「ウッドショック」だけじゃない、建築資材が軒並み高騰の背景

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住宅資材の高騰が続いている。建築用木材価格が上昇した「ウッドショック」の陰に隠れ、現在はコンクリートや鋼材など木材以外の住宅用資材価格も上昇している。

建築資材の価格上昇は、そのまま建築費、リフォーム費の上昇につながる。このような建築資材の上昇はなぜ起こり、いつまで続くと考えられるのか。いくつかの統計情報から読み解いていく。

「ウッドショック」を振り返る

米国での新築戸建住宅の増加に木材の供給が追い付かなくなり、価格が急激に上昇した事態は「ウッドショック」と呼ばれた。

米国では、新型コロナで大きく落ち込んだ新築戸建ての販売件数が、2020年5月から急激に回復。背景には、ワクチン接種やリモートワークが進んで郊外の住宅購入が活発化したこと、リフォーム需要が高まったことがあると指摘されている。加えて、新型コロナによる製材所の休業、米国西海岸などでの大規模な山火事も影響し、木材の供給が滞ったことなどから、建築用木材の需給がひっ迫したと見られている。

米国発のウッドショックは、日本にも波及した。

日本銀行が発表した企業物価指数(企業間で売買される物品の価格変動を示す指標、2015年を指数100とする)で、材木・木製品・林産物の輸入価格指数(円ベース)を見ると、21年1月には92.3だった指数はその後急激に上昇、同年10月には前年同月比で83.4%上昇し、指数は165.4に達した。

企業物価指数の推移。2021年1月以降急激に上昇している(日銀企業物価指数を基に著者作成)

中でも、原木から切り出した木材である「製材」と、挽き板や角材などを重ねて接着し、1本の木材として使えるように加工した「集成材」の価格上昇は急激だ。

「製材」と「集成材」の価格が急上昇している(日銀企業物価指数を基に著者作成)

製材は21年1月に100.9だった指数が10月には261.5まで上昇。前年同月比で価格は2.7倍に値上がりした。集成材も21年1月に95.5だった指数が、22年1月には238.0まで上昇。前年同月比で価格は2.5倍に値上がりしている。

建築資材全般でも、前年比18%の上昇

先のグラフの企業物価指数を見る限り、とりあえず、木材の価格上昇は一息ついているように見える。しかしその一方で、他の住宅建設資材価格も大幅に上昇している点には注目すべきだろう。

そもそも住宅建築用資材の価格上昇には、新型コロナの影響はもちろん、資源価格の上昇、原油価格の上昇、円安の影響、輸送費の増加など、さまざまな要因が複合的に影響している。

建設費に関する調査を行う建設物価調査会の「建設資材物価指数」(2011年を指数100とする)によると、建築資材全般の価格を示す「建築部門指数」は長い間、非常に緩やかな上昇を続けていたが、21年5月から指数が急激に上昇し始め、22年3月には131.0と、前年同期比で18.8%も価格が値上がりした。

2021年5月ごろを境に、建築資材が全体的に値上がりしている(建設物価調査会「建設資材物価指数」を基に著者作成)

例えば生コンクリートの価格はこの1年間で4.8%上昇しているが、さらに大幅に値上がりしている材料もある。

前年同月比で見ると、コンクリート型枠用合板が45.1%、異形棒鋼(鉄筋コンクリートの芯材として使用)が29.1%、H形鋼が32.5%、鋼板切板が56.1%、熱延ステンレス板が31.6%、1年間で価格上昇している。

各建築資材の価格が大きく上昇している(建設物価調査会「建設資材物価指数」を基に著者作成)

工事費への影響は

建築用の木材や資材がこれだけ上昇すれば、当然のことながら建築工事の予定額にも影響が出てくる。

1戸建て住宅の場合、建築等に使われるのは圧倒的に木材が多く、また国内での木造建築の7割弱を輸入材が占めている。国土交通省の住宅着工統計で、月別の新築1戸建て工事予定額を見ると、木造は21年1月の1900万円からジリジリと上昇した。10月に1949万円とピークを付け、その後いったんは落ち着きを見せている。

では、木造以外の建物はどうだろうか。ここでは、木造の次に着工戸数が多い鉄骨造を例に見てみよう。鉄骨造は現在でも工事予定額の上昇が続いており、21年1月の3412万円から22年2月には3676万円まで7.7%上昇している。

新築一戸建て(木造、鉄骨造)の月別工事予定額(国土交通省住宅着工統計を基に著者作成)

また年平均の新築1戸建て工事予定額を見ると、木造は20年と21年は1928万円で横ばいだが、鉄骨造は19年の3332万円から20年の3400万円に前年比2.0%上昇、21年は3541万円と同4.1%上昇し、値上がり幅が拡大していることが分かる。

新築1戸建て(木造、鉄骨造)の年別工事予定額(国土交通省住宅着工統計を基に著者作成)

まとめ

前述のように木造については、企業物価指数は21年10月に指数がピークアウトしている。その後も高止まり傾向は続いているものの、年平均の新築1戸建て工事予定額では20年と21年は横ばいとなり、月別の工事予定額では21年10月の1949万円をピークに、22年1月には1889万円まで下落した。

一方、木材以外の住宅建築資材については価格上昇が継続している。これに伴い、鉄骨造の新築1戸建て工事予定額は、年平均でも値上がりが継続しており、月別でわかるように、22年に入ってから値上がり幅が拡大している。

こうした状況を見る限り、木材については少なくともウッドショックの影響を脱したと言うのは難しいということ、また木材以外の建築資材についても、まだまだ値上がりが続く可能性があると言えそうだ。

注目すべきは、米国のウッドショックから始まった木材価格の値上がりが、木材以外の建築資材にも波及していることにある。背景には、新型コロナの影響、そして資源高や原油高によるインフレ圧力がある。

加えて、日本では円安の進行による輸入物価高で、建築資材の値上がりに拍車がかかっている。さらに、ロシア軍のウクライナ侵攻という予想外の事態により、世界のエネルギーや鉱物資源など資源の需給が不安定化し、先行きが不透明になっている点も大きい。

こうした複数の不透明要因が、住宅建築資材の価格上昇につながり、さらには先行きの価格動向を不安定にしている。状況によっては、資材価格は一段と値上がりする可能性もあるだろう。

今後住宅購入、住宅建築を検討する際には、建築資材の価格動向に十分目を見張り、価格上昇の影響を受けないよう、賢い選択をする必要がありそうだ。

                                                 株式会社寧広