「不動産バブル」に苦しむ中国、2022年も経済成長は停滞か

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中国経済の減速が鮮明になっている。中国は2021年10~12月の国内総生産(GDP)を発表。成長率は、前年同期比4.0%と2020年4~6月に次ぐ低さだった。

背景には、中国のGDPの4分の1を占めるとされる不動産業界に対し、中国政府が行った大規模な規制がある。2020年夏ごろから不動産価格の高騰を抑えるため、不動産会社への融資額の上限を厳しく設定した総量規制などを実施。それにより中国恒大集団をはじめとして、多くの不動産開発業者が、相次いで債務不履行状態に陥っている。

また、北京五輪の開幕を控える中国当局は現在、「ゼロコロナ」政策を取っており、中国国内の工場閉鎖といった事態に発展している。日本には、トイレなど住宅設備を中国から輸入している企業もあり、サプライチェーンの混乱は不動産賃貸業にも影響を及ぼす可能性もある。

今回は、不動産投資家にとっても無縁ではない、中国経済の現在について考えてみたい。

中国GDP、成長率が鈍化

今月17日、昨年10~12月の中国のGDPが発表された。前年同期比4.0%と、同年7~9月の4.9%から鈍った。

中国国内総生産(GDP)の推移 ※中国国家統計局統計をもとに作成

なぜ、中国経済の成長は鈍化しているのだろうか。石炭や鉄鉱石の価格上昇、2021年夏から秋にかけての電力不足など、考えられる要因はいくつかある。その中でも特に大きな要因と考えられるのが、新型コロナウイルスに関連する過剰とも言える政策だ

2月に冬季五輪を控える中国は、1人の感染者も出さないという強力な防疫政策「ゼロコロナ」政策を実施。感染拡大を徹底的に封じ込めるために厳格な移動制限を行ったことで、経済活動が停滞している。

最初の流行国となった中国だが、「ゼロコロナ」政策により感染抑止に成功してきた。ところが2021年8月ごろから一部地域で散発的な流行が見られるようになった。もっとも、流行とはいっても、その感染者数は日本など他国と比較すればきわめて少数だ。

2021年12月9日から流行が始まった陝西省(せんせいしょう)西安市は、2020年春の武漢市、湖北省以後で最大の流行となったが、その感染者数は累計で2000人あまり(2022年1月17日時点)。

西安市の人口は約1300万人でほぼ東京都と同等だ。昨今の東京では日に1万人以上の感染者がでていることを考えれば、1カ月あまりで2000人の感染者など流行のうちに入らないようにも思える。

しかし、西安市は昨年12月末からロックダウンを実施。工場の生産がストップするなど経済活動に大きな支障が出ている。

他地域でも、1人でも感染者がでた場合、感染者や濃厚接触者の訪問先が閉鎖されるほか、同じ街の全住民に対するPCR検査が行われるなどの対策が行われる。

「ゼロコロナ」政策は、感染をいち早く抑え込むためには効果的だが、一方で1人の感染者で社会活動が広範にストップする問題がある。

そうした地域にサプライチェーンの一部が含まれていれば、その影響は上流下流に大きく広がる。たった1つの部品工場、あるいは物流中継地点が影響を受けたために、納期が大きく遅れたという嘆きはしばしば聞くところである。

日本のトイレメーカー大手「TOTO」では、中国のサプライチェーンの乱れによって、温水洗浄便座の部品の調達が遅れており、生産が遅延している。またトイレ機器以外にも、扉やドアノブなどといった部品も遅延しており、日本の建築業界に影響を及ぼしている。

「ゼロコロナ」政策で経済が停滞

厳格な「ゼロコロナ」政策は消費にも大きく影を落としている。

小売・外食の売上高を合計し、消費の状況を示す「社会消費品小売総額」の月次推移を見ると、2021年10月から伸び率は下落し、12月には1.7%にまで落ち込んでいる。プラス成長を維持しているとはいえ、コロナ禍以前には10%近い成長率をキープしていたことを考えると、回復とはほど遠い状況にあることがうかがえる。

社会消費品小売総額推移(前年比) ※中国国家統計局統計をもとに作成

業績が低迷している企業も散見される。

日本にも展開している、中国最大の火鍋チェーン「ハイディーラオ」は2021年11月に300店舗を閉店すると発表した。同社は2020年秋にはコロナ禍が収束すると予測し、コロナ流行後に800店以上の新店舗を開設したが、思うように消費が回復しなかったと説明している。

また、中国EC(電子商取引)最大手の「アリババ」の2021年7~9月期決算では、売上高成長率が上場以来最低となり、マーケットに衝撃を与えた。ダニエル・チャン(張勇)CEOは競合他社との競争激化に加え、市場環境が脚を引っ張ったと説明している。

デルタ株の流入以来、散発する流行が消費の脚を引っ張っているわけだが、今年1月にはより感染力の強いオミクロン株の市中感染が見つかっている。

執筆時点(1月19日時点)では爆発的な拡大にはいたっていないものの、感染者数は増加する可能性が高い。

秋に共産党大会を控える習近平国家主席にとって、2月に開幕する北京冬季五輪の成功は譲れない。しかし、「ゼロコロナ」政策に伴う都市封鎖や移動制限は、景気回復の足を引っ張り続けるだろう。

不動産開発企業を苦しめた「3つのレッドライン」

問題はコロナだけではない。大手不動産デベロッパー・恒大集団のデフォルト危機で注目された不動産問題はいまだにくすぶり続けている。

2020年前半、中国の大都市である北京市、上海市、広州市、深圳(シンセン)市を中心に不動産価格が大きく上がった。新型コロナウイルスの流行を受け、金融が緩和された結果、注入されたマネーが不動産投機へと向かったためとみられる。

その結果、一般大衆が不動産を購入できないほど価格が高騰。国民の不満は高まっていた。

そこで、政府は不動産価格引き締め策を導入。2021年1月から銀行の住宅ローンや不動産会社への融資額の上限を厳しく設定した「総量規制」などを行った。さらに、同年8月には「三条紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる規制も導入。これは、負債を多く抱えている企業に対し、融資を規制するというものだ。

これまで中国の不動産デベロッパーは、右肩上がりの市況を前提に、負債を肥大化させてでも開発物件をひたすら増やすことを勝ちパターンとしてきた。しかし、これらの規制によって、不動産デベロッパーはマンションを建設するための資金調達が難しくなってしまった。

その結果、恒大集団を筆頭に負債を返還できず、また先行き不透明な状況から新たな資金調達も困難となり、不動産デベロッパーのデフォルト問題が頻発。今月19日にも不動産開発会社の中国奥園集団が、米ドル建て社債などを返済しない方針だと発表した。

中国当局の不動産規制による影響で、2021年8月頃から新築住宅価格は下落。同年10月に発表された主要70都市の新築住宅価格動向では、前月比で価格が下落した都市は7割以上の52で、6年8カ月ぶりの多さだった。

これを受け、中国政府は不動産市場の停滞による経済成長の鈍化を防ぐために、年末からは住宅ローン規制を緩和するなど、不動産規制を引き締めから緩和へと移行している。

しかし、緩和策に対する市場の反応は鈍い。2021年12月の調査では主要70都市のうち前月比で価格がプラスとなったのは6都市にとどまっている。

景気減速の影響に加え、不動産市場の先行きが見えないなかで、買い控えが進んでいる可能性が高そうだ。

間近に迫った人口自然減

もう1つ、不動産価格の先行きを懸念すべき材料がある。少子化問題だ。

そもそも、これまでの中国は1970年代にかけて人口が急増。人口の増加とともに中国の経済は発展したが、農業における経済政策に失敗し、大飢饉に陥ってしまった。

食糧不足を防ぐため、1組の夫婦につき子供は1人までとする「一人っ子政策」が1979年に導入された。近年では少子高齢化が懸念されていたことから、2016年にこの政策を廃止した。

しかし、出生数の減少は止まらない。直近の出生数のピークは、2016年の1790万人で、2021年の出生数は1062万人。5年間で約40%減少した。死亡者数は1014万人で、このトレンドが続けば来年にも人口が自然減に陥る可能性もある。

一部の地域では2人目、3人目を生んだ家庭に低利子での消費者ローンを提供するなど、あの手この手の出産奨励策が導入されつつある。

しかし、世界各国の少子化事例を見る限り、ひとたび減少した出生数を回復させることはきわめて困難だ。人口減少が続けば経済の失速にもつながるだろう。

それに中国の住宅需要に大きなマイナスをもたらすと考えられる。少子化の影響が表面化するまでには時間差があるとはいえ、出生数減少は不動産価格が長期にわたって下落に転じる可能性がある。

また、米中対立が続くなか、米政府による中国企業への制裁も変数として加わる。中国政府は難しい舵取りが要求されるが、長期的課題である人口減への手当が遅れれば、そのダメージは計り知れない。

国民的祝祭となる北京冬季五輪をひかえている中国だが、2022年は困難が予想される船出となった。

                                                株式会社寧広