「法人化して経営する」【初心者向け!不動産投資の基礎講座】

不動産投資では、個人で賃貸経営する場合と、法人を作って(=法人化して)賃貸経営する場合があります。今回は法人化のメリット、デメリットについて解説したいと思います。

①法人化には節税効果がある

一番大きな違いは、法人と個人では税金の扱いが違うことです。オーナーが得る家賃収入について、個人でやっていれば所得税が、法人でやっていれば法人税がかかります。

そして、課税所得によってそれぞれ税率は変わるので、個人でやったほうが節税効果がある場合と、法人を立ち上げたほうが節税効果がある場合の2通り出てくるのです。

まず、個人が払う所得税をみてみましょう。課税所得によっていくらの税率がかかり、いくらの税金を払わなければならないかの速算表は以下の通りです。

国税庁のHPから
国税庁のHPから

たとえば、課税所得が700万円の場合、払わなければならない所得税は、速算表を使って以下のように計算できます。

700万円×23%-63万6000円=97万4000円

これに加えて、住民税(課税所得のおおむね10%程度)がかかります。

一方、法人税はどうでしょうか?

法人税の税率は基本的に、以下のようになります。

国税庁のHPから
国税庁のHPから

これに加えて、法人には「地方法人税」「法人住民税」「法人事業税」などがかかります。これらを加えた実質的に負担する税率である「法人実効税率」は、おおむね30~35%とみられています。

②課税所得900万円が目途

この所得税と法人税の税率を頭に入れて考えると、課税所得が900万円を超えるレベルになれば、法人で賃貸経営をするほうが良いとされています。

所得税率と住民税率を合計すると、33%+10%=43%程度となり、法人実効税率の30~35%を超えるレベルになるからです。

課税所得が900万円を超えるレベルとなると、かなりの家賃収入を上げていなければなりません。単純計算で課税所得を1カ月あたりに計算しなおすと、900万円÷12カ月=約75万円です。課税所得は基本的に「家賃収入ー費用」ですから、月当たりの家賃収入は75万円よりはるかに多くなくてはいけません。

これを踏まえると、法人を作って賃貸経営するのは、複数の物件と部屋を持ち、一定規模以上で経営するオーナーに適しているといえるでしょう。

③このほかの法人化のメリット

このほかの法人化するメリットをみてみます。

1:経費に算入できる範囲が広い

たとえば法人の場合は、家族を役員や社員にした場合、支払った給与、役員報酬、退職金を経費に計上し、節税することができます。

2:融資が通りやすく、資金調達の方法が広がる

法人のほうが信用が高いので、個人で賃貸経営する場合より融資が通りやすいケースが多いでしょう。また、株式を追加で発行する「増資」が可能になるなど、銀行からの融資以外にも、資金調達の選択肢が増えます。

3:相続税がかからない

物件を法人が所有する形をとり続けていれば、不動産投資家が亡くなって子供が賃貸経営を引き継いでも相続税は発生しません。

個人で物件を所有していれば、オーナーが亡くなって子供が引き継ぐ場合、物件の評価額にもとづいて相続税を支払わなければなりません。

④法人化のデメリット

デメリットもあります。

1:開業のコストや時間がかかる

法人設立にあたっては、資本金や司法書士に支払う費用、登録免許税などがかかってきます。20万~30万円かかるケースもあります。

一方、個人事業主として経営する場合には、税務署に開業届だけ出せばよく、費用はかかりません。

2:運営コストがかかる

法人を設立すれば、決算書を作らなければならないなど会計業務が複雑になります。確定申告書の作成なども含め、顧問税理士と契約を結んで対応しなければならないケースが多くなり、税理士への報酬を支払わう必要が出てきます。

また個人と異なり、赤字でも住民税の「均等割」を払わなければなりません。

家族などを従業員にした場合は、社会保険に加入してもらわなければなりません。保険料の半分は法人が負担しなければなりません。

こうした会計や従業員の給与支払い、社会保険、税務などに関する事務が増え、煩雑になるデメリットもあります。

3:税務調査の対象になりやすくなる

個人事業でやっている場合よりも法人でやっているほうが税務調査の対象になりやすくなります。より正確を期して、会計処理にのぞむ必要があります。

このように、法人化にもメリットとデメリットがあります。自分の投資戦略にあわせ、法人化したほうがいいのか個人でやったほうがいいのか、慎重に検討しなければなりません。

                                                株式会社 寧広