あなたの物件の「駅徒歩」も変わる? 広告規制の改正点

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宅建や賃貸不動産経営管理士の資格試験問題などを通して、賃貸経営の実務にも生かせる知識を身につけていこうというこの連載。

今回は、「物件の広告規制」にまつわる知識を一緒に学んでいきたいと思います。

賃貸物件として客付けをする際には、仲介会社などに「広告」を依頼する場合が多いでしょう。賃貸だけに限りませんが、物件の広告には、実は多くの規制があります。そしてこの規制、いま改正作業が行われています。どんな規制があるのか、どういったことができないのか、この規制がどのように変化するのか。大家さん自身もぜひ知っておいていただければと思います。

まずは、いつものようにクイズです。

一棟マンションを購入、リノベーションして収益物件として貸す際、賃料や共益費などの条件が決まっていなければ広告することはできない。○か×か。

入居者募集に必要となる広告。条件は決まっていないと広告できないのでしょうか?

じっくり考えてみてください。

正解は…?

答え:○

現在の「不動産の表示に関する公正競争規約」(以下、本記事では「規約」といいます)では、広告することは難しいです。

なぜ難しいのかを、この後、順を追ってお話しいたします。

広告規制があるワケ

どんなに条件のよい物件を持っていても、それを広告しなければ、販売も賃貸もできません。売り手も貸し手も、できる限り早く取引したいのは当然ですし、できれば、建築工事をする前に買主や借主が決まっていれば資金繰りも楽でしょう。

ただ、例えば新築物件を広告する時、役所のお墨付き(開発許可や建築確認など)もない状況で、完成予想図を見せて取引することまで認めてしまうと、そのお墨付きがもらえなかった場合などには、消費者に多大なる損害を与えてしまいます。

そこで、それぞれのニーズを考慮して、法律などで広告に関する妥当な落としどころを定めています。

今回の記事では、特に「規約」を中心に広告規制を解説します。なお、この規約は現在、改正作業が進められています。改正案は、消費者庁及び公正取引委員会による事前審査がすでに完了しており、2021年10月22日開催の不動産公正取引協議会連合会による会議で承認されました。

近い将来、施行される運びとなっているので、その改正点も踏まえて解説いたします。

未完成物件は広告できない?

未完成物件、これから作る予定の物件でも、宅地造成の許可や開発許可、建築確認というお墨付きをもらえれば、広告することはできます(宅地建物取引業法33条)。

ただし、事業者が、新聞や雑誌広告など、一定の表示媒体を用いて物件の表示をするときは、物件の種別ごとに、次に掲げる事項について、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければなりません(規約8条)。

(1)広告主に関する事項

(2) 物件の所在地、規模、形質その他の内容に関する事項

(3) 物件の価格その他の取引条件に関する事項

(4) 物件の交通その他の利便及び環境に関する事項

(5) その他規則で定める事項

したがって、例えば新築の分譲マンションの広告をする場合、販売戸数、価格、敷地が借地権の場合におけるその内容や条件、管理費及び修繕積立金などが決まっていなければ、たとえ建築確認などのお墨付きをもらっていたとしても、規約上、広告が禁止されることになります。 

「予告編」みたいな広告は許される?

一方で、「予告編」みたいな広告は可能な場合があります。

例えば、不動産の広告で、「予告広告」という用語を目にしたことはないでしょうか。

予告広告とは、分譲宅地、新築分譲住宅、新築分譲マンション、新築賃貸マンションまたは新築賃貸アパートであって、価格などが確定していないため、ただちに取引することができない物件について、その本広告(規約第8条に定める必要な表示事項をすべて表示して物件の取引の申込みを勧誘するための広告表示のこと)に先立ち、その取引開始時期をあらかじめ告知する広告表示のことをいいます(規約9条(1))。

新築物件の場合、いくらで販売・賃貸できるのか、その他もろもろの条件が決まっていない場合もあります。ですが、「普通の広告(本広告)はまだできないのですが、条件がもろもろ決まれば、ちゃんとしたものを出しますよ」という予告編が出せれば、市場の注目を集められ、次の本広告の反響にも繋がります。

そこで、現行の規約では、予告広告を行うのと同じ媒体で本広告すること、及び予告広告である旨や、販売予定時期などを、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示することを条件に、予告広告を認めています。

例として、「新築分譲マンション」の場合の予告広告で、表示を省略できるものは次のものです。

(1)販売戸数

(2)主たる設備等の概要及び設備等の利用について条件があるときは、その条件の内容(敷地外駐車場についてはその旨及び将来の取扱い)

(3)価格

(4)上下水道施設、都市ガス供給施設等以外の施設であって、共用施設又は特別の施設について負担金等があるときはその旨及びその額

(5)敷地が借地権の場合、その種類、内容、借地期間並びに保証金、敷金を必要とするときはその旨及びその額

(6)管理費及び修繕積立金等

(7)取引条件の有効期限

(8)情報登録日又は直前の更新日及び次回の更新予定日

中古のリノベ物件は「予告」できない?

前記のとおり、現行の規約では新築物件を対象としているため、リノベーションした物件をそれと同様に解釈するのは困難です。

ただ、現在進行中の改正案では、予告広告の対象に一棟リノベーションマンションも含めることになっています。

具体的には、規約4条(3)は次のように改正されます。

■予告広告 

販売区画数又は販売戸数が2以上の分譲宅地、新築分譲住宅、新築分譲マンション又は一棟リノベーションマンション、もしくは、賃貸戸数が2以上の新築賃貸マンション又は新築賃貸アパートであって、価格又は賃料が確定していないため、直ちに取引することができない物件について、規則に規定する表示媒体を用いて、その本広告(第8条に規定する必要な表示事項を全て表示して物件の取引の申込みを勧誘するための広告表示をいう。)に先立ち、その取引開始時期をあらかじめ告知する広告表示をいう。

また、その際の広告方法についても変更されます。

これまでは、紙媒体での広告を前提にした規定となっていましたが、改正案では、スマートフォンやパソコンなどの普及状況を考え、インターネット広告のみでも可能にするよう緩和されています。

具体的には、規約9条2が次のような記述となりました。

予告広告を行う場合においては、当該予告広告に係る物件の取引開始前に、次のいずれかの方法により本広告を行わなければならない。

(1) 当該予告広告を行った媒体と同一の媒体を用い、かつ、当該予告広告を行った地域と同一又はより広域の地域において実施する。

(2) インターネット広告により実施する。

なお、今回「一棟リノベーションマンション」とあるように、アパートは想定されていません。

この規約において、マンションとは「鉄筋コンクリート造りその他堅固な建物であって、一棟の建物が、共用部分を除き、構造上、数個の部分(以下「住戸」という)に区画され、各部分がそれぞれ独立して居住の用に供されるものをいう」と定義されています。

さらに、一棟リノベーションマンションは「共同住宅等の1棟の建物全体(内装、外装を含む)を改装又は改修し、マンションとして住戸ごとに取引するものであって、当該工事完了前のもの、若しくは当該工事完了後1年未満のもので、かつ、当該工事完了後居住の用に供されていないものをいう」と定義されています。

したがって、同規約では、仮に専有部分のひとつをリフォームしても、新築分譲マンションと同様の扱いになる一棟リノベーションマンションとしては広告できません。

「駅からの距離」にも変化が

その他、今回の改正では、駅までの所要時間の表示方法など、重要な点について多く改正されております。詳細は不動産公正取引協議会連合会のサイトをご確認いただければと思いますが、いくつかまとめてご紹介します。

○公共交通機関を利用しないような場所でも、最寄りの駅までの道路距離を表示しなければならないの?

現行の規約では表示しなければならないことになっていますが、改正案では、この規定が削除されています。

○電車やバス等の交通機関の所要時間はどの時間帯のものを表示するの?

現行の規約では、「通勤時の所要時間が平常時の所要時間を著しく超えるときは、通勤時の所要時間を明示すること。この場合において、平常時の所要時間をその旨を明示して併記することができる」と規定されており、時間帯までは明記されていません。

改正案では、消費者利益を考慮し、「朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示すること。この場合において、平常時の所要時間をその旨を明示して併記することができる」と変更されています。

また、現行の規約では、乗り換えを要するときはその旨を明示することだけが義務付けられていますが、この点についても、消費者利益を考慮し、「乗り換えを要するときは、その旨を明示し、その所要時間には乗り換えに概ね要する時間を含めること」と変更されています。乗り換え案内サイトも多くあり、乗り換え時間を含んだ所要時間の算出も容易だからです。

○新設の路線は、現在利用できるものとあわせてしか表示できないの?

現行の規約では、「公共交通機関は、現に利用できるものを表示し、特定の時期にのみ利用できるものは、その利用できる時期を明示して表示すること。ただし、新設の路線については、現に利用できるものとあわせて表示する場合に限り、路線の新設に係る国土交通大臣の許可処分又はバス会社等との間に成立している協定の内容を明示して表示することができる」と定められています。

改正案では、「新設の路線については、現に利用できるものとあわせて表示する場合に限り」という文字が削除されています。つまり、新設の路線のみを表示することも可能となります。

○道路距離や所要時間の計算は、専有部分の玄関から? マンションの出入口から?

現行の規約では、「道路距離又は所要時間を表示するときは、起点及び着点を明示して表示すること(他の規定により当該表示を省略することができることとされている場合を除く)」とだけ規定されており、そのあたりが明確ではありませんでした。

この点、改正案では、「道路距離又は所要時間を算出する際の物件の起点は、物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点(マンション及びアパートにあっては、建物の出入口)とし、駅その他の施設の着点は、その施設の出入口(施設の利用時間内において常時利用できるものに限る)とする」という文言が追加され、所要時間や距離算出の起点、着点が明確になりました。

つまり、質問の場合、専有部分の玄関ではなく、マンションの出入口から算出します。

○団地の場合は、それぞれの施設からもっとも近い団地内の地点からの距離・所要時間を表示すれば良いの?

現行の規約では、「団地と駅その他の施設との間の距離又は所要時間は、それぞれの施設ごとにその施設から最も近い当該団地内の地点を起点又は着点として算出した数値を表示すること。ただし、当該団地を数区に区分して取引するときは、各区分ごとに距離又は所要時間を算出すること」と規定されています。

この点、改正案では、消費者利益を考慮し、「その施設から最も遠い区画(マンション及びアパートにあっては、その施設から最も遠い建物の出入口)を起点として算出した数値も表示すること」という文言が追加されました。

過去問を解いてみよう!

今回のような広告に関する問題は、宅建試験でも賃貸不動産経営管理士の試験でも、どちらでも出題されています。今回は、宅建士の過去問題から出題します。

ぜひ、挑戦してみてください。

【問題】宅地建物取引業者が行う広告に関する次の記述のうち、不当景品類及び不当表示防止法(不動産の表示に関する公正競争規約を含む)の規定によれば、正しいものはどれか。

1.建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、セットバックを要する旨及びその面積を必ず表示しなければならない。

2.取引態様については、「売主」、「貸主」、「代理」又は「媒介(仲介)」の別を表示しなければならず、これらの用語以外の「直販」、「委託」等の用語による表示は、取引態様の表示とは認められない。

3.インターネット上に掲載している賃貸物件について、掲載した後に契約済みとなり実際には取引できなくなっていたとしても、当該物件について消費者からの問合せがなく、故意に掲載を継続していたものでなければ、不当表示に問われることはない。

4.新築分譲住宅を販売するに当たり、販売価格が確定していないため直ちに取引することができない場合、その取引開始時期をあらかじめ告知する予告広告を行うことはできない。

(2020年12月試験 問47)

複雑な部分も多いですが、知っておいて損はない知識ばかりです。

正しいものは1から4のうち、どれでしょうか?

正解は…。

答え:2

1:× 

建築基準法42条2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、その旨を表示し、セットバックを要する部分の面積がおおむね10パーセント以上である場合は、あわせてその面積を明示しなければなりません(不動産の表示に関する公正競争規約13条・同施行規則8条(5))。したがって、必ず表示しなければならないわけではありません。

2:○ 

宅建業者は、「取引態様」について表示するときは、「売主」、「貸主」、「代理」または「媒介(仲介)」の別をこれらの用語を用いて表示しなければなりません(不動産の表示に関する公正競争規約15条(1)・同施行規則10条(1))。したがって、「直販」、「委託」等の用語による表示は、取引態様の表示とは認められません。

3:× 

成約済みの物件を速やかに広告から削除せずに当該物件のインターネット広告等を掲載することや、広告掲載当初から取引の対象となり得ない成約済みの物件を継続して掲載すると、消費者からの問い合わせ及び故意・過失を問わず、おとり広告に該当します。

なお、おとり広告とは、(1)物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示、(2)物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示、(3)物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示をいいます(不動産の表示に関する公正競争規約21条)。

4:× 

宅建業者は、広告をするときは、(1)広告主に関する事項、(2)物件の所在地、規模、形質その他の内容に関する事項、(3)物件の価格その他の取引条件に関する事項、(4)物件の交通その他の利便及び環境に関する事項等を、物件の種別ごとに、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければなりません(不動産の表示に関する公正競争規約8条)。

ただし、分譲宅地、新築分譲住宅、新築分譲マンション、新築賃貸マンションまたは新築賃貸アパートであって、価格等が確定していないため、直ちに取引することができない物件について、その本広告に先立ち、その取引開始時期をあらかじめ告知する予告広告は行うことができます(同規約4条)。

今回は、物件の広告に関する規制を中心にお話いたしました。まさに改正が行われているところであり、次回の試験に挑戦される方にとっては重要なポイントでもありますし、また、大家さん自身も知っていて損はない知識です。

                                                株式会社寧広