2021年の初めにウッドショックが騒がれ始めてから、2022年現在に至るまで様々な建築資材が値上げされている。もはや以前の価格水準では建築できない状況にあり、総体的に不動産の価格も上昇している状況である。
しかし、銀行の建物評価については大きく変わっていないのが実情であろう。
今回は銀行の建物評価にスポットを当てて、解説を進めていきたいと思う。
1. 銀行はどのように建物評価をしているか
まず知っておくべきことは銀行の建物に対する積算評価の方法である。一部の銀行では「収益還元評価」を採用している場合もあるが、いまでも主流は「積算評価」による評価であろう。

積算評価の場合、基本的には以下の計算式で建物を評価する。
【登記簿面積 × 新築単価 ×(残存耐用年数/耐用年数)】
築11年、200㎡の木造アパートを新築単価120,000円/㎡の基準を持つ銀行が評価した場合
【200㎡ × 120,000円 ×(11/22)=12,000,000円】
という評価となる。
まずこの計算式が「建物の積算評価」として銀行が行う評価方法の基本と言えるであろう。
2. 積算評価で注意すべき点は何か
基本的には上記の計算式で積算評価は充足するため、大きな変動要因は無いように思えるが、一部注目すべき点を取り上げていきたい。
①評価上の耐用年数の違い
基本的に居住用であれば建物構造によって耐用年数は定められている。木造22年、重量鉄骨34年、RC47年、などはよく使われる耐用年数である。
ここで注意する点は、銀行の評価において上記の年数が異なる可能性があるということである。耐用年数とは異なる(上記より短いケースが多い)年数で評価をするため、予想より低い建物評価がされてしまうケースがあるという事である。
極端な例を挙げればRCの評価上の耐用年数を30年と定める銀行も存在する。この場合だと、築20年のRCについて、本来であれば【27/47年】の掛け目が入るのに対し【10/30年】の掛け目が入ってしまう事がある。
この計算ではなかなか担保評価を充足することが難しくなる。
上記の銀行基準については、基本的には変化する事は稀なので、担当者からのヒアリング等でしっかり認識しておきたい数字だ。結果的に銀行によって構造による得意不得意が浮き彫りとなる可能性もある。
※ちなみに「融資年数を判断するときの耐用年数」と、今回の「担保評価のための耐用年数」は一致していない場合もあるので注意が必要である。
②新築単価の違い
建物の建築単価は時代によって変化する。税金での計算では以下のような国税庁が定める「建物の標準的な建築価額表」を参考にすることが多いが、銀行の新築単価は下記とは異なるケースがほとんであろう。

基本的には①の耐用年数と同様に、銀行それぞれが独自の新築単価を定めており、多くの場合上記の「建物の標準的な建築価額表」よりも低い水準である。
この単価についても銀行によって異なり、構造に対しての得意不得意が浮き彫りとなりやすい。新築単価については①の年数よりも「審査用の内部情報」の色が濃くなるため、担当者が教えてくれるかはわからないが、可能な限り把握しておきたい数字だ。
同じ木造であっても㎡単価が120,000円と150,000円では評価に2割の差が出る。ウッドショック下において、建築費の高騰が回避できない以上、少しでも正規の価格に近い担保評価を行う銀行と付き合いたいものだ。
3. まとめ
今回の記事では以下2点の基準が銀行によって異なる事、それによって評価面において得意不得意が発生することを説明した。
①掛け目となる耐用年数の違い
②新築単価の違い
不動産は情報戦だとよく言われているが、今回のような銀行側の基準についても、知る知らないで融資結果に与える影響は大きい。
「物件仕入」と「銀行融資」を両輪で捉え、両分野に対してアンテナを高く張ることが重要である。
次回建物評価②に続く。
株式会社寧広