「融資」を攻略、絶対知っておきたい基礎知識

不動産投資歴20年の不動産投資家「テリー隊長」全面協力のもと、「初心者が必ず知っておきたいシミュレーションのすべて」をテーマに基礎知識を学んでいくこの連載。

第5話は、不動産投資を始める際に大きな課題の1つとなる「融資」について、基本的な知識を学びます。

<登場人物紹介>

 テリーさん
50代半ばの不動産投資家。IT企業A社の元社員。20年前に不動産投資を始めた。50歳で会社を早期退社し、不動産賃貸経営を行いながら、悠々自適の生活を送っている。

 楽太君
30歳のサラリーマン。A社に勤務し、以前テリーさんの下で働いていた。素直で好奇心旺盛な性格。将来になんとなく不安を覚えて、不動産投資に興味を持ち始めた。数字は少し苦手。

第4話から続く)

不動産投資に興味を持ち始めたものの、どうにも知識が乏しいサラリーマン・楽太。そこで、会社の大先輩で、不動産投資家のテリーさんに教えを請いながら、不動産投資で失敗をしないためのシミュレーションを学ぶことになった。

前回、サラリーマンが不動産投資をしたときの「税金」を学んだ楽太は、シミュレーションに使うための「税率」の求め方を習得したのだった。

★前回のおさらい★

・サラリーマンの所得税は、「給与所得」から「所得控除」を引いた「課税所得」を求めることで計算できる
・サラリーマンが不動産投資をした場合、給与の所得と不動産の所得を合わせて、税金が算出される

★今回の目標★

・不動産投資に「融資」を使うメリットとデメリットを理解する
・それぞれの金融機関の特徴を知る
・融資審査で見られるポイントを知る
・融資の情勢はその時々で異なることを理解する

物件を買うお金、どうしたらいいの?


「楽太君、物件を買うお金はどうしようと思っているの?」

 


「そこなんですよね。社会人になって10年近く、一生懸命貯金したんですけど、なかなか…」

 


「不動産投資で資産を増やしたいけど、資金がないと始めようにも始められないよね。1つの案としては、貯金の範囲で安めの物件を購入して、徐々に物件を増やしていくこともできるよ」

 


「えっ。貯金の範囲って、そんなに安い物件があるんですか?」

 


「貯金額がいくらかにもよるけど…物件によっては楽太君でも十分に買えると思うよ。もちろんメリット・デメリットはあるけどね」

 


「そうなのかあ…でも、不動産会社が紹介してくれる物件には、『提携ローンがつきます』っていうのも多いですよね?」

 


「そうだね。僕もそうだったけど、銀行から資金を借りて、不動産投資をするサラリーマンがたくさんいるのも事実だ」

 


「ということは、銀行から融資を受けることは可能なんですね」

 


「そうだね。でも、銀行から融資を受ける前に知っておかないといけないことがいくつかあるから、ここで勉強しておこう」

融資利用のメリットとデメリット


「まずは、融資を受けることのメリットとデメリットについて考えてみよう。簡単にまとめるとこんな感じかな」


「メリットの1つ目はレバレッジだ。つまり、レバレッジ=てこを使うということ」

 


「てこって、てこの原理とかの、てこですか」

 


「そう。わかりやすく言えば、少ない自己資金しかない人でも、銀行からその金額の何倍もの融資を受けて不動産投資物件を購入し、自己資金以上の利益を得ることだよ」

 


「なるほど」

 


「メリットの2つ目は、手元資金を温存できること。不動産賃貸業では、いつ何が起きるかわからない。手元資金はある程度持っていた方が安全なんだ」

 


「確かに、物件に貯金全額ツッコむのは怖すぎます」

 


「うん。それに、物件を継続して増やしていくには、諸経費などの現金はどんどん必要になるよね」

 


前に教えてもらった、物件を購入するときの諸経費とかですね」

 


「その通り。こんな感じで、融資を受けられれば投資効率は良くなるんだよ」

 


「不動産投資以外で、投資のための資金を銀行が融資してくれるものはないですよね。そこが不動産投資の魅力にも感じます」

 


「そうだね。その一方で、デメリットの1つ目は、利息の支払いがあることだ」

 


「銀行もタダでお金を貸していたら利益がでませんもんね」

 


「今がいくら低金利と言っても、長期間、複利で借り入れをするのだから、それなりの金額は覚悟しないといけないね」

 


「はい、わかりました」

 


「デメリットの2つ目は、返済のプレッシャーだ。経営がうまくいかず、返済ができなくなったら…というプレッシャーを受け続けることになる」

 


「大きな借金をすることは、初心者の僕には本当に不安です。返済ができなかったら、自己破産だってあるんですよね」

 


「そうだね、だからこそ、不動産投資シミュレーションをしっかりやって、将来のリスクについてよく考えておく必要があるんだよ」

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投資の世界には、リスクのないところに、リターン(利益)はないという言葉があります。誰でも多額の借金をするのは怖いですが、ただリスクを恐れているだけでは、大きな利益を得るのも難しいのです。

大切なのは、リスクと利益のバランスをとることです。大きな利益を狙って、無茶なリスクがある投資をしてはいけないことは、言うまでもありません。しかし逆に、リスクを抑えれば、当然利益は少なめになります。どれだけのリスクをとって、どれだけのリターンを狙うのか、おのおの決める必要があるのです。

一般的に、不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資とも言われます。爆発的なリターンは狙えませんが、ほどほどのリスクをとって、着実にリターンを取りながら行うのが、不動産投資の王道であると思います。 

金融機関には種類がある


「さて、次は金融機関についてみていこう。楽太君も銀行の口座を持っていると思うけど、金融機関の種類、どんなものが思いつくかな」

 


「えーっと、僕の給与が振り込まれるのはメガバンクのA銀行ですけど…、あとは、学生のころは地元の銀行の口座を使ってました」

 


「そうそう。各金融機関についてまとめるとこの表のようになるよ。もちろん、おおまかな傾向で、各金融機関で違いはあるけどね」

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順番に各金融機関の不動産投資の特徴について説明してみましょう。

■メガバンク

メガバンクを利用する最大のメリットは、低金利なことです。メガバンクとお付き合いができれば1%台、もしくは1%未満の融資が受けられます。また、全国の不動産物件に対応してもらえます。例えば、東京に住んでいる人が、札幌の物件に投資することもできます。ただし、その都道府県に支店がなくてはいけません。

融資対象に制限を設けていませんが、審査は非常に厳しいです。資産の現状、物件の高収益性などについて、ハイレベルであることが求められます。その上、物件によっては頭金20%以上を求められたり、共同担保を求められたりすることも多く、十分な資産や実績のない一般企業の初心者サラリーマン、あるいは新設の法人にはハードルが高い金融機関です。

■地方銀行

メガバンクと比較すれば若干金利は高くなりますが、初心者サラリーマンにも積極的に融資をしてくれるところもあるので、利用しやすい金融機関です。ただし地方銀行といえども、利益重視の株式会社ですから、審査はメガバンク同様に厳しく行われます。

一部に全国の不動産物件に融資をしてくれる銀行もありますが、基本的には地域振興を目的にしていますので、その都道府県に住む人が、その都道府県の物件に投資するときに利用する金融機関です。

その成り立ちによって、第一地方銀行、第二地方銀行の2つに分かれます。一般的に、第一の方が第二より規模の大きな、都道府県の名門企業であり、対象地域も広いことが多いです。逆に第二は、規模が小さく、支店も少ないため、対象の地域に制限があります。しかし、もともと商工ローンや消費者金融を業務としていたところが多く、個人や小規模な法人への融資は得意とするところです。

よって、地方銀行を選ぶときは、自分の住居と物件の所在地に応じて、どの第一か第二が対象なのか? どちらが、自分にとって有利かを見極める必要があります。

■信用金庫・信用組合

主に会員・組合員からの預金を地域振興のため活用することを目的とした非営利組織であり、株式会社ではありません。このため、地域=地元を大切にするという意識が強く感じられる金融機関です。

金利は少し高めですが、不動産融資に積極的なところが多いです。しかし、目的はあくまでも地域振興なため、融資の審査には独自性が見られます。具体的には、会員・組合員になって、地元貢献のために預金や定期などの出資をする意思があるか、今後とも継続して長く付き合う意思があるのかなどを審査の時に必ず確認されます。確認されなくてもそのような態度で審査に臨みたいものです。

■日本政策金融公庫

日本政府が推進するさまざまな政策の実現のために、融資を行う金融機関です。このため、名目上は不動産投資を行うための融資ではなく、新規開業資金の融資など、すでに用意されている数ある融資制度の中から、不動産投資に融資を行ってくれる制度を探すのがルールです。

金利はそれほど高くなく、不動産投資の初心者でも申し込みができる金融機関ですが、融資金額が低めなこと、返済期間が短いことなどのデメリットがあり、案件によっては使いづらい面があります。

■ノンバンク

その名の通り、銀行でない金融機関です。銀行との違いは、預金サービスがなく、融資だけを行っているところです。消費者金融・信販・クレジットカードもこのカテゴリーの金融機関ですが、不動産融資に積極的なノンバンクもいくつかあります。

金利は銀行に比べて高めですが、ノンバンクのメリットは、銀行に比べて審査が柔軟なところです。具体的には、銀行が融資しない、借地権付き物件や建築基準法の不適格物件についても審査してくれます。

審査スピードが非常に早く、銀行なら1カ月ぐらいかかるところを、ノンバンクは1~2週間で回答をもらえます。もちろん、審査はしっかりとされるので、事業計画書や不動産投資シミュレーションの提出は必須です。

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「なるほど、金融機関の種類でいろいろと違うんですね。メガバンクが魅力的ですけど、資産も実績もない僕には、融資を受けるのはほとんど無理そうだな…」

 


「そもそも、大前提として、現在は初心者に対する融資が厳しくなっていることも覚えておいてほしい」

 


「そんなあ! それなら、初心者はどうしたらいいんですか!?」

 


「僕の周りでは、今、不動産投資を始める初心者なら、信用金庫・信用組合に行く人が多いかな?」

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これをお読みの初心者の方は、メガバンクやネットバンクを使っていることがほとんどで、信用金庫・信用組合を利用したことのない方が多いのではないでしょうか?

私は、信用金庫・信用組合について、間違った理解がされていることが多いと思います。例えば、地域にある小さな銀行と考えてはいないでしょうか?

信用金庫・信用組合は、株式会社ではない非営利組織であり、地元のお金を地元に回す、という目的をもった金融機関です。そのため、商店街でパン屋を始めたい人や新しくクリニックを開業する人たちは、まず、地元の信用金庫・信用組合に資金調達の相談に行くことが多いのです。

不動産投資で信用金庫・信用組合に相談する場合には、いきなり資料を用意して「不動産投資の融資の審査をお願いします!」というのではなく、まずは、「地元の者ですが、不動産賃貸業を始めたいと考えています。相談にのってもらえませんか?」という感じで訪問します。融資担当の人が、あなたの相談を聞いてくれる可能性もあるかと思います。

不動産投資の融資相談って、最初は超不安ですよね。でも、こんな風に考えるとなんだか少し、気が楽になりませんか?ただし、だからと言って、初心者でも信用金庫・信用組合なら、絶対に不動産投資の融資を受けられると言っているわけではありません。あくまでも、初心者の人でも訪問しやすいと言っているだけです。

余談ですが、世間には、不動産への融資を受けるために、いろいろな銀行を数十行も回る猛者がいます。私個人としては、この方法はあまりお勧めしません。数を打てば可能性が上がることも事実ですが、融資の審査情報は金融機関同士で共有されているようで、審査不合格の歴史を積み上げるのはあまり印象がよくありませんし、審査の時間が無駄になってしまいます。

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「テリーさんも、最初は信用金庫・信用組合から融資を受けたんですか?」

 


「いや、メガバンクからだよ」

 


「えっ!? 話が違う!」

 


「『今、不動産投資を始める初心者なら』と言っただろ。要するに、それぞれの金融機関の、初心者サラリーマンに対する融資の姿勢は、その時々において大きく違ってくるということだよ」

 


「そうなんですか? もう少し具体的に教えてください」

 


「僕がサラリーマンとして初めて不動産投資をしたのは約20年前。そのころ新築ワンルームマンション以外の投資用不動産に融資をしてくれる銀行は、メガバンクのA銀行ぐらいしかなかったんだ」

 


「へ~。今はいろんな金融機関が扱っているって聞きましたから、全然違うんですね」

 


「A銀行以外に地方銀行でも数行やっていたけれど、金利が4~5%と高く、利用する気にはなれなかったよ。もちろん、サラリーマンでも地主さんとか、何千万円もの頭金を持っていれば話は別だけどね」

 


「じゃあ、その頃、信用金庫・信用組合はどうだったんですか?」

 


「僕の家は、地元の信用金庫と祖父の代から80年以上の付き合いがあり、僕も子供のころからそこで預金をして、給与口座を指定し、積立定期もしていたんだ」

 


「80年!」

 


「それでも僕が不動産投資の相談に行ったら、『不動産投資はリスクがありますから、やめた方がいいですよ』と丁寧に断わられてしまったよ」

 


「えーっ!?」

 


「当時、信用金庫は、土地を持っている地元の地主さんにしか不動産融資をしない方針だったんだ。でも今では、積極的にサラリーマンにも不動産融資をする方針に変わったようだね」

 


「そうなんですね」

 


「逆に、メガバンクは、メインのターゲットを中大企業と海外に変えて、初心者サラリーマンには融資しなくなったというわけさ。時代が変わったんだね」

 


「そんな歴史があったのか。それで、信用金庫・信用組合に相談に行く人が多いんですね。でも、信用金庫って少し金利が高いのが気になります」

 


「確かにメガバンクに比べれば、金利は高いね。でも、まずは、融資してくれるところを探さないといけないな。金利については、実績ができてくれば金利や返済期間の交渉の余地もできる

 


「贅沢言っちゃだめなんですね」

 


「僕の場合、メガバンク→地方銀行→信用金庫と借入先を広げて、今では、これら3つの金融機関から融資を受けて、リスク分散を図っているよ。20年かけて金融機関と交渉し続けたおかげで、金利もすべて1%未満だよ」

 


「さすがテリーさん!」

 


「不動産投資において融資は非常に大切だ。でも、金融機関の融資の方針はその時々でコロコロ変わるということを覚えておいてほしい」

 


「わかりました」

 


「だからこそ、いろいろなところから情報を入手して、自分に最も適した=借りられる金融機関に融資の相談に行くことが、融資を成功させる重要なポイントなんだ」

 


「『今』なら、信用金庫・信用組合に相談する初心者が多いけど、これが将来的に変わることもあるということか…」