。

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来年10月からは、さらに規制が追加される。事前調査は現在は特別な資格がない請負業者や自主施行者でも可能だが、専門知識を持つ特定の者に限られる。具体的には、事前調査の場合、日本アスベスト調査診断協会に登録された「石綿含有建材調査者」となる。

アスベストを含む建材の使用は2006年に禁止されたが、それ以前に建てられた建築物にはアスベストが含まれている可能性がある。購入を検討している物件にアスベストが含まれている可能性はないだろうか。リフォームを念頭に新たに物件を購入する場合や、将来的に解体する予定の方は特に、購入可否を判断するためのチェックリストに加えておきたい。

                                                 株式会社寧広